新世紀エヴァンゲリオン〜もしセカンドチルドレンがマリだったら〜   作:神光の宣告者

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静止した闇の中で【中編】

まるで無人のように静かなネルフ施設を3人は調べて回る。

しかしどこを探しても、何が起こっているのかの手掛かりを見つけることはできなかった。

 

 

「この扉も開かない。まるで予算の少ないゲームに入り込んだ気分だにゃ。」

 

「どの施設も動かない。おかしいわ。」

 

「やっぱり下で何かあったのかな?」

 

「そう考えるのが自然ね。」

 

「じゃあ、ネルフ本部に連絡してみようよ。」

 

 

シンジは昔のようにどこか素っ気ないレイに、多少の違和感を覚える。

しかし目下の問題は一切機能していない、ネルフ施設の方であった。

シンジはミサトたちと連絡を取るために通信手段を探す。

シンジが何度も見た廊下を見渡すと、有線の施設内電話が視界に入ってきた。

さっそくレイが電話を手に取り本部へ掛ける。

一方のマリは手元の携帯から本部に電話をかけていた。

 

 

「つながった、マリ?」

 

「ダメみたい。無線は一切通じていない。」

 

「綾波の方はどう?」

 

「......」

 

「綾波?」

 

 

またしてもレイが黙り込んでしまう。

レイは再びシンジとマリにしかわからない怒り顔になっていた。

女心の微妙な変化など全く分からないシンジはただ首を傾げることしかできない。

しかし、同じ女子であるマリはレイの微かな訴えについに気付くことができたのだった。

 

 

「ははーん、なるほどねぇ~。そういうことか。ねぇねぇ、綾波ちゃんこっち来て。」

 

 

無表情にさらに怒りの色が濃くなったレイとマリはシンジから離れた2人だけの乙女会議を始める。

1人取り残されてしまったシンジは、仕方なくミサトたちに合流する方法を考えるしかできない。

シンジは突然、ネルフに入りたての時のミサトとの会話を思い出した。

 

 

「そういえば、緊急時のマニュアルもらってたんだった!」

 

 

シンジは慌ててカバンから緊急時のマニュアル書を取り出した。

ここネルフはほとんどの設備が電力で動いている。

しかしその中でもこういった緊急時のために手動で動かせる扉が用意されていたのだった。

手元の地図で、作戦指令室までの道なりを確認して、ルートに線を引いた。

 

 

「綾波、マリ、こっちの第7ルートから下に行けるみたいだよ。」

 

 

シンジの呼びかけで、マリとレイの乙女会議はいったん終了となった。

レイはシンジの方を振り返る。

レイの顔は依然として無表情の中に怒りが存在していたが、さらにその他に何かを決意したような感情も見て取れた。

 

 

「私が案内するわ...碇くん。」

 

「え?あ、うん。助かるよ、ありがとう。」

 

「おー!今日は綾波ちゃんがリーダーだね。」

 

 

レイはシンジから地図を受け取ると、スタスタと歩き始めっていった。

あとからやってきたマリにシンジが耳打ちする。

 

 

「何を話してたの?」

 

「うーん、乙女のお悩み相談会ってところかな。」

 

「それで綾波に何吹き込んだんだよ?」

 

「乙女の秘密を覗くのは重罪なんだぞ!」

 

 

マリは芝居がかった仕草で、人差し指を口元に持っていった。

その中学生とは思えない妖艶な雰囲気に負けて、シンジはこれ以上追及できなくなってしまう。

完全にマリの掌の上で転がされているシンジなのであった。

 

 

*

 

 

ーーー府中総括総隊司令部にて

 

 

『使徒は依然健在進行中』

 

 

何の抵抗も受けずに悠々と第三新東京市へ向けて進行するマトリエルをモニター越しに見ながら、総司令は腹立たし気に机を叩いた。

 

 

「統幕会議め、こんな時だけ現場を頼りおって。」

 

「政府はなんと言ってる?」

 

「フン。第二東京の連中か?逃げ支度だそうだ。」

 

「とにかく、ネルフの連中と連絡を取るのだ。」

 

 

副司令はかれこれ1時間に及んでネルフとの交信を試みていた。

しかし、その通信がネルフに届くことは決して無いのであった。

 

 

「無線通信では到底繋がりそうにありません。」

 

「直接行くしかないだろ。」

 

 

総司令の言葉を聞いて、現場の職員は逃げるように自身の仕事に邁進する。

今から使徒が襲来する死地にわざわざ行きたいなどという命知らずな者はいない。

総司令は、手元の名簿から適当に死地へ向かう人柱を選定した。

 

 

「全く、ネルフの連中はいったい何をしているのだ。」

 

 

 

 

ネルフの地下、シンジたちは配管のむき出しになった通路を黙々と歩き続けていた。

 

 

「いつもなら2分でいけるのに...」

 

「今回のリーダーは、先輩なんだから大船に乗ったつもりでいこーよ!」

 

「確かに、僕やマリよりは綾波の方が信頼できるけど。」

 

「...碇くん」

 

「な、なに?」

 

 

淡々と先頭を歩いていたレイが突然立ち止まり、シンジを見つめる。

その無表情は、やはり怒りを含んでいた。

シンジは、レイの責めるような視線に耐えられなくなり目を逸らす。

そんな2人のやり取りを見て、マリはやれやれと肩をすくめた。

 

