そうだ、スライム(魔獣)でオ○ホを作ろう   作:赤雑魚

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『虚狼領域』

 狭い空間の中で起動される爆発と焦熱。

 噴き上がる極大の火焔から、小さな人影がはじき出される。

 

 ロアだ。

 

 ボロ布のようになりながら、彼女は辛うじて生存していた。

 

「ぐ、ぅ............っ!」

 

 落下するように着地。

 だが、すぐに膝を突く。

 

 離脱する際に被弾したのか、彼女の左足がぶすぶすと焼け焦げている。一目でわかる酷い火傷、少なくともしばらくはまともに走れまい。

 

「おいおい、なんで生きてるんだ?」

 

 グレンが感嘆の声を上げる。

 

 いままで攻撃に用いていた『炎血』は、ほぼ全てを回避されていた。ダメージを与えていたのは「返り血」くらいのものだ。

 

 だが、回避したという事は、当たれば有効であることの証明でもある。

 無数に仕掛けた「血痕」の中に、自ら飛び込んだロアに回避も防御もできるはずがない。間違いなくグレンの炎血は、致死の威力をもって直撃したはずだ。

 

 

 だが______何をしたのか、重傷ではあるが、生きている。

 

 

「流石は『幻狼』と言いたいところだが______正直がっかりだぜ。発破掛けのための言葉で焦るわ、罠の中に突っ込むわ、見てられねぇわ」

「うる、さい.........ッ!」

 

 ロアが立とうとして、再度崩れ落ちる。

 左足にうまく力が入らない。感覚は失われ、奇妙な痙攣を繰り返している。

 

 それでも立ち上がり、足を引きずりながら街の方角へ向かおうとする彼女にグレンが言葉を投げかける。

 

「でもまあ、やめてくれと俺に泣きつかなかったのは賢かったな。頼まれたところでどうしようも無かったしよ」 

「.........どういう、意味だ」

 

 背を向けたまま、ロアが足を止める。

 

 呆れた声色の答えが、すぐに返ってきた。

 

「戦い始めた時についでに発動しちまったからな。店に住んでるなら、今頃死んでるんじゃねぇの?」

「_________」

 

 

 あっけらかんとした雰囲気でグレンは言った。

 

 

 『ウ~ズ』にいなければ、(ウィル)は無事だろう。だが、ロアは青年があの店にいることを知っている。

 

 他でもない自分が、ウィルをあの場所に置き去りにしたのだから。

 

 グレンの言葉に、ロアが動きを止めて、立ち尽くす。

 

 

 静かな間があった。

 

 

「_______どうして」

 

 誰に問うでもない、口から零れ落ちた言葉。

 何に対しての疑問なのかすら定かではない。だが、『赤色鬼』は嬉々として話し出す。

 

「どうして? そりゃ『幻狼』と関わったからに決まってるだろ」

「............殺す必要が、あったのか?」

「魔族との協力者なんて邪魔にしかならないからな。やるなら徹底的に、だ」

「あいつは、悪い人間ではなかった」

「あー、確かにいい奴だったな。だがな、この世界じゃいい奴ほど在り方として弱い。そして弱い奴ほどすぐに死ぬ。なら、あいつが死ぬのは当たり前だろう?」

 

 個々の善悪など些末なことだ。弱いものから死んでいき、力が無ければ抵抗すらできない。

 魔族であれば誰もが知る常識は、魔族でなくとも適用される。弱かった彼は、ウィル アーネストはそのルールに呑まれたのだとグレンは言った。

 

 

 この世界の命は、とても軽い。

 

 

「.........ああ、そうだったな」

「だろ? 話がはやくて助かるぜ」

「_______だから礼に、一つ教えてやる」

 

 燃える世界のなかで、グレンに鋭い殺意が突き刺さる。

 いままで向かい合う中で、一度として感じなかった激情が、目の前のロアからは放たれていた。

 

 動じた様子もなく、グレンは歓喜の表情で迎え入れる。

 

「へぇ、何を教えてくれるんだ?」 

 

