新世紀エヴァンゲリオン〜もしセカンドチルドレンがマリだったら〜 作:神光の宣告者
「すまんなシンジ、雨宿りさせてもろて。」
学校終わり。
寄り道の計画を立てていたシンジ、トウジ、ケンスケの3人は突然の豪雨に襲われて、ミサトの家へと逃げ込んだ。
トウジとケンスケがミサトの家に来ることは、もはや特別なことでは無くなってきていた。
それだけ、シンジが彼らと打ち解けてきているということだろう。
「あれ、ミサトさんは?」
自称ミサトファンのケンスケは、この家の家主の姿をすかさず探す。
ケンスケがよくシンジの家を訪れるのは、ミサトを拝むためでもあるのだ。
「まだ、寝てるのかな?最近徹夜の仕事が多いらしいんだ。」
「大変な仕事やからなぁ。」
「ミサトさんを起こさないように静かにしてようぜ。」
3人は目を見合わせると、うなずき合って静かに頭を拭き始める。
これぞ中学生男子の不器用な優しさ。
静かになった家に、中学生女子のかしましい声がこだまする。
「わんこくーん、私のパンツ知らない。傘持ってなくてさービショビショになっちゃった。」
「やかましいで!ミサトさんが寝てんねんから静かに...どひゃぁ!?」
自室からリビングに出てきたマリは、上は辛うじて下着をつけていたが下には一斉の布を身に着けておらず、中学生男子には非常に目に毒な格好をしていた。
その余りにも乱れた姿に、トウジとケンスケは狼狽する。
ケンスケにいたっては鼻血を流して倒れた。
しかし、普段からマリと一つ屋根の下で過ごし徐々にマリへの耐性ができ始めているシンジは、あきれたようにため息をつくとマリとともにパンツを探しに行った。
「いつも言ってるじゃないか、下着はタンスの一番下に...えっ!?この前掃除したばっかなのにもうこんなに散らかってるの!?」
「にゃは~。ちょっと本を買いすぎちゃって...またお掃除お願いします。」
「ちょっとは自分でやる努力をしなよ!」
「ぶーぶー。ケチ!」
マリの部屋から聞こえてくる生活感たっぷりの会話を聞いてトウジは、独り言のように呟いた。
「カップルというより、おかんと娘やな。」
「普段はマリの方が母親みたいなんだけど、こと家事においては逆転するのよね。」
誰にも聞かれていないはずの独り言に、ミサトが返事をする。
いつの間にかリビングにやってきていたミサトはいつもの制服に身を包んだ凛々しい姿をしている。
トウジは凛々しい姿のミサトを目の当たりにして、改めてシンジから聞く普段の様子が信じられなくなる。
「お、お邪魔してます。」
「二人とも、いらっしゃい。」
トウジとケンスケに挨拶をすると、ミサトはマリの部屋に行きシンジとマリに2人に今日の予定を説明していく。
「おぉー?..わぁ!?」
いつの間にか起き上がっていたケンスケが、大声をあげる。
「どうしたんや、いきなり。」
「この度は、ご昇進おめでとうございます!」
トウジの質問を無視して、ケンスケは深々と頭を下げた。
「あぁ...ありがとう。」
連絡を終えたミサトは、苦笑いしながら家を出ていった。
そんな様子を不思議そうに見ていたシンジは呑気そうに、ケンスケに問う。
「どうしたの?ミサトさんに何かあったの?」
「ミサトさんの襟章だよ。線が2本になってる。一尉から三佐に昇進したんだ。」
「そうなの?知らなかったにゃ。」
「いつの間に...」
*
ハーモニクステスト。
現在、エヴァパイロットの3人が受けているテストのことである。
エヴァとの神経接続、つまりシンクロ率を高めるためのテストである。
「2番、汚染区域に隣接限界です。」
「マリはもう限界なの?おかしいわね。ハーモニクスが下がってるわ。」
実験結果を見たリツコは眉をひそめる。
「たまたま調子の悪い日なのかもしれませんよ。」
「それならいいのだけど...ここ数回の平均値も減少傾向なのよね。気になるわ...」
「0番、1番はともにまだ余裕がありますけどどうしますか?」
「そうね。じゃあプラグ深度を後0.3下げてみて。」
リツコの指示でレイとシンジのエントリープラグがさらに沈降する。
「汚染区域ギリギリです。」
「それでこの数値。2人ともたいしたものだわ。」
「ハーモニクス、シンクロ率もマリに迫ってますね。」
「まさにエヴァに乗るために生まれてきたような子たちですね。」
「本人が望んでいなくてもね。きっとあの子は嬉しくないわよ。」
吐き捨てるように呟いた、ミサトの表情は恐ろしく冷たいものだった。
実験が終わり、いつものようにリツコから3人に本日の講評が伝えられる。
「シンジ君、よくやったわ。ハーモニクスが前回から8も増えてるわ。」
「は、はい。」
ミサトの言葉通り、シンジの喜びはそこまで大きいものでは無かった。
続いて、リツコはレイに視線を移す。
「レイもよくやってるわね。ここ数回は毎回自己ベストを更新してるわ。」
「...ありがとう。」
レイは小さく笑った。
リツコの側にいたマヤは、大きく目を見開く。
ついにレイが自分たちに笑いかけたのだ。
マヤという一人の人間にとってレイは怖い存在だった。
ただ指示されたことを淡々とこなす、人形。
そこに個人の意思や感情など全くないようなその姿がマヤにとってはどこか恐ろしく感じたのだ。
また科学者としてのマヤにとっても、レイは悩みの種であった。
レイはこの実験が開始してから常に低い水準で安定していた。
こちらがいくら手を尽くしてもレイのハーモニクス値は改善しない。
まるで、自身の科学者としての限界をまざまざと見せつけられているようでマヤはレイが怖かった。
しかしここ数回、マヤたちがいくら知恵を絞っても改善しなかったハーモニクス値が改善し始めたのだ。
それとともにマヤはある変化に気が付いていた。
浅間山での件から始まり、レイは徐々に笑うようになっているのだ。
最初はエヴァパイロットといる時、そして今回初めて我々にも笑いかけてくれた。
まるでそう、人形だった少女に人間性が宿り始めているかのように。
人間性を取り戻していくのに比例して、ハーモニクス値が上昇している。
こうして二つの事象を相関づけるのは、科学者の悪い癖だろうか。
しかし、マヤにはこの2つの事象が無関係には思えなかった。
「そしてマリ。あなたは最近ハーモニクス値が減少傾向にあるわ。どうかしたの?何か悩みでもある?」
マヤが思考の海に沈んでいる間に、リツコの講評は進んでいた。
「うーん、どうしてだろ。ちょっと、わんこ君成分が足りてなかったのかな。補充だにゃー。」
「だから、恥ずかしいってやめてよ!」
「良いではないか。良いではないか。」
「はーなーせー」
いつものようにシンジに抱き着くマリの姿を見て、他の職員は微笑ましそうに笑う。
しかしその中心でリツコだけは険しい表情でマリを見ていた。
自分は、エヴァを始めて見たときに『静止した闇の中で』まではちゃんと、少年向けロボアニメをしてるなぁと感じました。
そして、この『奇跡の価値は』から徐々に陰りが見え始めて...
てなわけで、本作も原作リスぺクトで徐々にシリアス要素が増えていきます。