 

「さすがに、ここまで鈍感だと困るにゃー。」

 

「何のこと?マリは分かってるなら教えてよ。綾波が怒ってる理由を。」

 

「言ってるそばからこれだものにゃー。こりゃ骨が折れるよ。」

 

「だから何のことなんだよ!教えてよ!」

 

「黙って。」

 

 

シンジの言葉をレイが遮った。

ついにレイの怒りが爆発してしまったのか。

マリとシンジは静かにレイの次の言葉を待つ。

 

 

「声よ。」

 

「...接近中。繰り返す...ちゅう。使徒....繰り返す...使徒接近中!繰り返す、使徒接近中!使徒接近中!」

 

「日向さんの声だ!」

 

「まずいよ、使徒接近中って言ってるよ!?」

 

 

焦るシンジと呑気なマリ。

しかし今この2人をまとめるリーダーはレイだった。

レイは静かに次の目標を定める。

 

 

「時間が無いわ。近道しましょ。」

 

 

「なんだか、忍者になった気分だにゃ。」

 

 

中学生が這ってしか進めないような、小さな通気口のなかをシンジたちは進んでいた。

先頭はリーダーのレイ、そしてその次にマリが続き、最後尾にはシンジがいる。

空調も止まっている灼熱の通気口の中を3人は進んでいた。

 

 

「それで、シンジくんはどうして綾波ちゃんが怒ってるのかわかったのかにゃ?」

 

「分からないよ。いつの間にか僕の知らないうちに、綾波を傷つけてしまってたのかな?」

 

「うん。今もガンガン傷つけてるよん。」

 

「え!?僕何かマズいこと言っちゃってたの!?」

 

 

通気口をぬけた3人は、分かれ道に差し掛かる。

右か左、正解は2つに1つだ。

 

「どっちなのかな、わかる綾波?」

 

「...碇くん...いやシンジくん。」

 

「え?」

 

 

シンジはレイから始めて名字ではなく名前を呼ばれた。

そのあまりの違和感に、シンジの足が止まる。

レイは続けてさらにシンジの予想だにしない言葉を紡いでいく。

 

 

「レイ。私はレイよ。」

 

「ど、どういうこと?」

 

 

レイらしい言葉足らずの訴えに、鈍感なシンジは当然頭を捻る。

どこまでも察しの悪いシンジに、ついにマリの怒りが爆発してしまった。

 

 

「にゃー!!!さすがに鈍感すぎるっしょ!!!わんこくん、私のことを呼んでみて!!」

 

「え?……マリ。」

 

「じゃあ先輩のことは?」

 

「あ、綾波。」

 

「はい、アウト!」

 

「だからどういうことなんだよ!?」

 

「私のことは名前で呼んでるのに、先輩のことは名字で呼んでる。先輩はそのことに怒ってるんだよ!」

 

「そ、そうだったの?」

 

 

 

シンジは綾波に問う。

レイは無表情の中に気恥ずかしさを含んだ顔で、コクリと小さく頷いた。

シンジはレイの怒りの理由が分かり安堵のため息をつく。

それと同時に今までどこか人間離れした印象を受けていたレイの人間らしい部分を垣間見た気がして、レイに未だかつてない親近感を覚えた。

 

 

「私だけ名字で呼ばれてる。1人はダメ。3人1緒じゃなければダメ。」

 

「てなわけで、わんこくんがすべきことは分かるよね?」

 

「う、うん。分かったよ。改めてよろしく...レ、レイ。」

 

 

マリと同じように名前で呼ぶ。

ただそれだけのことなのだがシンジも何故か緊張してしまう。

レイは無表情だが、満足そうに大きく頷いた。

 

 

「ありがとう。シンジくん、……マリさん。」

 

「どういたしまして。ほんっとに世話の焼ける二人だにゃ。」

 

 

気恥ずかしそうに笑うシンジと、満足そうなレイを見つめながらマリは小さく呟いた。

 

 

「行先はこっちよ、着いてきて。」

 

 

その場にいれば誰もがその初々しさに悶絶していたであろう、レイとシンジのやり取りが終わり3人は再び司令部を目指す。

無表情の中に、小さな笑顔を含んだ幸せそうなレイを先頭に、その後をシンジとマリが追った。

 

マリは小走りでシンジの背後に追いつくといつものように抱き着いた。

シンジはいつものようにもはや慣れた手つきでマリを引きはがそうとする。

しかし、今回のマリはビクともしなかった。

シンジに抱き着く力が明らかに普段より強かったのだ。

シンジにがっちりと取り付いたマリは、シンジにだけ聞こえるように耳元で囁いた。

 

 

「あんまり先輩とばっかりイチャイチャしてたら私も拗ねちゃうよん。」

 

 

マリの甘い囁きに、シンジは何も言い返すことができなかった。

 




7月にマリの水着フィギュアが発売されることになりましたね!

その商品画像を見て驚いたのですが、何とマリの水着が白ビキニでした。

実は『マリ、来日』にて私が描いたマリの水着姿もたまたま白ビキニでして、
まさかのフィギュアと一致するというプチミラクルが起こりました。

気になる方は是非、検索してみて下さい。
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