小さな体に大きな病みを!   作:コロリエル

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どうも、病みです。病みです、病みです。書いてて楽しかったです。

あと誰か、活動報告と推薦の正しいやり方教えて下さい(涙目)。


海って、深くなるほど暗くなるよね

 

 

 

 

 例えば、の話をしよう。

 

 例えば、大好きだけど、将来設計が困難な技術と、好きじゃないけど、招来食うに困らない技術。

 

 その二つを持っていたとしたら、どちらを選ぶか、という問題がある。

 

 はっきり言って、この問題には正解がない。

 

 好きな事をやり続け、貧乏ながらも楽しく生きる道、お金を稼いで、日々の生活を充実させていく道。その中でも様々な転換点があり、好きな事が嫌いになるかもしれないし、どうでもいい技術が、ある日突然好きになるかもしれない。

 

 だから、皆悩む。どちらを選ぶか。

 

 当たり前だ。人生の洗濯、生き方の選択なのだから。

 

 

 

 では、問おう。

 

 

 

 そんな選択肢すら用意されない人間は……どうすればいいだろうか?

 

 

 

 

 体型は平均以下、容姿も平均くらい、物覚えの良さは平均以下、不器用、感受性に欠け、コミュニケーションも得意ではない。

 運動神経は劣悪、性格は歪み、勉学は下の上。

 

 

 

 何も出来ないよ、僕は、僕は、僕は。

 

 

 

 

 居心地は最悪。良いわけがない。右を見ても左を見ても絶望。笑えるよね? いや、笑わないでくれ。余計惨めだから。

 

 

 

 でも、ギターはまだマトモだった。まだ弾けた。一日で『きらきら星』を弾けた。

 

 その時の両親の、笑顔が焼き付いた。写真見たいに。いい思い出すぎて、脳内では額縁に入れて飾っているほど。時々見直して、また惨め。

 

 

 

 

 これしかないよ。これしかないよ。これしかないよ。

 

 

 

 

 心の中で謝罪の言葉を一番送った相手は、間違いなく両親。出来損ないでごめん。不器用でごめん。おかしくなってごめん。

 

 僕がスタジオミュージシャンとして契約を勝ち取ったと知った時、初めて両親に感謝を伝えた。出来損ないの僕を育ててくれてありがとうと。

 

 初めて、両親の前で出来損ないと、口にした。

 

 

 

 ──あれが、初めてだった。父さんに殴られたのは。

 

 

 

 

『出来損ないな訳あるか! 負けずに! 腐らずに! 誰にどんなに言われても必死にやってきたお前が! 自慢の息子に決まってるだろ!』

 

 

 

 

 ──その時だった。僕が一人暮らしを決意したのは。

 

 嬉しかった。それでも愛をくれようとする父さん。

 

 嬉しかった。不器用に産んでごめんと抱き締めてくれた母さん。

 

 情けなかった。これだけ想われても、変わりそうにない自分の考えに。

 

 怯えた。このままでは、また両親を傷付けてしまう自分に。

 

 

 

 少しだけ変わったのは、このギターは離さない、という事だけ。

 

 

 

 なんにも無い、から、ギターしか無い、へ。

 

 出来損ないから、ギター狂いへ。

 

 

 

 

 胸を張る訳でもないけど、それでも自信にしようと。

 そうして事務所から近い高校……羽丘学園への進学と、一人暮らしを決めた。入試はしんどかったけど、何とかなった。思えば、あの時が一番勉強を頑張った時だった。

 人生で三番目に嬉しかった瞬間だ。羽丘に合格したのは。

 二番は、スタジオミュージシャンになった時だ。

 

 

 

 一番は、それを知ったアイツらの顔を見た時。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ま、今度は壁にぶち当たって折れかけてるんだけどね……」

 

 

 

 一人、暗い、吐き捨てる、黒い塊。

 

 ごぽりとこぼれて、床に広がる。ただでさえ黒い部屋が、黒い海になる。あこちゃんが見たらカッコイイと言うだろうか? いや……景色はカッコイイかもしれないが、僕は最高にかっこ悪い。もっとも、僕がカッコイイ試しは一度もないが。

 

 海に沈んでしまえば、どれだけ声を出そうが、どれだけ六弦を踊らせても、伝わるのは振動くらい。

 

 それでも僕は、黒い塊を吐き出し続ける。意味不明な音の羅列を並べて叩く。

 

 

 

 結局、何も無いからギターがあるに変わっただけ。

 

 

 

 僕の中身は、一ミリも変わっていない。惨めさに悩まされ、どうしようもないと理解し、それに甘えようとせず、醜くもがこうとする道化。

 

 中途半端でいいのに、無駄に上を目指そうとした報いだろうか? それとも、出来損ないがギターをできるようになった報い?