 グレンの愉快そうな問いかけ。

 

 ロアがゆっくりと振り向く。

 猛る感情を吐き出す『幻狼』は、紅い眼を輝かせながら静かに言い放った。

 

 

「私より弱いお前は、ここで死ぬ」

 

 

 鬼は嗤った。

 

「それはどうか、なっ!」

 

 間合いの遥か先にいるロアへ向けて、グレンが剣を振り抜く。

 

 『刻飛』

 

 鞘に仕込んだ「炎血」で刀身を濡らし、抜刀と同時に熱の斬撃として放つ長射程攻撃。

 炎熱による威力と攻撃範囲の拡張というシンプルな効果。だが、一方的な攻撃を可能とするソレは戦場で圧倒的な優位性(アドバンテージ)を約束する。

 

 ロアに防御手段はない。避けるとしても、負傷した足では大きな隙ができる。

 

 駆ける斬撃がロアに直撃する。

  

 瞬間。

 

 

 どくり、と世界が蠢いた。

 

 

 ロアの横を、斬撃が通り過ぎる。

 

 当たれば魔族であろうと両断する炎の斬撃は、しかしロアの傍にあった建造物を斬り裂くにとどまった。

 

「............あ?」

 

 相手が動いた様子はない。

 なのに、当たるはずの攻撃がなぜ外れる?

 

 グレンの疑問を置き去りに、ロアの魔力が大きく脈打つ。

 

「______果てへと至れ『虚狼領域(ホロウヘイム)』」

 

 ぐにゃりと()()()()()()()()

 

 錯覚ではない。

 

 周囲の火災による陽炎でもない。

 

 ロアの周囲の風景が、まるで水に溶かした絵具のようにねじ曲がり、胎動し、拡大していく。狂気に取りつかれた画家が描いたような空間へと変貌してく。

 

 その中で『幻狼』だけが、形を残している。

 

 赤い視線が、じっとグレンを視ている。

 

 ぞわり、とグレンの背筋に悪寒が走る。

 

「シィッ!!」

 

 本能的に再度、飛ぶ斬撃を放つ。

 だが、やはりロアの近くで見当違いの場所へとズレる。当たらない。

 

 原理不明の奇妙な現象。

 

 明らかに「魔法」に起因するもの。

 

 

「ようやく、ソレらしくなってきたか!」

「...............」

「どうした、さっさと始め_______!?」

 

 

 目の前に、ロアが立っていた。

 

 

 一歩も動く様子はなかった。

 にもかかわらず、グレンの間合いの内側に踏み込まれている。

 

 グレンの腹部に鋭い衝撃が走る。

 痛みで膝を着きそうになるのを堪えて長刀を振り抜くが______当たらない。

 

 気がつけば間合いの外へと離脱されている。

 

 動作の予兆なく移動を終えているという、術理不明の不可解な現象。

 だが、今までの攻撃と比べて、明らかに重い一撃。その意味はだけはよくわかる。

 

「.........テメェ、さっきまで手ェ抜いてやがったな?」

「だとしたら?」

「そりゃお前______最高の気分だぜ!」

 

 不意打ち気味に、目の前に佇むロアに斬りかかる。

 

 踏み込んでの、上段からの振り下ろし。

 歪んだ空間ごと斬り裂くと言わんばかりの斬撃は、風景の歪みに沿うようにロアを外れて地面へと抉り込む。当たらない。

 

 剣を振り切ったグレンの顔にロアの膝蹴りが突き刺さる。

 

「ご、あ」

 

 近接戦は不利、そう判断する。

 

 飛びのきながら口を噛み切り、牽制がわりに炎血を吹き散らす。吐き出した血液が爆発、ロアを巻き込むように閃光を放つ。

 

 当たったかは不明、だが距離は確保した。

 

 一旦、体勢を立て直そうとして______

 

「どこに行く?」

「.........っ!」 

 

 いつの間にか、懐に潜り込まれている。

 炎の弾幕を乗り越えられたわけでもないのに、なぜか目の間に立たれている。数度の交錯で、間合いの主導権を完全に奪われていることを理解した。

 

