そうだ、スライム(魔獣)でオ○ホを作ろう   作:赤雑魚

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見合い

 

 

 

 

 大企業の社長がひしめく品評会をなんとか終えた僕は、一ノ瀬ユイを連れて街へ繰り出すことになった。

 

 

 正直、困った。

 

 

 お見合いなんて初めてだ。何をすればいいかわからない。

 だが、交流のある相手の大事な娘を放置するわけにもいかないので、現在は適当に街中をぶらついている所だ。

 

 なんだよお見合いって。

 

 異性と付き合ったこともない奴にいきなり振るイベントじゃないだろ。

 

 そんな感じでやや思考停止気味だったのだが、一ノ瀬ユイにとってはそうではなかったらしい。

 

「最初に断っておくけれど、私は貴方に微塵も興味がないわ」

「アッハイ」

「どうしても見合いを進めたいというのなら、芸の一つでも見せてもらえるかしら。薄っぺらい人間には難しい事でしょうけど」

 

 素晴らしいまでの脈の無さだった。

 

 社長の態度からすると、今までも何度か似たようなことがあったのだろう。

 僕なんて彼女からすれば有象無象もいいところだ。街へ繰り出して数分足らずで、彼女に振られてしまった。

 

 どうやら恋愛頭脳戦はここで終わりのようだ。

 

 というか彼女が僕に興味が無いなら、そもそも始まってすらいないまである。

 

 勝負どころか相手にすらならないのが悲しいところである。

 

 そんなことを考えていると、やや拍子抜けしたように彼女が首を傾げる。

 

「...............怒らないの?」

「一ノ瀬重工のお嬢様に比べたら、薄っぺらいのは事実だしね」

「今までの見合い相手に同じことを言ったけれど、大抵は不機嫌になるか、怒鳴るかしていたわ」

「まあ人によっては怒るかもね」

 

 大企業のご令嬢に、民間のスライム売り如きでは役不足だろう。

 社長からの話とは言え、僕なんかと面談を組まされた彼女には同情している。

 

 隣を歩く一ノ瀬ユイをまじまじと見る。

 

 品評会の時に来ていた淑やかなドレス姿から、極東の学生制服に着直している。

 

 セーラー服というやつだ。

 

 ドレスを着ているときは大人びた印象だったけれど、今の制服姿は年相応の少女といった雰囲気になっている。

 

「ま、僕はユイちゃんの役に立たない護衛くらいに考えてよ。ショッピングの荷物持ちくらいは出来るだろうしさ」

 

 この街に滞在する間に、何度か顔を合わせをして欲しいというのがジュウゾウ氏の話だ。

 

 僕としては彼女と外で時間を潰しておくのが適当だろう。

 

 そもそも見合いなんて互いの了承が前提みたいなものだ。

 

 彼女に気が無いならそれでよし。

 とりあえず一緒に出かけるだけでもジュウゾウ氏の顔は立つ。

 

「護衛.........、そういえば従魔士だったのね」

「万年Eランクだけどね」

 

 やっていることはスライムを増やして売るだけだ。

 

 ランクなんて上がるはずもない。

 

 そもそもEランクは戦闘能力が皆無な人間用の評価だ。

 スライム使いが得られる最低限のランクにはロクな依頼が回ってこないので、何か特殊な依頼を請けない限りは上がりようがないのだ。

 

「なんの魔獣を従えているのか、聞いてもいいのかしら?」

 

 自分の魔獣の情報を教えることを嫌う従魔士は多い。

 理由は魔獣の種から大まかな戦闘スタイルが割り出せたりすることがあるからなのだが、僕の場合は商品として売り出しているので隠すつもりはない。

 

 なので普通に応える。

 

「僕の魔獣はスライムだよ」

「.........スライム?」

 

 どうやらジュウゾウ氏は僕が、ナニを売っているのか説明していなかったらしい。

 

 久しぶりに「なんだこいつ?」みたいな表情で見られた。

 

「素人質問で恐縮なのだけど、弱いことで有名なアレかしら?」

「そうだね」

「どこでもよく見る魔獣、だったかしら?」

「それだね」

「時折、食材としても取り扱われている?」

「間違いないね」

「.........っ、.........?」

 

