新世紀エヴァンゲリオン〜もしセカンドチルドレンがマリだったら〜 作:神光の宣告者
「はぁ〜。売れないなぁ。」
ケンスケは体育館裏で大量に売れ残っているスナップ写真の山を見て肩を落としていた。
「ねんでや?先週は『あの綾波さんを超える売上だー』って喜んどったやないか。」
「転校してきて一週間はものすごい売れ行きだったんだよ。だってトウジもわかるだろ、出るところはしっかり出て、出ないところはしっかり引き締まってる。あんな中学生……いや、大人でもあそこまで完璧なスタイルの人はなかなかいない。おまけに他の女子と違って、男子とも分け隔てなく明るく接してくれる。あんな女神のような人はなかなかいない!」
ケンスケが拳を作って力説する。
「せやな。だからこそ売れて当然やないんか?」
「……ほら売れない要因が来たよ。」
ケンスケがそう言うと遠くのほうから聞き慣れたシンジの男にしては高い声が聞こえてくる。
「だから学校でそれはやめてって言ってるじゃないか!!」
「良いではないか、良いではないか〜。」
「あ…ちょっと、やめ……。」
ケンスケとトウジが声のする方へ目を向けると、1組のカップルがイチャついていた。正確にはイチャついているように見えていた。事情を知らない者が見れば女が男の背後から抱きつき首筋にキスをしようとするが、男の方が嫌がって離れようとしているように見えるだろう。
しかし実際にはマリがシンジの匂いを嗅ごうとしてシンジが逃げようとしているのだが。
「ホンマ、毎日毎日飽きずにお熱いこったな。」
トウジが呆れたように言ってシンジの元へ向かう。
「にゃ!カメラくんと帽子くんじゃないか。おはよう。」
「もう夕方やけどな。あとその呼び方ホンマに定着させる気なんか!?」
マリはトウジとケンスケと挨拶をして軽く世間話をする。
この隙にシンジは抜け出そうともがくがマリにガッチリと拘束されて逃げるどころかもがくことすらできていなかった。
マリの力の強さと自分の非力さに悲しくなるシンジであった。
「もう完全に全校生徒公認のカップルだからなぁ。このせいで、今週の売れ行きはガタ落ち、フィルム代どうしてくれるんだよ〜。」
トウジとケンスケが来てもおかまいなしにイチャついているマリを見てケンスケは嫉妬の視線を向けていた。
シンジは必死に二人に視線だけのSOSを送る。
「恋人のイチャイチャを邪魔するほどわしらも意地汚くないわ!」
トウジが意地悪な笑みを浮かべてわざとらしく目をそらしてシンジのSOSを却下する。
「違うよ!?僕と真希波さんは同じエヴァのパイロット同士なだけだし、別に恋人なんかじゃないから!!」
「「この状況を見させられて言われてもな〜。」」
二人はマリとシンジが恋人同士でない事をもちろん知っている。
しかし男子中学生としての性か、完璧な美女とイチャイチャしている様子を目の前で見せられると羨やましさを感じざるを得ないのである。
「弐号機の人……。」
シンジたちが話しているととても小さなか細い声が聞こえてきた。
比較的長い時間を共有してその声の大きさに慣れているシンジは一番に反応して綾波の姿を探した。
それに吊られるようにトウジとケンスケも綾波の姿を探し始める。
しかしこの場で綾波の姿を誰よりも早く見つけたのは、トウジやケンスケではもちろんなく、シンジでもなくマリだった。
マリは綾波の声を聞くとさっとシンジから離れてシンジの背後にいる綾波に向き直った。
たった今到着したのか、それとも随分前からそこにいたのかそれは綾波以外誰もわからない。
「綾波さんやないか。どないしたん?シンジを取られて妬いとるんか?」
「トウジ、何言い出すんだよ!?」
ようやく解放されたシンジは顔を赤くしてトウジの口を塞ごうとする。
「これ。」
綾波はそんなやり取りには一切目を向けずにスカートのポケットから一枚の名刺くらいのサイズのカード取り出した。
