小さな体に大きな病みを!   作:コロリエル

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どうも、りんごジュースをベッドにこぼしました。萎えたので投稿します。


自己紹介って、失敗する方がレア

 

 自分語りで申し訳ないとも思うが、それでも話さなければならないと言うのが語り手の悲しさだ。そうしなければ物語は進めることが出来ないし、よしんば進められたとしても、その作品は非常に見づらいだろうし、個人的にも読みたくない。

 人と人とが会ったら、初めましてこんにちは。目と目を合わせて自己紹介。これは普通の事だろう。僕もそれに習って、自己紹介から始めさせてもらおう。

 

 僕の名前は加賀 翔。つい数年前に共学となった羽丘学園に入学したばかりの高校一年生だ。

 特徴としては、背がかなり低い、という事だろう。高校一年生になるのに身長が百五十一センチしかない。かなり気にしている所で、毎日牛乳は欠かしていない。

 

 こう見えても、高校生男子五人で結成されたバンド『Knockers』のギタリスト。メンバー内で唯一スタジオミュージシャンとしても活動しているのはちょっとした自慢だ。

 そのお陰で金銭面でも特に苦労しておらず、防音設備の整ったマンションで一人暮らしをしている。理由としては、地元にいるよりこちらに居た方がよりギタリストとして成長できるからと、その他諸々。別に家族との仲が悪いと言う訳ではなく、寧ろ良好。

 それ以外は特筆すべきことも無い。勉強は普通に大嫌いだし、浮いた話のひとつもない。

 

 

 

「この前、友達に『今をときめいてんな』って言われたんですよね」

「男子高校生でときめくってのは無理ありませんかね……?」

「そうですか? まぁ僕も無理あると思いますけど」

 

 

 

 日が短くなっているからか、四時半なのにあたりは少し暗くなりつつある通学路。歩道の建物側を歩く眼鏡をかけた彼女は大和麻弥。

 僕と同じ事務所に所属するスタジオミュージシャン兼、大人気アイドルバンド『Pastel✽Palettes』のドラム担当。彼女の方が『今をときめいている』のだろう、世間的に言ってみれば。

 

 事務所に所属する歴も、学年も一つ上。なので先輩後輩の関係。今は目的地が同じなので、二人でそこへ向かっている所だ。

 もっとも、普段も彼女を事務所へ送り届けたりしているので、今日が特別という訳でもない。言ってしまえば、毎朝一緒に登下校するような仲だ。

 

 こう聞くと『お前ら付き合ってんのかよー』と言う人も居るかもしれないが、よく考えて欲しい。相手はアイドル。こっちはスタジオミュージシャン。釣り合わない。というか付き合えるわけもない。

 確かに麻耶さんはちょっと、いやかなり可愛い。演奏機材を語る時に饒舌になり、語り終えた後に相手に引かれてしまったかも……と落ち込む姿に褒めた時に慌てて否定する姿。照れた時に「フへへ……」とはにかむ姿など、初めて見た時の衝撃たるや。惚れてしまっていてもなんら不思議ではない。

 

 しかし、それとこれとは別問題。僕が、付き合ったら、ダメなのだ。

 僕が、僕なんかが。誰かを好きになってはダメなのだ。

 

 そんな気持ちがあるので、彼女との関係は先輩後輩、友人、バンド仲間、仕事仲間。

 その程度に抑えようと努力している。

 

 

 

「麻弥さん最近ときめいたことは?」

「そうですね……シンセサイザーで波形弄ってた時ですかね!」

「……僕はそんなにレベル高くないです」

 

 

 

 ……やっぱり、麻弥さんは少し変わってる。

 僕もそれなりに変わっているから、お互い様だろう。

 僕より背の高い彼女が慌てふためいている様子を見て、少しだけ笑ってみせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─CiRCLE─

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゆっくりのんびり歩いても、歩く限り目的地には必ずたどり着ける。

 ライブハウスCiRCLE。この地域を活動拠点にしているバンド達がよく利用しているライブハウスだ。

 腕のいいスタッフが何人か在籍していて、高校生への支援も厚い。

 僕達Knockersやパスパレもよく愛用している。今日は僕らも麻弥さん達もCiRCLEで練習しようと言う話になっていたので、二人で揃ってやって着たという訳だ。

 

 

 

「……なんだあれ」

「……やな予感しますねー」

 

 

 

 しかし、今は本当に近付きたくない。遠巻きに見ていても本当に嫌だ。

 目的地なのだから早く行けばいいのに、何故遠巻きに見ているのか、と疑問に思うかもしれないが、逆に聞きたい。

 