 おー、めっちゃ困惑している。

 

 普通に考えるとスライムをテイムする人間なんていない。まともな反応だ。

 

 爪も牙もない。

 おおよそ人を害するとは無縁の魔獣がスライムだ。

 

 まあ自己紹介には丁度いい。

 

「歩き続けるのもなんだし、座って話そうか」

「.........ええ」

 

 近くにあったオープンカフェに入り、適当にお茶を注文して席に着く。

 

「さっきも言ったけど、僕の従魔はスライムだよ。ほら証拠」

 

 従魔は距離に関係なく呼び出せる。

 

 手の平に小さいスライムを召喚し、何匹かテーブルに転がしてみせると、一ノ瀬ユイが目を大きく開く。

 

 プルリとした透明な玉状の流動体、ゆらゆら真ん中に浮かぶ核。

 どこからどう見ても、なんの変哲もないスライムが、日の光を淡く反射してキラキラと輝いていた。

 

「触っても?」 

「大丈夫だよ、スライムだしね」

 

 スライムをすくい上げ、ゆっくりと彼女に手渡す。

 

 ぴくっとやや慎重な素振り見せながら、手のひらに収めた小さなモンスターを指でつつく。

 

 僕の小さな相棒は相変わらず無反応だ。

 ただひたすらにぷにぷにと触られるがままになっている。

 

「.........悪くないわ」

「それはよかった」

 

 どうやら一ノ瀬家のお嬢様はスライムをお気に召したらしい。

 

 硬めのスライムは、ぷにぷにした感触が癖になるのだ。

 触っているだけでも案外楽しいし、巨大なサイズにするとクッションとしては最高になる。性能としては人をダメにするレベルだ。

 

「でも護衛としては失格ね。柔らかくて敵と戦えないわ」

「いやでも、凄い勢いでぶつけたら相手を倒せるよ」

 

 先日戦ったグレン曰く、魔族でも重傷を負うレベルらしいし。

 

 だが冗談と捉えられたらしく、クスリとユイちゃんが微笑む。

 

 

 いやマジなんだって。

 

 

「.........さっきは失礼なことを言ったわ。ごめんなさい」

 

 どこか沈んだ表情で、一ノ瀬ユイは頭を下げた。

 

「なんとも思ってないよ。少し驚いたけどね」

「いつもの父の差し金かと思ったの。血筋に由緒ある家の子息かと思ったわ」

「相手としては適当じゃん。ぶった切る意味なくない?」

 

 やや自虐気味に彼女が笑う。

 

「本当にそう思う?」

「違うの?」

「一ノ瀬家は武器を売って短い代で地位を上げた一族なの。家に歴史なんてほとんどない、いわゆる成金ね」

 

 国に影響を与える程に栄えてはいるが、それは極東の名家からすれば面白い話ではない。

 

 まあ言ってしまえば、一ノ瀬家は上流階級内では疎まれる位置にいるらしい。

 

「あーわかった、面倒な相手と見合いをさせられてるんだ」

「血筋の良い方の自慢話で済むならいいわ、でも実際は嫌がらせばっかり」

 

 最初の態度は、さっさと見合いを終わらせるための方便だったらしい。

 まあ上手く行かない顔合わせを続けることを考えると、多少無理にでもさっさと切り捨ててしまった方が楽なのだろう。

 

 どうやら一ノ瀬ユイも苦労をしているようだ。 

 

「その点、貴方は地味で気を遣わなくていいから助かるのよ」

「これ、褒められてる?」

「ええもちろん、貴方のその人畜無害さは誇っていいわ」

「あっ褒められてないなこれ」

 

 そもそも僕みたいな陰気な人間には、無害くらいしか取り柄がないので間違ってないけど。

 

「短い間だけれど、よろしく。私のお見合い相手兼護衛さん?」

 

 そんなこんなで商業都市ヴァルト滞在での数日間。

 

 

 僕は一ノ瀬ユイとのデートをすることになるのだった。

 

 

 

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