僕が美術部に入って生きる目標を見つけるまで   作:生煮えまぐろ煮

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部室掃除

「え、美術部?|私中学の時美術3だったんだけど」

「そう言うなって、一緒にやろうぜ美術部。ゴッホがすごいってことしか知らんけど」

 

 現国、数Ⅰ、英Ⅰの最強催眠コンボ後の昼休み。僕と藤院(とういん)さん、鈴也(れいや)で集まり、鈴也が所々にメッシュを入れたツリ目の美人を勧誘している。彼女がクラスメイトの雅楽川(うたかわ)さんだ。ちなみに催眠コンボ中僕は寝てた。鈴也も寝てた。雅楽川さんと藤院さんは起きてたが。

 

「まあ鈴也が言うなら入ってもいいけどさ、藤院さんは良いの?私ほんとに絵下手だよ」

「私だって最初は下手だったし、樂漸(らくぜん)君も教えてくれるから大丈夫だよ!」

 

 いや僕かよ。普通の人より描けるだけで人に教えられるほどじゃないと思うんだけど。

 

「樂漸ってなんか上手そうな人っぽい雰囲気出てるよね。特に根拠ないけど」

「それな、なんか太宰龍之介みたいな顔してるしな!」

 

 誰だよそれ。芥川龍之介と太宰治混ぜただろ、しかもどっちも作家だ。アホがバレるから黙ってた方が良いと思う。

 

「まあ別に入っても良いよ、この学校ダンス部とか無いし」

「え、雅楽川さんってダンスできるの?」

「まあ、一応かな?」

「こいつ超スゲーぞ、中学の時全国のなんか大会みたいなの出ててたから」

 

 ダンスが上手いのは聞いたことあったけどそんなに凄いとは思わなかった。空手の有段者でサッカーも上手く、頭も良い。オマケに身長まで高い。天は彼女に2物どころか5物ぐらい与えたらしい。

 

 

「そんじゃ桃花も入部してくれたし今日は部室片付けようぜ」

「そうだね、じゃあ私が散らばってる画材とか片付けるから樂漸君と毒島君は埃を払ってゴミと一緒に捨ててきてよ」

 

 あの後、午後の数Aとコミュ英を気合いで乗り切りった放課後、僕達は旧校舎の元美術室、現美術部部室に居た。雅楽川さんだけは用事があるらしく帰った。絵の具のチューブや刷毛、筆に彫刻刀(踏みそうになった、危ない)と様々なものが床に転がり、油絵だろうか独特の匂いがする。

 藤院さんはさっさと床の画材を纏めて隣の元美術準備室に行ってしまったので僕と鈴也はハタキで積もった埃を払い、その埃を箒と塵取りで集める事した。

 

「なあ湊和よ、お前なんで美術部入ったんだ?誘われたから入ったって嘘だろ。誘われて入るタイプじゃないよな、知り合って1週間と少ししか経ってないけど分かるよ、お前人と話すの嫌いだよな?」

 

 鈴也はいきなりそんなことを僕に言ってきた。

 

「え、いや、別に、元から興味があったというか……まあノリ的な?」

「濁すなよ、俺これでもお前より年上だぜ?バイクで事故ったせいだけど。あれめっちゃ痛かったわ」

 

 そう、鈴也は留年しているらしい。知り合って数日経ったあとに聞いたから今更話し方を変えるのもおかしいからタメ語で話してるけど。

 鈴也が急に真面目な顔をして僕の方を見る。僕も鈴也を見返す。こんなに真面目な表情なのを見るのは初めてだ、何を言う気なのか。

 

「お前、さては藤院さんに惚れただろ」

「──は?」

「分かるよ、藤院さん綺麗だもんな。小柄で、明るくて、お前みたいな若干人見知りなやつとか俺みたいなガラ悪いやつにも分け隔てなく話しかけてくれるもんな」

 

 真面目な話を期待した僕が馬鹿だった。何を言うかと思えば、呆れたものだ。

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 そう告げると鈴也はなんとも言えない顔をした。

 

「あー、そうか、俺の勘違いだったわすまん。けどお前そんな自分を卑下すんなよ、俺も桃花もお前めっちゃ良いやつだと思ってるぜ。いや桃花は知らんけど多分思ってるよマジで」

 

 そう言って鈴也は埃を集めたあと藤院さんからゴミを受け取って捨てに行った。謎に褒められたがまあ悪い気はしない。

 

 

 結局この日は部室の片付けで終わってしまった。

 翌日いつもの様に睡眠学習を行い迎えた放課後、今日は雅楽川さんも一緒に部室に来るみたいだ。何故か鈴也がニヤニヤしてて非常に不気味だ。皆も不気味らしく雅楽川さんが鈴也に文句を言う。

 

「なんで笑ってんの鈴也、キモイんだけど」

「そんなこと言うなって、まあ部室見てみろや」

「はぁ……?何言ってんの?」

 

 鈴也がドアを開ける。なんと中にはどこからか持ってきたソファとパソコンと冷蔵庫が置いてあった。学校をなんだと思ってんだよ。

 

「いいだろ、冷蔵庫は親父の会社から勝手に借りてきた。ソファは来客の送迎室?みたいなとこの横にある部屋から予備っぽいの取ってきた。パソコンはPC室の余ってるやつ借りた」

「え、それ許可は貰ったの毒島君……?ソファはともかくパソコンはどうかと思うけど」

 

 いやソファもダメだと思うよ藤院さん。というかわざわざ運んだのかよ。

 

「当たり前よ!体育教師の齋藤、あいつ俺と仲良いから借りていいか聞いたら部活の備品扱いにして貸してくれたのよ。運ぶのは2年の俺の友達に頼んで朝運んどいたぜ」

 

 齋藤って生徒指導もやってるあの齋藤先生の事か、怒ると死ぬほど怖いらしいな。というか朝やったのかよ、だから今日遅刻してないのか。

 

「うーん、本当はダメな気がするけどまあいいか。部室豪華にしてくれてありがとう毒島君」

「鈴也またパシッたの?恨まれてんも知んないよ」

「あ?良いんだよ喧嘩で負かしたらアイツらが自分からなんか俺の舎弟になるとか言い始めたんだから」

 

 バイク好きだからそのうち舎弟連れてチーム作ってそうだ。僕も今度バイクの免許取って鈴也と一緒に遠出してみようかな、美味しいラーメン屋とか知ってそうだから。けど絶対飛ばすよなせっかちだから。

 

「そんじゃ今日はもう遅いし一緒に藤院さんのバイト先で飯食いに行こうぜ!もちろん俺の奢りだから好きなだけ食えな!」

「え、そんな悪いよ。僕も一応お金あるからせめて割り勘にしよう」

「そうだよ、私もバイト代貯めてるからそんな奢りなんて─」

「気にすんなって。俺お前らより年上、素直に奢られろっての」

 

 そう言われると何も言えない。

 鈴也は気前が良い、誰かと何か食べに行くと絶対に奢ると言い張って譲らないぐらいには。けど人の金で食べる焼肉は好きらしいし、2つ入りの大福の氷菓を1つあげると非常に喜ぶ。社長の息子らしいし金銭感覚が違うのかもしれない。

 

 ちなみに奢りで食べる麻婆豆腐は美味しかった。

 




ここまでお読みいただきありがとうございます。
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