アリュシアと出会ってから早くも一年経ち、俺は5歳になった。
あの日からアリュシアの指導の下、自身の中に眠るバンパイアの力の引き出し方を学び、今はそれなりに妖力を使いこなせるようになっている。
自らの妖気を力に変換する
これが"力の大妖"と呼ばれた
身体がまだ5歳児な為、全開の状態で長時間戦う事は出来ないが、この
ーーーアリュシアとの修行は、主に夜中の寝静まった後などの"
昼間は母さん達の目があるし、夜も同じ部屋で寝る為、あまり表立って妖力を使う事が出来ないからだ。
精神世界であれば、側から見たら俺は普通に眠っている様に見えるし、妖力の使い方を学ぶ際にアリュシアから直接教わる事が出来る。
精神世界での修行は、基本的にアリュシアとの一対一の
それこそ最初は妖力のコントロールから始まったんだが、半年経った辺りからはほぼ毎回アリュシアと戦っている。
……まあ、他のバンパイアの実力を遥かに凌ぐというアリュシアに勝てるはずがなく、毎回ボコボコにされているだけなのだが。
『それでも、最初の頃よりは良い動きをしてるわよ?ヴァンフィニオンの扱いも上手くなってきたし、並の妖なら楽に相手出来るでしょうね』
(……つまり、まだ
ふふ、そうねーーーと、愉快そうに笑うアリュシア。
現在アリュシアの意識は、俺の身体の中にある。
あの日から覇錠剣[ヴァンフィニオン]の正式な主人となった俺は、必然的にその中に封印されているアリュシアの意識も身体に宿す事となった。
お陰様で頭の中の事は読まれるわ、直接頭に話しかけてくるわで、最初は色々と慣れるのに苦労したものだ。
因みにヴァンフィニオンは、俺の
『僅か一年程の修行で、そこまで妖力をコントロール出来てれば上出来よ。後は力に変換する"妖気"の絶対量が増えれば、そう遠くない内にバンパイアも相手に出来るでしょうね』
(妖気の絶対量か……。確かに妖気を変換しようにも、まだ俺自身の妖気そのものが圧倒的に足りないからな)
『貴方は完全なバンパイアではなく、半分人間の血が混ざった半妖だからね。どうしても妖力の差が出るのは仕方ない事だわ。ーーー元々バンパイアは、10歳頃から急激に妖気が高まり、大人の仲間入りをすると言われてるの。貴方にもバンパイアの血が流れているのだから、それくらいになれば必然的に妖気も増すわ』
(……逆に言えば、それまで急激な伸び代が期待できないって事か)
最悪の場合、今の妖気であの二人を助ける事も視野に入れないといけないな。
『そうね。その件も含めてーーー今回の旅で、何か進展があればいいのだけど』
(進展……そうだな)
アリュシアの言葉に、俺は窓の外の景色へと意識を移しつつ、そう答えた。
突然だが、現在俺は山々に囲まれた山道をバスで移動している。
勿論俺だけではなく、隣には父さん、通路を挟んだ反対側の席には、母さんと妹もいる。
バスに揺られて早くも3時間。
母さん達の話では、もうそろそろ目的地に着くらしい。
ーーー事の始まりは、2週間前。
それは、夜の食卓での母さんの一言が"キッカケ"だった。
『……お婆ちゃんのところ?』
『そうそう。一年くらい前にいつの間にか蔵の扉が開いてた事があったじゃない?何でもお母さん……凪染のお婆ちゃんが若い時に蔵に入れた大事な書物があったらしくて、今度それを持ってきて欲しいって頼まれちゃってね』
話には聞いていたものの、実際には会った事がない俺の祖母にあたる人。
母さん曰く、とても優しく、人付き合いの良い人だったらしいけど、俺の祖父ーーーお爺ちゃんが亡くなってから一人海外へと渡り、それ以来一度も日本に帰ってきてないらしい。
