富める者の権利と義務   作:晴嵐丸@ふもっふ

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辺境契約開始

「エリック、上です!」

 

フォーゲルヴァイデの頭上から照明が落ちてくる、フォーゲルヴァイデは上を見るが何も出来ず声を上げるばかりだ。

 

「アアッッッ」

 

ホシグマが慌てて駆け寄り照明を払う。両手で頭を庇う彼も、危機は去ったと判り礼を言う。

 

「有難う、助かったよ。それにしても久しぶりだね、姫。」

 

ホシグマは苦虫を噛み潰したような表情をしている。

 

「姫は止めろ、今は守る側の立場なんだ。お前だってそうだろう?」

 

「ハハ、それは違いない。失礼したね、それでは。」

 

ホシグマとは旧知のようだが余り良くは思っていないらしい。フォーゲルヴァイデも昔とは違う事を察したのか深くは聞かないようだ。

 

「ホシグマ、彼の言う事だが…」

 

「よして下さいドクター、それを言うにはロドス中のアルコールが必要になります。」

 

「それは大変だな、またの機会に頼むよ。」

 

フォーゲルヴァイデが部屋から退出して暫くすると、重要そうなファイルを片手に1人のオペレーターが入ってくる。

 

「なんでエリックがここに居やがる…」

 

「なんだ、シックザールは同じ学派だっただろう、聞いていないのか?」

 

彼はシックザール、ロドスでは前衛オペレーターの任に就いてくれている。先祖返りという事も有り周りとは折り合いが悪かったようだが、エリックとは仲が良かった…というか孤立していた彼をエリックが放って置かなかった様ではあるが。閑話休題

 

「エリナの為に出来る事をする。としか聞いちゃいねぇ。」

「前には出て来ねぇだろうな?」

 

「珍しいね、君が他者を気に掛けるとは。とても良い傾向に思えるよ。」

 

シックザールの心が閉じ切っていないのはエリックのお陰だ、彼は問題児だがこの贈り物は有難い。

 

「うるせぇ、質問に答えろ!」

 

「彼は限定的な前衛後衛兼任の特殊オペレーターとしての着任だ。試験の成績には目を見張るものがある、優秀だよ。」

 

「チッ…」

 

嫌な事を聞いたとばかりに舌を鳴らし、持っていたファイルをドクターへ向けて投げ渡す。

 

「危ないですよ。」

 

「有難う、ホシグマ。私は、きっとキャッチしてくれると思ってたよ。」

ドクターはホシグマに礼を言うが彼女としてはあまりして欲しくない反応のようだ。フェリーンやペッローであれば尾を揺らしつつも気取られまいとしているかのような表情をしている。

 

「ふむ…」

ファイルを読むとどうやら比較的等級の低い危機契約が内容のようだった。カズデルの辺境で天災が発生、近くの集落から逃げ遅れた人とそこへ向かう火事場泥棒だろう素行の悪い傭兵団。更に地形が天然の要塞とも言える様で少数精鋭が望ましい事。カズデルという土地柄原石含有率の高い地層がありヒーリングのような繊細なアーツは制御不能になりやすい事。危機契約機構からは支援契約とは別に持続型のヒーリングアーツユニットの貸し出しがある事。などが書かれている

 

「シックザール、君を隊長としてこの危機契約を解決して欲しい」

「人員については既に連絡をアーミヤとケルシーに入れた、何か特別な準備がなければこのままデッキからヘリで実地へと向かって欲しい。何か質問はあるだろうか?」

 

「了解した。質問についてだが部隊の人数と詳細について、そしてそいつらがどれ位使えるかだ。」

 

シックザールは局地戦のスペシャリストで高い戦術眼も持ち合わせている。普段の反応はそっけないものだが、やる気を出してくれると彼以上に頼り甲斐と信頼を置けるロドス職員はそうも居ない。

 

「作戦の都合上専門の医療オペレーターは居ない。原石の活性化による自主回復が可能な人員がメインとなる。一部ヒーリングアーツが使用可能な者も居るが現地の状態や本人と相談して決めて欲しい」

「人員についてだが殴り書きで悪いがファイルに直接書いておいた、そっちをみてもらった方が早いだろう。」

ドクターの走り書きを読むとこう書いてある

部隊前衛:シックザール/ウタゲ/ヴァルカン/ニアール/グラニ

部隊後衛:フォーゲルヴァイデ/プラチナ/スズラン/ナイトメア/スチュワード

 

「おい、なんで来たばっかりのエリックの名前がある?」

 

「試験において優秀な成績を修めたから」

「すまないがこのことに関してはこうとしか言いようが無い、戦術的には正しくとも人道的には些か今回の人選には問題点が多い。」

「新人だけでなく、幼な子まで放り込むんだ。我ながら心は痛むよ…」

 

スズランは幼いながらも圧倒的なアーツ能力でエリートオペレーターの座を掴んだ天才と言えるだろう。しかしながらまだ子供である事に変わりはなく自分が選んだとはいえもうちょっとどうにかならなかったのかとドクターも思っているようだ。

 

「チッ…」

 

苦虫を噛み潰したような表情でいるシックザールにドクターは捕捉事項と重要事項を伝える。

 

「ライン生命に対して専門の医療部隊派遣を要請しておいた。」

「彼らを活用すれば救命活動よりも武力行使の方に専念出来るだろう。」

「私からの命令は3つ。死ぬな。死にそうになったら逃げろ。そして隠れろ。作戦の遂行は余裕があればで構わないよ。」

 

「それじゃ4つだろうが…」

「ったく、これ以上用が無いならもう行くぞ。」

 

シックザールもこれ以上ウダウダ議論するより早くヘリに乗ったほうが良いだろうと感じたのだろう部屋を退出して行く。

 

「あぁ、行ってらっしゃい」

 

ドクターは数を数えられなかったのが恥ずかしいのか少しモゾモゾしているようだ。

 

 

「さて、シックザールはどこまでやってくれるんだろうかね」

 

「彼で有ればそうそう倒れる事も無いだろうさ」

 

ホシグマの励ましが胸に刺さる。

 

「はてさて…この作戦でシックザールも友というものの大切さに気付いてくれると良いのだがな」

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