僕が美術部に入って生きる目標を見つけるまで   作:生煮えまぐろ煮

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証明写真

 とりあえず僕達は鈴也を連れて駅ビルの中にあるサイゼに向かった。あのままだと僕と藤院さんが付き合ってるという噂が学校中に流れそうだったからだ。

 

「それで、なんで湊和と藤院さんが一緒に居んの?お前が俺と桃花(ももか)以外の人と話してるの見た事ないけど」

「いや、僕だって誰かと話すことぐらい─」

「嘘つけお前ボッチだろ。帰りもソッコー家に帰るし」

 

 何も言えない。僕がボッチなのもすぐに家に帰ってるのも事実だから。

 というか藤院さんもなんか言ってくれ。

 

「えっと。別に私と樂漸君は恋人じゃないよ? 美術部に入ってくれたからそのお祝いで一緒に遊んでただけで」

「お、そうなの?ごめん仲良さそうだったからデートだと思ってた。よく考えたら湊和が藤院さんと付き合えるわけないよな」

 

 鈴也はそう言って笑った。余計なお世話だほっといてくれよ。

 

「で、なんで美術部に入ったの?実はお前ゴッホ目指してたのか知らなかったわ」

「いや。美術部が人数足りなくて廃部になっちゃうらしいから入ろうかなって。鈴也も入らない?あと一人なんだけど」

「あ?俺が?俺絵なんて描けないけど良いの?藤院さんは?」

「私は大丈夫。その、名前だけでも貸してくれたら嬉しいんだけど、私のバイト先の中華料理屋に来てくれたら大盛りにしてあげるから──」

「マジで!?よっしゃ入る入る!明日桃花も誘っとくわ!藤院さんってめっちゃ真面目で硬そうな人だと思ってたけど最高だわ!」

 

 そう言って鈴也は俺が奢ると言って勝手にピザを3枚も頼んだ。どんだけ嬉しかったんだよ。というか藤院さんコイツの勢いに若干引いてない? 

 

「そんじゃなんか飲み物取ってくるわ。湊和はなんでも良いよな?藤院さんはなんかある?」

「あ、私はアイスティーかな」

「アイスティーな、了解!最高のアイスティー入れてくるわ!」

 

 ドリンクバーに最高も最低もないだろ。 変なの混ぜないだろうな。

 

「ごめんね藤院さん、うるさかったでしょ?」

「ううん。毒島君って面白い人なんだね。私、見た目で誤解してたかも」

 

 ちなみに鈴也はあの顔で落語が好きらしい。耳にイヤホンつけてるのを見るとレゲエでも聞いてるようにしか見えないけど。いや、別にレゲエな意味は無いが。

 

「おうおまたせ。湊和のは特製ドリンクにしてやったから感謝しろよな」

 

 小学生かお前。何混ぜたんだよ濁った灰色の飲み物なんて初めて見たわ。しかも飲めなくは無いのが腹立つ。

 

「ちょうどピザも来たな。まあ食えよ、俺の奢りだからよ。足んなかったら何でも頼んでいいからな」

 

 そういってピザに備え付けのタバスコをかけ始める。半分も使うなよ迷惑だろ。というか食べてからそこまで時間経ってないから1人1枚も食えんわ。嘘だ、藤院さんは普通に食べていた。

 

「そういえばさっき毒島君が、桃花も誘うって言ってたけど雅楽川(うたかわ)さんも入ってくれるの?」

 

 雅楽川桃花(うたかわももか)、鈴也の幼なじみでいつも昼食を食べる仲だ。元々僕は一人で食べていたが鈴也が奢ってくれた時から一緒に食べている。見た目は今どきのギャルって感じだが頭は良いし、結構優しい。鈴也が頼めば多分入ると思う。

 

「さあ?けど多分俺が誘えば入るっしょ。俺ら幼稚園から一緒の超マブだからさ。もしかして桃花のこと苦手だったりする?そんなら考えるけど」

「4人に増えたら部室片付けないとって思って。私一人しか使ってなかったから埃とか積もって汚いから」

「お、そんなら俺冷蔵庫とか持ってくるわ!親父の会社のどっかに小さい冷蔵庫あったから借りてくるぜ」

 

 そんなことを話して僕らはサイゼリアを出た。結局僕のピザは鈴也が食べたが、藤院さんはなんと全部食べてしまった。あの体のどこに入るのか疑問だ。

 

「そんじゃまた明日な、絵なんて何年も描いてないから楽しみだわ!」

 

 そういって鈴也は大きく手を振りながら街中の方に歩いていった。近くにある雅楽川さんの家に遊びに行くらしい。

 

「それじゃ私達も帰ろっか。帰り道、多分途中まで一緒だよね?」

「え、どの辺なの?」

「橋の近くのマンションだよ。私、今一人暮らししてるんだ」

 

 南口を離れて元来た道を歩く。行きと違って高校生や会社員が減って静かだ。

 

「あ……記念のプリクラ撮り忘れてたね」

 

 スーパーの横辺りで藤院さんがぽつりと呟いた。そういえば撮ってなかったな。けどプリクラを一緒に撮るのって冷静に考えると恥ずかしい。

 

「あ、そこの証明写真機で撮ろうよ!」

「え、証明写真機で撮るの!?」

「ほとんどプリクラだから大丈夫だよ。ほら、早く!」

 

 そう言って藤院さんは僕を引っ張って行く。スーパーは閉店時間が近いのか人気が少なかった。

 

「え、本当に撮るの?」

「撮るよ。ほら詰めて詰めて」

 

 藤院さんが僕を証明写真機に押し込む。話して1日の男にこんなに近寄るなよ僕が邪な目で見てたらどうするんだ。火神さんに殺されそうだからそんな目で見れないけど。

 

「ねえ樂漸君。今日はありがとう、私誰かと遊んだの初めてなんだ。友達はいるけど皆学校だけだから」

「僕こそ藤院さんと仲良くなれて良かったよ。美術部に入って良かったと思う」

「今度は毒島君と、入ってくれるかはまだ分からないけど雅楽川さんも一緒に遊びに行こうね」

 

 証明写真に移る藤院さんは笑顔で、僕も笑っていた。久しぶりに笑ったかもしれない。

 

「それじゃあ、また明日ね。おやすみ樂漸君」

 

 そう言って彼女は僕と別れた。1人になると凄く静かになった気がする。少し歩くと『志在千里』が見える。どうやら盛況してるようだ、外からも声が聞こえる。

 

「後で火神さんにもお礼言わなきゃな」

 

 10分ほど歩くと僕の住むアパートに着いた。錆びたドアを開けて家に帰る。テーブルとベットと本棚しかない殺風景な部屋だ。鞄を下ろしてベットに座り込む。今日は楽しかった、藤院さんってあんな人だったんだな。この高校に入ってよかったと思う。藤院さんに鈴也に雅楽川さん、今まで友達なんて全然いなかったのに1ヶ月も経たずに3人も仲良くなれた。学校に行くのが楽しみだなんて小学生ぶりだと思う。

 

 この後僕はシャワーも浴びずに寝てしまい、朝慌ててシャワーを浴びたせいで遅刻ギリギリになったが藤院さんは普通に登校してクラスメイトと話してた。鈴也は普通に遅刻してきたが。

 




ここまでお読みいただきありがとうございます。
初めて書いた小説なので文法等おかしな点がありましたらどうか御報告お願い致します。

ちなみに筆者には実際に証明写真でプリクラをした友人がいますがプリクラより盛れるらしいです。真偽は不明ですが。
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