そうだ、スライム(魔獣)でオ○ホを作ろう   作:赤雑魚

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商業都市ヴァルト編
品評会


 

 

 そうだ、スライムでオナホールを作ろう。

 

 

 案外悪くない発想で生まれたジョークグッズは、僕の想定以上に利益を上げた。

 

 元手になるスライムがタダみたいな物なので冗談みたいなローコストで量産可能。

 掛かる費用は運送代と販路開拓くらいのものになるのだけれど、一度スライムを届ければ送り先で増殖するし、開拓にしても企業から提携の契約をお願いされるような状況だ。 

 

 利益配分を決めれば、あとは売り上げに応じて勝手にお金が振り込まれてくる。

 

 凄まじい勢いで増える貯金に正直怖いという感想しか出ないが、それを除けば非常に順調だ。

 

 最近は食品としてのスライム販売店「ウ~ズ」の知名度も高まってきているし。

 

 基本的には。

 

 この状況で文句なんて言いようもない。まったくもって結構な話なのだけれど、金が集まればそれに合わせて相応の面倒も出てくる。

 

 例えば税金絡みは、数字に杜撰な僕は頭を抱えたくなる所ではある。

 だが今困っているのは、もっとコミュニケーションを求められる話だ。自身の才覚を頼りに利益を上げ続けるような者達が一堂に集まり、自社の製品やら取り組みやらを売り込むようなヤツ。

 

 いわゆる品評会的なのである。

 

「そんなに嫌かね、社交の場は?」

「正直、苦手というか。僕みたいな人間は場違いにしか思えませんね」

「はっはっは!! 今をきらめくスライムマスターが言うと嫌味にしか聞こえんな!」  

 

 大声で笑いながら髭をなぞるスーツ姿の男性を見る。

 

「国家に武装を卸してる一ノ瀬重工に、利益云々で嫌味もクソもないでしょう」

「かもしれんね!」

 

 一ノ瀬ジュウゾウ。

 

 その手の業界では知らない人間はいないくらいの大物だ。

 会社は包丁一本から重火器まで幅広く取り揃えているような超がつく大企業。品質が確かで国内外問わず、売る商品は絶大な人気を誇っている。

 

 そんな企業の重役がごろごろしているのだから、家に帰りたくもなる。

 明らかに一介のスライム売りが来れる場所ではないし、目の前でニコニコしているオッサンの招待がなければここには来なかった。

 

「僕の養父との仲があっても、やり過ぎですよ」

「バレル・ロウには世話になったんだ! キミとも知らない仲じゃないんだ、仲良くしようじゃないか」

 

 僕の養父は傭兵だったのだが、護衛をしていた時期があったのだ。

 養父が死んだ後も、一ノ瀬氏は何かにつけ面倒を見てくれているのだが、たまに無茶な話を持ち込んできたりするので困る。

 

「今回みたいなのはやめてくださいよ。心臓に悪い」

「善処しよう!」

 

 大企業の重役がスライムホールを見て、「ほう...」「これが例の...」とか言いながら説明を求めてくるのだ。試しに置いておいた()()()に関しては真顔で喰いついてくるし。

 

 怖すぎるだろ。

 

「まあせっかくの商業都市ヴァルトだ。楽しんでいこう」

「.........それもそうですね」

 

 やや引っかかる所はあるが、一理あると頷く。

 

 商業都市ヴァルトといえば、世界中のあらゆるものが流通する交易の中心点だ。

 「お金さえあれば、あらゆるものが手に入る」とまで言われるほどに、あらゆるやり取りが盛んな場所だ。後ろ暗いところも含めて、世界有数の栄えた場所と言っていいだろう。

 

 目新しい商品もあるだろうし、品評会を終えたら市場調査をしてもいいかもしれない。

 

 新商品を市場で売って見るのもよさそうだ。

 

「ああ、そういえば! 紹介をしたい人がいてね!」

「はぁ、僕にですか?」

「もちろんだとも!」

 

 一ノ瀬氏が手招きをすると、少し離れた場所から少女が現れた。

 

 歳は17くらいだろうか。

 

 夜を染め上げたような黒髪、落ち着いた紺のドレス。

 どこかジュウゾウ氏の面影がある整った顔立ち。嫌なことがあったのかやや不機嫌そうだ。

 

 なんだろう、嫌な予感がする。

 

 僕の気持ちなんて当然知る由もなく、一ノ瀬氏がニッコニコで話す。

 

「うちの一人娘さ!」

「.........一ノ瀬ユイです」

 

 ああ家族か。

 

 道理で似ているわけだ。

 知り合いである以上、家族の紹介くらいはするよな。

 

 まあ挨拶も済ませて、ここらへんで退散するのが吉だろう。経験上、妙な空気の時は何か起こる前に逃げるに限る。

 

 養父もそう言ってたし。

 

「あ、どうも、ウィル アーネストです。では、僕はこれで」

「待ちたまえ!!」

 

 腕を掴まれる。

 

 クソ、力が強い!! 本当にデスクワーク主体の人間の力か!?

 

 不味い。

 

 この流れで目の前の面倒臭い親父が、まともなことを言ったためしがないのだ。

 

 

「可愛い子だろう!? どうだろう! お見合いをしてみる気はないかな!?」

 

 

「ええ.........」

 

 この場合はどういう返答が正解なんだ。

 助けを求めて一ノ瀬ユイを見るが、彼女は暇そうに髪の毛を弄っている。援護は期待できなさそうだ。

 

 正直乗り気じゃない。

 

 ていうか勘弁して。

 

 かと言ってその場で断るのも失礼に当たりそうだ。

 

 この手の話は出された時点で一旦受けるしかない。

 そう気づいた僕は、やむなく引き攣った笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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