「──────────うん。今日も快晴」
おもむろに空を見上げて、僕はぽつりと呟いた。上を見れば、雪よりも白い雲が空を泳ぐように流れて行く様子が目に映る。
なごやかな風が頬をくすぐり、ロングコートの裾を旗のように波うたせる音が聞こえる。
ジーンズのポケットにつっこんでいた手を太陽にかざせば、指と指の隙間から熱くて眩しい光が漏れ出て顔を照らそうとする。
空に向けてかざしていた手を降ろし、視線を正面に直した。
見渡す限り、草原。地平線が見えるほどに広大な原野には、所々に木が見える以外には生き物の気配はない。
しかし、その広大な緑色の平原の中には、真っ白な四本足の獣が一匹佇んでいる。
見る人全てを魅了するその美しい姿は、あたかも、天啓を伝える神の使い。
見る人全てが畏怖の念を抱くその神々しい姿は、あたかも、人を堕落へと誘う悪魔。
その神々しい生き物はゆっくりと僕の方へと歩み寄り、残り一、二歩のところで腰を降ろした。
そして、彼は美男子そのものの凛々しい顔を上目にして、僕を見つめている。
「そろそろ出発しようか、【ビアンク】」
僕は脆いて、その彼の頬を撫でて、伝えた。凛々しい表情は僕の手が触れたとたん、布が
彼の顔はくすぐったそうな愛らしい表情に変わり、僕の手のぬくもりを味わうかのように頬を擦り付ける。
ひとしきりビアンクの頬を撫でた後、僕とビアンクはその場所から立ち上がって見渡す限りの平原を歩き始める。
「さて、今回はどんな世界を旅しようか」
色のないオーロラが現れて、僕とビアンクを包み込む。そしてもう一度目を開けば。
「ここが新しい世界か……………………なんてね」
視界いっぱいに広がる、無数の木。空を見上げてもなお無数の枝と葉で遮られていて、考えなくともすぐに森の中だと理解できる。
しかし人が全くいないというわけでもないらしく、少し見回すと不自然に開けていて、代わりに小石や砂に覆われた土の地面が露出している場所が見えた。
「行こうか、ビアンク」
隣にいるビアンクを見下ろしながら声をかけると、
「くぅうん♪」
と、可愛らしい返事がかえってきた。
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同じ頃、【
「何ていうか神様って、以外と気前いいんだな……」
そう独り言を呟いて立ち止まり、スマートフォンの画面を覗く。
画面には拡大された地域地図が写っているが、G○○gle○apの如く近隣の地名と座標が正確に表示されているのが見てとれる。
冬夜が目指しているのは最寄りの《リフレット》という町で、現在位置から1km程度離れた場所にある。
当然ながら道は道でも一本道なので地図の通りに進めば迷うことなく到着できる。
冬夜はスマートフォンをポケットにしまうと、再び町を目指して歩き出そうとした。
「ん?」
後ろから人の気配がした。後ろを振り向くと、ジーンズパンツと黒いシャツ、そして膝下よりもさらに長いロングコートを着た青年と、黒い角を生やし真っ白な体毛に身を包む獣が視界に飛び込んできた。
「あの、もしかして土地の人ですか?」
気付けば、自然に問いかけていた。冬夜は言い終わった後に、はっと気付いた。
いくら魔法が存在すると言えど、この森は決して深くはないし、何より少なからず人通りのある道路の近くに隠れ住む魔法使いがいるというのは明らかに不自然だ。
当然ながら冬夜はすぐに訂正しようとするが、青年はやんわりと微笑んで答えた。
「違うよ。僕
「くぁん!」
青年の言葉を肯定するかのように、彼の隣にいる白い生き物も鳴き声をあげる。
「「も」ってことは、貴方もここに転生したんですか?」
「僕は転移してここに来たのさ。まあ、違いなんて死ぬか死なないかぐらいだし、そう思ってもしかたないよね」
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それから二人で道を行きながら、僕は【
地球のことはエリオさんの故郷でも一般常識らしくて特に驚かれなかったけど、エリオさんの話は聞けば聞くほど驚くことばかりだった。
例えば故郷(
ついでに、エリオさんが連れているアブソルは森の中に放置されていたタマゴから産まれたんだとか。
さすがに着いていけなくなって、現実逃避のために空を見上げた途端、後方から馬らしき生き物の蹄の音が聞こえた。
ちょうど歩き疲れたところだったから、町まで乗せてもらおうと道の端まで移動しようとしたら、
「(僕らこの世界のお金持ってないでしょ?それにタクシーじゃなさそうだから無視した方がいいよ)」
と、エリオさんにそっとささやかれた。
だけどもしかしたら辻馬車かも知れないから、後ろに振り返ってスマートフォンのカメラアプリを起動して確認してみる。
カメラを拡大して映りこんだのは、確かに個人所有のものとしか思えないほどに豪華な装飾が施された立派な馬車だった。
(エリオさん…………あなた本当に何者なんですか…………)
ここまでくると驚きを通り越して恐怖を感じる。
いろいろと思考を巡らせていると、エリオさんはふと立ち止まった。
「ビアンク、ミラクルアイを発動。“
「えっ?」
一瞬、全ての運動が止まったような幻覚に襲われた。
刹那の
そして、その直後。
「グギャアッ!」
肉と骨をほぼ同時に断ち切る鈍い音と、明らかに人のものではない低い叫び声が聞こえた。
「…………今、何が?」
エリオさんは答えずに、すぐにアブソルに次の指示を出す。
「〔電光石火〕で吹き飛ばしながら〔引っ掻き〕と〔切り裂き〕で細切れにしてやれ」
アブソルは光のような速さで“ゴブリン„がいるであろう森の中へと飛び込んで行ったかと思うと、すぐに“ゴブリン„たちの悲鳴と骨や肉が弾けるような音が聞こえはじめた。
恐らくさっきのエリオさんの指示通り〔電光石火〕の体当たりと同時に爪や角で肉を抉っているのだろう。
考えただけでもグロすぎる…………
「………………………………冬夜くん、もう大丈夫だよ」
ってあれ?もう終わったの?
「くんっ!」
「あっ…………はい……アリガトウゴザイマス……」
そういえばゴブリンってどんな見た目してるんだろ…………本当に薄い本とかで描かれてる気色悪い見た目だったら……
うっ……余計に吐きそう…………
「────────ちょっ、ちょっとそこの君たち!」
すぐにでもその場を離れたいと思った矢先、いつの間にか追い付いていた馬車の中から声をかけられた。
「はい。僕らに何か御用でしょうか?」
あっけにとられていると、慣れているのかエリオさんがなにやら馬車の持ち主と思われる恰幅のいい男性と言葉を交わしていた。
エリオのアブソル
性別:雄
名前:ビアンク/Bianc
Lv.102 HP.280 攻撃282 防御165 特攻183 特防160 素早さ234
特性:正義の心
持ち物:アブソルナイト
性格:寂しがり 個性:体が丈夫