 こちらの意志で距離を取ることはできない。

 だが、近付いてくると予測はしていた。ならば対応はできる。

 

 

 先ほどの一瞬で、鞘に収めた長刀を抜き放つ。

 

 

「閃、撃ィィイイ!!」

 

 異形の血液が、鞘の内部で燃え上がる。

 爆炎の加速をもって、『赤色鬼』の抜刀は神速へと到達する。

 

 火焔の威力をもって防御不可、抜刀の速度をもって回避不能。

 

 

 グレンの持つ、必殺の一撃。

 

 

 本来であれば。

 

「無駄だ」

「はは、ちくしょう」

 

 世界が歪む。

 

 ぐにゃりと、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 攻撃が、届かない。

 

 振り抜かれる拳を、グレンの視界が捉える。

 空いた手で庇うように、一撃を最小限の動きでいなそうとして_____

 

「がっ.........!?」

 

 ______一瞬で背後に回り込んだロアに殴り飛ばされる。

 

 予兆のない移動、受け身も防御も間に合わない。

 バキボキと身体の内部が破壊される。怪力に身体をくの字に折りながら瓦礫の山に叩きつけられる。

 

 この瞬間。

 

 間違いなく、グレンがロアに圧倒されていた。

 

「............く、くくく。なるほどね」

 

 ごぽり、と口から溢れた血を、手で拭う。

 弾けた内臓と、砕かれた骨が再生する激痛を味わいながら、グレンは笑い声をあげる。

 

 否、ロアの魔法を理解した今、笑うほかない。

 

 不動のままに距離を詰め、間合いから離脱できる機動力。

 いかなる攻撃も、軌道を捻じ曲げて無効化する防御性能。

 その二つをもってして、一方的な攻撃を可能とする規格外の()()()()()()

 

 それがロアの魔法の正体だ。

 

 逃れられないはずの密室爆撃を受けてなお無事でいたのも、例の魔法のお陰だろう。

 

「反則だぜ、ソレ」

「そうかもしれないな」

 

 強い、どころではない。

 

 もはや理不尽の領域だ。

 

 攻撃の主導権は、常にロアに握られている。

 

 こちらは一切の攻撃が届くことはなく、そもそも動きすら捉える事ができない。

 見えているのに触れられない、捉えているのに届かない。

 

 まるで幻。

 

 

 ______故に『幻狼』か。

 

 

 

 これがかつて世界を滅ぼしかけた魔王軍の一人。

 地獄を積み上げた先兵の一体。

 

「ははははははは! 感謝するぜ『幻狼』! この戦いは期待通り、いや期待以上だ!」

 

 ゆっくりとグレンが立ち上がり、刃を鞘に収める。

 鮮血無双の『赤色鬼』は両の足で大地を踏みしめ、腰を深く下げ、僅かに鯉口を切って構える。

 

 相対するロアは動かない。静かにその場で佇んでいる。

 虚空支配の『幻狼』は不動のままに地平のすべてを踏破できる。

 

 燃え続ける世界の中で魔族達が向かい合う。

 

 肌を焼く焔光。

 

 臓腑を焦がす大気。

 

 もはや炎熱で無事な建築物は一つとして無く、あとは燃え尽きるのみ。戦いの後に残るのは破壊の痕跡だけだ。

 

「さあ、ともに生命を燃やそうか!」

「黙れ.........。お前は______一人で死んでいけ」

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 静かに呼吸を止めた。

 

 大気の魔力が脈打つ。

 

 殺気というべき気配が強まった瞬間、歪んだ空間にロアの姿が掻き消える。

 

 呼応するように、グレンが『閃撃』を()()()()()()()()

 

 勘、或いは第六感とでもいうべき反応。

 

 間合いを自在に支配する相手は、常に奇襲することが可能である以上、グレンはそれを踏まえた上で対応する必要がある。だが姿が見えてからでは、対応が到底間に合わない。

 

 故に、自身の経験から成立する直感のみでグレンは刀を振るう。

 

