僕が美術部に入って生きる目標を見つけるまで   作:生煮えまぐろ煮

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今回初めて特殊タグなるものを使用してみました。どのような原理でこうなるのかは全然分からないけれど面白いですね。
ただアナログな人間の筆者には難しいものであります。


二章 ろくでなしの喜劇
先輩


 

 尤も小さな標の石は、その後何十年かの雨風に曝されて、とうの昔誰の墓とも知れないやうに、苔蒸してゐるにちがひございません。

 

『地獄変』芥川龍之介

 

 

 

 5月の中頃、ゴールデンウィークが終わってから少したった頃、僕達は美術部の部室に居た。藤院(とういん)さんはデッサン人形を睨みながら絵を描き、鈴也(れいや)雅楽川(うたかわ)さんはどこからか持ってきたブラウン管テレビにどこからか持ってきた某ゲーム機の初代を繋げて遊び(ここが学校なのを忘れてないか?)、僕はパソコンに自前の板タブを繋げて絵を描いていたところ、ふと鈴也が呟いた。

 

「そういえば湊和に俺の先輩が会いたいって言ってたぞ、6つ上でこの学校中退した人なんだけど」

 

 は?何でそんな人が僕に会いたいんだよ。絶対僕と関わりないだろうが。

 

「いやめっちゃ気が合う友達ができたって言ったらさ会ってみたいって。大丈夫だよめっちゃいい人だから。競馬ばっかやってるけど」

 

 最後の一言を聞いて大丈夫だと思う人はいるのか?少なくとも僕は思わない。

 そう言うと鈴也は真剣な眼差しで僕を見て言う。

 

「その人……ネモさんって言うんだけどさ、空手の有段者で今はヤクザの用心棒してるらしいぜ」

「ふざけんなよマジで」

 

 絶対やばいだろ!……いや、鈴也がそんなやばい人を紹介するわけないよな。友達を信じるんだ。

 

「ああ、ネモさんが湊和に会いたいんだ。その人めっちゃ空手上手いよ、全国大会まで行ってなかったかな」

 

 ──地獄だ。

 

 

 

「なあごめんって、ほんとに悪かったよ」

 

 鈴也が僕に謝る。結局僕は放課後、ネモさんなる人物に会うことになった。非常に気が重いが行かないのも鈴也の面子を潰すことになるので渋々行くことにした。

 待ち合わせの場所は駅の北口から50号を歩いていき30分ほどの風俗街だった。夕方ということもありサラリーマンに大学生、化粧の濃い女性などで賑わっている、間違っても高校生が行く場所ではないと思う。

 鈴也が古い雑居ビルの前で足を止めた、『ハロー&キャンディ』という名前だが、もしかしなくてもこの店は世間一般で言うところのソープという物じゃないのか?

 

「ここだ、制服抜いどけよ流石にヤバいから」

 

 制服を脱いで慌てて追いかけると中は薄暗く、待合所らしき場所には何人かが順番を待っていた。なんというか、独特な匂いがする。

 鈴也がこちらを怪しそうに見ている受付らしき男に話しかける。

 

「おい、浩二(こうじ)さんに呼ばれてきたんだけど場所どこ?」

「ね、根本さんのお知り合いですか!?只今ご案内します!」

 

 慌てて店の奥に連れていかれた。本当に憂鬱だ。

 勤務しているであろう女性と何回かすれ違い怪訝な目で見られながら奥の事務所みたいな場所に着いた。ここの中だろうか。

 

「この中でお待ちしております。それでは自分は……」

 

 急いで受付の方へ走っていった。絶対怖がられてるじゃん。

 

「ネモさん、俺、鈴也。例の友達連れてきたから」

「おう入ってええでー」

 

 扉を開けると中には黒い短髪の男がいた。ジーパンにスカジャンを羽織っている。サングラスで目元は隠れているが、何となく鋭い目をしている気がした。動物で表すと虎って感じだ。

 

「お前が湊和って奴?俺、根本浩二。よろしくな」

「あ、どうも。僕は樂漸湊和って言います」

 

 明るい声だ、関西系の人間なのだろうか、大阪とか兵庫とかそっちの方のアクセントを感じる。何となくコメディアンのような感じがした。もちろん実際はそんなことなど無いが。ただ、何だろうか、違和感を感じる。その違和感がなにかまでは分からないが。

 