それどころか、連絡も取れないって聞いた気がしたんだがーーーどうやらお婆ちゃんからの急な連絡だったらしく、話の流れでお婆ちゃんの所に行くという話になったようだ。
まあ丁度、夏の長期休暇で俺や母さん達も予定は空いてるし、父さんもその日数に合わせて仕事を休むという。
こうして俺達は、お婆ちゃんのいる海外へと行く事になった訳だが、まさかそこがーーー。
「ーーー中国だったなんてな」
2週間前の事を思い出しながら、俺はぼそっと呟いた。
……中国。
偶然にしては出来過ぎだが、俺自身どうにかして行きたいと思っていた国だ。
あの黒髪の少女が着ていた服装。
アレは間違いなく、チャイナドレスと呼ばれる中国の民族衣装の一つであり、あの情景や夢から得られる数少ない手掛かりでもある。
妖怪に関する事なんて得られるか分からないけど、今回の旅で何か一つでも得られるものがあればーーー。
そんな期待を胸に、バスは目的地の街へと足を踏み入れていた。
◇◇◇
魔都市香港からバスで約3時間。
お婆ちゃんが住んでいるという街は、来た道同様山々に囲まれた田舎街だった。
今歩いている繁華街は人通りも多く、色んなお店から活気的な声が聞こえてくる。(中国語で殆ど分からなかったけど)
お婆ちゃんの家はこの道沿いを抜けた街の隅にあるらしく、途中の店で買い物をしつつ、俺達はそこを目指して歩き続ける。
人通りの多い中20分程歩き、繁華街を抜ける。
そこから更に歩くと、この街に住む人達が暮らしているであろう民家が建ち並ぶ場所に辿り着いた。
「ええっと……多分ここね」
そう言って立ち止まる母さんの目の前には、他の家よりも少し古びた民家が建っていた。
「お母さんー!いるー!?着いたわよー!」
そう口にしつつ、母さんは扉を少し強めにノックした。
すると扉が開き、中から
「ーーーあら、もう着いたのかい。わざわざ遠い所まですまないね」
……お婆ちゃんの知り合い?かな。
目の前に現れた女性の第一印象は、正にそれだった。
聞いた話、もう80過ぎてるって言うし、人付き合いも良いって言うから、近所の人がこうして来てくれているのかな……?
そう考えていた俺だが、次の母さんの言葉に、流石の俺も耳を疑った。
「全くよもう。
「………ん?」
お母さん……?って言ったのか?
改めて、母さんの目の前の女性を見る。
俺の母さんは20代前半で俺を産んだ為、一応今も20代な訳だが、そんな母さんと比べても歳に差が無いように見える女性。
身長は母さんよりも少し上。
艶やかな長い黒髪。
スラっとした長い脚。
引き締まったウエスト。
モデルと言っても通用しそうな顔とスタイルをしている目の前の女性に対し、母さんは今、
色々と混乱している俺に気付いたのか、目の前の女性は膝に手をつき、顔を俺に近づけてきた。
「あら、この子が凪染君ね。中々可愛い子じゃないの。ーーー初めまして。ワタシが貴方のお婆ちゃんの
「え……?」
黒咲……亜沙美………?
と言う事はつまり、目の前の若い女性が、実は80を超える俺のお婆ちゃんって事で……つまり……?
………………。
「えええぇぇぇぇぇぇええええええ!?!?!?」
ーーー驚きのあまり発した俺の叫びは、ご近所中に響き渡った。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
今回は少しまとめるの大変で、勢いに任せちゃった感があります(汗)
本当はもう少し進める予定だったのですが、キリが良かったので今回はここまでにしました。
二話投稿後のUAの伸びやお気に入り登録して下さった方もいて、とても嬉しく思います。
未熟な文の集合体のような作品ですが、今後も気長に読んで頂けたらと思います。
……早くヒロイン出したいですね(笑)