 斬撃が、背後に立っていたロアを捉える。

 

 だが無意味だ。

 

「_______」

「............ッチ!」

 

 だが、歪んだ空間に阻まれ刃は届かない。

 

「げぶっ!?」

 

 ロアが全力の打撃が鬼を撃ち抜く。

 拳で顔を叩き潰し、蹴りで膝をへし折り、肘で骨を砕き、膝で内臓を破裂させる。衝撃で吹き飛んだグレンに追いすがり、容赦なく追撃を加える。

 

 立ち上がれば殴る、逃げようとしても追い付き殴る。

 反撃してくれば間合いから離脱し、隙ができれば距離を詰めて殴り続ける。

 

 返り血の『炎血』で四肢が焼け付こうと動じない。

 

 グレンの人体を破壊し、再生し始めた部分からもう一度破壊する。

 

 無論、死ぬまで。

 

「が、ふ、げ」

「______して、やる」

 

 こんなにもあっさりと弱っていく魔族を見て思う。

 

 なぜ、最初から戦わなかったのかと、思う。

 

 

 

 ___優しい、青年だった。

 

 厄介者の魔族である自分を拾い、自分の店で雇い居場所を与えてくれた。

 自分を雇うメリットなど何もない。客が減ると理解して、仕事の覚えの悪い自分をそれでも店員として雇い続けた。

 暗い過去が追い付いた時すらも、「逃げよう」と手を差し伸べてくれた。

 言い訳ができないほどに最悪な状況になっても、ロアに恨み言の一つも言わなかった。

 

 弱い人間だと、今でも思う。

 

 力ではなく、その在り方が。 

 

 ロアを助けてしまうほどのお人好し。他者を傷つけるくらいなら自身の損を許せてしまう性格。大切なもののために、本当に大事なものが見えなくなるタイプ。

 

 呆れるほどに人畜無害な人間だ。根本的に戦いに向いていない。

 

 こんな世界では、割を食う方が多いに決まっている。

 ロアの争いに巻き込まれたのも、ほとんど自業自得だ。死んだって文句を言えない。

 

 

 けれど、ウィル アーネストは、幸せになるべきだった。

 

 

「殺して、やる………………!」

 

 身体が鉛のように重い。

 

 魔力の枯渇が始まってしまった。

 空間支配の異能は強力であるが、相応に魔力消費も大きい。無理な身体活性も加わって全身が悲鳴を上げている。

 

 じきに限界が来て動けなくなる。

 

 だが、それら不都合を意志の力で捻じ伏せる。

 いままで押さえつけていたウィルへの感情が、理解できない想いが彼女自身を突き動かす。

 

「_________」 

 

 弱っていく鬼を破壊しながら、考える。

 

 ロアが、守らなければならなかったのだ。

 自分は戦う事だけしか知らない魔族で、脅威を叩き潰せるだけの力があった。

 

 けれど。

 

 なら、どうして自分は、魔法も使わずに戦っていたのだろう。

 未練がましく『赤色鬼』の命を奪わずにいたのだろう。

 

 そうだ、戦わなければならないと理解しながら、それでも殺すことを避けていたのは、あの青年がなにか大事なことを話していたから。ロアに拒絶されてもなお、恨み言の一つもなく、暴力にさらされながら必死に吐き出した言葉は____

 

 

 ____それでも貴方は、もう誰も殺さなくていいんです。

 

 

「……………………ああ」

 

 拳を止める。

 

 彼の言葉を、思い出した。

 決別する前に聞いた彼の言葉を、思い出してしまった。

 

「これは______殺せないな」

「.........んだよ、つまんねぇの」

 

 グレンが拗ねたように呟く。

 

 ロアが止まったのは一瞬。

 だが、決着が着くには十分な時間だった。

 

 辺りに散らばった、鮮血と流血が起動する。

 

 光が満ちる。

 

 音が消える。

 

 

 歪みを纏った狼を、地獄の炎が呑み込んでいった。

 

 

 

 

***

 

 

 