 

 

 

「……あー、あー、あー、あー」

 

 

 

 指は回っている。思考も回っている。なんなら、地球も回っているし、世界も回っている。僕が世界に乗るのがド下手くそなだけで。まるで、今窓の外に輝いている星のようだ。いや、僕は塵か。

 

 適応できず、それでも適合しようともがいている。

 

 結局、それすらできているが怪しいが。整合性が取れているか不明だが。

 

 果たして、何人が僕を見ているのか、それすら分からない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 不意に、チャイムがなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 海の中の筈なのに、やけにハッキリ聞こえる高い電子音。

 

 おかしいな、まだ夜なのに。暗いのに。

 

 首を捻りながら、立ち上がって玄関へ向かう。動かそうと思っても動かせない、僕から生えているしっぽが、力なく廊下を伝う。

 鍵を開け、重たい扉を開く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはようございます! って!? 翔さんどうしたんですか!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 水が、こぼれた。

 

 扉を開けたから当たり前なのだが、部屋の中を満たしていた黒い水は外に流れ出す。彼女に触れそうになっても、何故か彼女を避けていくように流れていく。

 

 ──あれ、眩しい。

 

 夜な筈なのに、外には燦々と輝く、憎い憎い太陽と、儚く輝く、優しい優しい彼女。思わず顔を顰める。

 

 

 

「あれ……麻弥さん? こんな時間にどうしたんですか?」

 

 

 

 自分の声が、耳に届く。どうやら、海の中から出てきてしまったようだ。

 麻弥さんはびしょ濡れな僕を見て、それはそれは目を見開いていた。眼鏡なんて、少しズレ落ちていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんな時間って……いつもの時間ッスよ!? どれだけギター弾いてたんですか!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──目が覚める。

 

 自分の姿を見てみると、昨日の昼過ぎの私服から一切変わっておらず、水滴一つすら付いていない。

 しっぽだと思っていたものは、肩から下げられたギターに繋がったままのシールド、先を見てみると、アンプすら繋がっていなかった。

 

 

 

「あー……多分、昨日の昼から」

「何やってるんですか! 身体壊しますよ!」

「……ごめんなさい……ちょっと、気合い入っちゃって…………ははは、すみません……」

 

 

 

 途端に、視界がぼやける。先程まで感じてすらいなかった吐き気や眠気が身体中を蹂躙していく。

 頭が痛い、心臓が痛い、肺が痛い、肩が痛い、指が痛い。

 

 最後に、心が痛い。

 

 

 

 

「ちょっ!? 翔さん!? 翔さん──!」

 

 

 

 ──いや、最後に痛いのは、耳だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で? 十五時間ギター弾き続けて、朝麻弥さんと会って気を失って……なにしてんの」

「いやぁ……つい」

「ついじゃないッスよ! 心配したんですからね!」

 

 

 

 結局、気を失った僕はそのまま麻弥さんが呼んだ救急車によって救急搬送。日頃の睡眠不足が祟ったようで、一日入院する事になった。

 流石に目の前で倒れられては、麻弥さんも学校どころでは無かったらしく、救急車に乗り込んで一緒に病院に来て、ずっと隣にいてくれたらしい。本当に、本当に迷惑を掛けた。

 

 

 

「ったく……何があったか知らないけどよ……技術に慢心しないのはいいことだけど、考えすぎんなっての。『TEAM』に『I』は無いんだからさ。お前の問題は俺らの問題だ」

 

 

 

 夕方頃に目を覚ました時、病室には麻弥さんと、呆れ顔の陽。そして、病院だろうがお構い無しに爆睡している夢。

 どうやら、後から遥と龍樹に、日菜さんも来るらしい。本当に心配を掛けた。

 

 

 

「しっかし、朝麻弥さんから電話が掛かった時は焦ったよなぁ。滅茶苦茶泣きながら『翔さんが死んじゃうッス!』って……」

「ちょ!? 陽さん言わないで下さいよ!」

 

 

 

 顔を真っ赤にして陽の口を抑えようとする麻弥さんに、思わず笑みがこぼれる。

 

 ──心配してくれて嬉しい、なんて、歪んでるよなぁ。

 

 不味い感情が芽生え始めていることに、多少の焦りを覚えていた。

 

 

 

「……麻弥さん、本当にありがとうございます。一人でこんな事になってたら、大変でした」

「あ、いえ、そんな……ジブンは当然のことをしたまでッスよ!」

「ふーん? 毎朝部屋の前まで迎えに行くのが『当然のこと』?」

「陽さん!!」

 

 

 

 ──いつか、見捨てた方がいいよ、二人とも。

 

 

 

 

 

 明るさに満たされた病室の中で、僕の感情はあまりにも汚すぎた。

 

 

 




ご閲覧ありがとうございます。深く染み付いてしまった癖は、中々治らないものです。高校生ともなろうと、まぁ、無理でしょうね、普通なら。

感想、評価、お気に入り登録等してくれると、スタンディングオベーションします。

それでは、また次回。
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