 

 

 

 

「だぁかぁらぁ! 夢を起こすのは俺らには無理なんだっての!」

「何とかして起こしなさい、私は彼に聞くことがあるの」

「無茶言うな!」

 

 

 

 

 自分のバンドメンバーが、他のバンドのボーカルと子供のような口論していたら、誰だってうんざりもする。

 口論しているのは、僕らのバンド『Knockers』のベースボーカルの榊 陽。花咲川学園の一年生にして、メンバー一の苦労人。

 

 リーダーに引っ掻き回され、僕に精神を削られ、眠り王子に手を焼き、ヘタレのケツをシバく。

 バンドのツッコミ役としての心労が耐えない、そんな男だ。

 

 その口論相手は、実力派ガールズバンド『Roselia』のボーカル、湊友希那。

 一人一人が高い演奏スキルを要するRoseliaのリーダー。そのカリスマでメンバーやファンを惹き付ける……が、バンド仲間の間では『実はポンコツなのでは?』と言う噂が耐えない。

 この前も、電柱の裏に落ちていた紙袋を猫だと思いこんで、ずっと話しかけている所を見かけた。

 これで周りには猫好きを隠せていると思っているのだからお笑いだ。いや、湊さんにとっては笑えないか。

 

 

 

「……すぅ……すぅ……」

 

 

 

 そして、その口論の原因。うるさいにもかかわらず、足元で思い切り寝転がって爆睡している男子高校生。

 彼は『花咲川の眠り王子』こと暁 夢。基本ずっと寝ていると思っていい。

 夢が起きている時など、演奏している時かご飯を食べている時くらいしか無い。

 しかし、その演奏技術は凄まじく、ほぼ全ての楽器を高いレベルで演奏できる。

 

 湊さんが話を聞きたいのも頷ける。

 

 

 

「ほら、暁さん起きて。もう夕方よ。寝るには早いわ」

「……すぅ……すぅ……」

「……リサ、そこのカフェテリアでコーヒー買ってきて。飲ませるわ」

「友希那!? 」

 

 

 

 オロオロしていたRoseliaのメンバーである今井リサさん。湊さんの無茶振りに思わずたじろぐ。

 ブラックコーヒー程度で目が覚めるのなら、とっくに僕らが起こしている。

 いつ起きるか、誰にも分からない。

 とんでもない男がメンバーなものだ。

 

 

 

「麻弥さん。僕はこれどうするのが正解ですかね。他人のフリできるのならしたいんですけど」

「そうっすね……猫で引き連れてくれば湊さんはどっか行くんじゃないですかね!」

「……止めに行くかぁ」

 

 

 

 今井さんだけに苦労をかけさせるのは、あまりにも可哀想すぎる。本来であれば幼馴染を止めるくらい造作も無いだろうが、あそこまでヒートアップしてしまうと少々しんどい。

 事ある事に口論している二人。そのストッパーは、大抵僕かバンドのリーダーなのだ。リーダーが居ないので、僕がやるしかない。

 ため息を一つ吐き、スタスタと二人の元へと近付き──口論している二人の頭に手刀を落とす。

 

 湊さんには載せるだけのような、陽には思いっきり振りかぶって。

 

 トンッ。ゴンッ。

 

 明らかに威力の違う音が、二人の頭から響く。陽の頭に落とした手刀が痛い。

 

 

 

「二人とも? ここじゃ邪魔になるから、せめて中でやろ。月島さんにならどんなに迷惑かけても大丈夫だから」

「まりなさんにも迷惑かけちゃダメっすよ!?」

「……それもそうね。行くわよリサ」

「あ、うん、そうだね……」

「おいコラ翔! お前俺にだけ本気でやったろ!」

「……すぅ……すぅ……」

 

 

 

 二人のことを可哀想な人を見る目で見つめ、麻弥さんと二人でCiRCLEの中へと入っていく。その後に着いてくるように、湊さんと今井さんもやって来る。

 

 最終的に取り残されたのは、思い切り頭に手刀を食らって悶えている陽と、これだけの大騒ぎをしても一切目を覚ます様子がない夢の二人だけだった。

 

 

 

 

 




ご閲覧ありがとうございます。友人に脅されたから書いている、と言いましたが、内容としては「麻耶ちゃんの二次創作書け」と言ったものでした。麻耶ちゃん好きだからwelcome welcome。

感想、評価等して頂けると幸いです。

それでは、また次回。
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