 綺麗な、月が見えた。

 

 

 瓦礫の上を、ロアは転がっていた。

 

 とっさに空間を歪めたが____完全には防げなかった。

 

 最後に受けた爆撃で全身が痛む。

 魔力も尽きたせいで、身体も満足に動かせない。

 

 遠くで地面を踏みしめる足音。

 

 視線だけを動かすと、グレンが佇んでいた。

 ロアと同じか、あるいはそれ以上に満身創痍と言った風体だった。

 

 徹底的に身体を砕いたのだから当然か。

 それでも立ち上がっている所を見ると、因子(ベース)となっている魔獣が予想以上に強力だったらしい。少なくともロアの因子にはここまでの再生力はない。

 

「よう、『幻狼』。勝負は俺の勝ちか?」

「............ああ、お前の勝ちだよ『赤色鬼』」

 

 あれほど闘争を望んでいた『赤色鬼』は、自身の得た結果に納得がいっていない様子だった。

 

「お前は強かったが弱くなっちまったな」

「............そうだろうな」

 

 嗚呼。

 

 そうだ、『幻狼』は弱くなってしまった。

 強く在り続けられないほどに、『ウ~ズ』はあまりにも心地よかった。弱さに慣れてしまうほどに、ウィル アーネストは優しすぎた。

 

 故に、勝負に負けた。

 

 いや、最初から勝負にもならなかったのか。

 

「なあ『赤色鬼』、お前はこれからどうするつもりだ?」

「ああ? .........そうだなぁ、死ぬまで戦うな」

「戦う、か」

「それが俺だ。それが魔族だろ。______まァ弱い奴を殺しても仕方ねぇ、適当に強そうなやつ見繕って喧嘩吹っ掛けるぜ」

 

 グレンが刀を振り上げる。

 

 勝者には栄光を、敗者には死を。

 魔族であれば誰もが知るルールを執行しようとして、ふと動きを止める。

 

「そういえばお前、元魔王軍なんだってな」

「............ああ」

「じゃあ四天王だったってのは本当か?」 

 

 ずいぶんと昔の話を持ち出してくるものだ。

 

 まあ、隠すほどの事でもない。簡潔に答える。

 

「いいや、私はただの一般兵だ。四天王は別にいるよ」

「............お前より強い奴がいたのかよ。四天王は化け物ぞろいだな」

「そう、だな」

 

 魔族にバケモノと呼ばわりされるという皮肉に、思わず笑う。

 

 だがアレらは、まさしく別格の存在だった。

 

「まあいい、じゃあな『幻狼』。お前は弱かったよ」

「_______」

 

 最後の会話は終わった。

 

 瞳を閉じる。

 

 苦しい人生だった。悔いもある。

 けれどあの青年との時間は、ロアの人生で何よりも______

 

 

 

 

 

「______いやいや、何勝手に話を締めようとしてるんですか」

 

 

 巨大な何かが、落ちて来た。

 

 

 どぷん、と粘度の高い液体のような、重量感のあるナニカ。

 それはしゅるりと流動しながら、グレンとロアに波打って接近する。

 

「あァ!?」

「これは______」

 

 突然の飛来物にグレンが飛びのく。

 

 だが動けないロアは、そのまま身体を呑み込まれる。

 

 一瞬だけ警戒した後、困惑する。

 害意を感じない。それどころか身体を保護するように蠢くもの、見たこともない程に巨大だがこれは_____

 

「これは____スライムかァ!?」

「そうですよ」

 

 朦朧としていたロアの意識が覚醒する。

 

 どこか温かい、落ち着いた彼の匂い。

 

 咄嗟に声がする方向を見る。

 

「なんで______」

 

 目を見開く。

 

 くすんだ茶髪、無感動な瞳。

 年齢以上に若く見える青年が、目の前に立っている。

 

 目頭が熱くなる。

 声が震える。涙が頬を伝う。

 胸の奥底から、いくつもの感情が溢れそうになる。

 

「どうも、助けに来ました」

 

 

 

 ウィル アーネストが、そこにいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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