「ふーん、おもしろそうな奴やな。確か『志在千里』の火神とも知り合いなんやろ?」

「え、そうですけど。どこで知ったんですか?」

「そらもう俺の人徳よ、この街で何かあったら全部俺のとこに来るから」

 

 この人そんな凄い人なのか、火神さんと出会ってからまだ1ヶ月ぐらいしか経ってないのに。火神さんのことも知ってるのか。あの人はなんとなく有名そうな気はするけど。

 

「まあ全部嘘だけど。ただ腹減って中華の気分やったから久しぶりに顔出そう思て店の前行ったら火神と羽奏(わかな)と知らん顔のやつが仲良さそうにしてたの見ただけ」

 

 嘘かよ、なんの意味があったんだよ今の嘘に。僕は頭を抱えたくなった。唖然とした僕を見て笑いをこらえてる鈴也が非常に腹立たしい、お前後で何か奢らせるからな。

 

「羽奏とも仲良いんやろ?アイツ中々友達が出来なくて心配しとったんや、仲良くしてやってな」

「え、藤院さんのことも知ってるんですか?」

「アイツ中学の頃は1人で絵ばっか描いてて友達いなかったから暇になったらとりあえず志在千里に来てたんや。元々あの店の常連やったし火神がお節介焼きやからな」

 

 火神さんも同じようなこと言ってたしそんなに友達が居なかったのか。今はよくクラスメイトと話してるし高校で変わったのかな。

 

「まあ、とりあえず電話番号とメルアド教えてや。俺ガラケーしかないからみんな使ってる便利なSNS?ってのは出来んねん」

 

 そう言って自分の番号とアドレスを書いた紙を僕に渡してきた。僕も自分のアドレスと番号を適当な紙に書いて渡す。今どきガラケーなんて珍しいな。

 

 その後は鈴也との出会いのきっかけ、ネモさんと鈴也の関係の話とかをした。鈴也とは趣味のバイクで知り合ったようで今度僕も後ろに乗せてやると言われた。(怖いからあんまり乗りたくないが)

 あとヤクザの用心棒やってるのは部分的に本当だった。正確にはネモさん本人がこの店とか何個かの風俗店やラブホテルの、俗に言うケツ持ちというものらしい。面白そうな人だと思ったけどやっぱり怖い人だった。

 ただそこまで悪い人では無い気がした。藤院さんのことを心配してたからそう思うだけかもしれないけど。

 

 帰り際に一つだけ僕は気になることを聞いてみた。

 

「そういえばネモさん。ひとつ聞きたいことがあるんですけどいいですか?」

「おお?ええでなんでも聞いてや羽奏の好きな物か?アイツはラムレーズンのアイスが好きや、前に火神が作ったのをめっちゃ美味そうに食ってたわ」

「いえ、あの、なんで()西()()使()()()()()()()()()多分、出身普通に北の方ですよね、大津港とかの方の」

「……なんで分かったん?めっちゃ漫才見て勉強したんやけど」

「いや、その、アクセントが。僕、6年ぐらい前は大津港の方に住んでたんですけど。あの、なんというか、茨城なのに福島のアクセントも混ざってるみたいな?関西の人が茨城に来て方言が混ざったと言うより茨城の人が関西弁話してるけどふと出てしまうみたいな?」

「あー、やっぱり?難しくてな関西弁。俺明石家さんま好きで憧れてんや」

 

 ネモさんは笑いながらそう言った。

 

 




ここまでお読みいただきありがとうございます。
初めて書いた小説なので文法等おかしな点がありましたらどうか御報告お願い致します。

今回投稿が遅れた理由と致しましては、筆者の硬い頭では自分の納得いく表現がなかなか出来なかったことであります。
実は元々ミステリーが書きたかったのですが自分の文才では訳の分からない三文芝居にしかならなかったので諦めたのですが、ジャンルは違えど同じ書き物、文才無き身ではやはり難しいもので中々筆が進まず…哀しきものです。
本当は1章のプロットと私のどうでも良い小話を投稿しようと思ったのですが、1章はプロローグのようなもののつもりで書いたのでどうにも書くことが少なく、2章と共に出そうと思いました。

この様などうでもいい筆者の話まで見てくれた方がおりましたら本当にありがとうございます。1人でも、ほんの欠片でもこの話を面白いと思ってくれる方がおります事を祈りつつ、次話の執筆に取り掛かりたいと思います。了
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