それはネルフのIDカードであった。
マリは妖しい笑顔を浮かべながら綾波に近づくと、すかさず綾波に抱きついた。
「ちょわ、お前ら真っ昼間から何を……!?」
「シャッターチャンスだ。」
激しいシャッター音が鳴り響くなか、マリは綾波の首元に顔を押しつけて離さない。
綾波はまるで、マリが見えていないかのように微動だにしない。
「顔はそっくりなのに匂いは違うんだね……。」
「……渡したから、さようなら。」
綾波はそう言うと踵を返してスタスタと歩いて行ってしまった。
去っていく綾波の後ろ姿を微妙な表情をしたマリが静かに見送る。
さっきまであんなに騒がしかったマリが突然に静かになり、シンジたちは顔を見合わせた。
しかし、そんな静寂も一瞬の事ですぐにいつも通りのマリに戻る。
「やっぱり匂いはワンコくんが一番だにゃ〜。」
マリはそう言い終わる前に、シンジに飛び付いていった。
「だから、恥ずかしいからやめてって言ってるじゃないかぁ。」
「よいではないか、良いではないか〜。」
「トウジ〜」
いつも通りに戻ったマリを見てトウジとケンスケは再びため息をつく。
「さっきのはなんやったんや?やっぱり女の考えることは分からんなぁ。」
「これは売れるぞぉぉぉぉ!!」
翌日、ケンスケは綾波とマリの抱き合う写真を販売し、学校中の男子の性癖を歪めさせることになったのはまた別の話である。
✳︎
警戒中の巡洋艦榛名より入電
『我紀伊半島沖ニテ巨大な潜行物体ヲ発見データヲ送ル』
受信データを照合
……波長パターン青、使徒と確認
総員第一種戦闘配置
「二人とも今回の作戦を説明するわ。」
ネルフ作戦本部で慌ただしくオペレーターたちが働いている裏でミサトはシンジとマリに第7使徒『イスラフェル』殲滅作戦の概要を説明している。
「先の戦闘によって第三新東京市の迎撃システムは大きなダメージを受け現在までの復旧率は26%、実戦における稼働率は0と言っていいわ。
従って今回は上陸直前の目標を水際で一気に叩く。初号機並びに弐号機は交互に目標に対し波状攻撃、近接戦闘で行くわよ。」
「「了解」」
「よーやくまたエヴァに乗れる〜。さぁ出発しよ!しーあわっせは歩いてこない〜。」
「なんでそんなに呑気なんだよ……。」
「そうね。これは実戦なのよ、一歩間違えれば最悪死んでしまうわ。気を引き締めなさい。」
「ほら言ったじゃないか。」
「しょぼーん。」
「……って言ってもシンジくんもう少し肩の力抜いてねー。」
「えっ!?あ……はい。」
「わんこくん返事から固い固い!」
「だから真希波は緊張感が無さすぎるんだよ!」
ミサトはネルフ本部の殺伐とした雰囲気には似合わない二人のやり取りを聞きながら頭を抱える。
(この子たちはどっちも極端なのよね。二人の中間ぐらいが一番いいんだけど……)
「来た!」
大きな水しぶきをあげながらシンジとマリの目の前に巨大な生命体が姿を現した。
「よっしゃー。私先行きまーす。援護よろしくっ!」
マリが使徒を目視するとなんの躊躇もなく使徒へ向かって飛びかかる。
「あ!?待って。まずは様子を見た方が……。」
シンジは止めようとするがマリが止まるはずもなく、仕方なくライフルで援護する。
使徒はATフィールドでライフルの弾を防いでいる。
「動きが鈍い。いける!」
マリはさらにスピードを上げて使徒との距離を詰めて行く。
使徒は避ける気配を一切見せない。
「死ねぇぇぇぇぇぇ。」
マリは使徒の頭上に飛び上がるとバスターソードを一気に振り下ろした。
使徒の頭から股間が真っ二つに切り裂かれて、使徒の動きが止まった。
「あれ、もう終わりかにゃ?」
突如真っ二つに切り裂かれた使徒の体が、ピクピクと脈打った。
……ズルゥッ
「増えた!?」
使徒は二体に分離した。
僕はこの『瞬間、心、重ねて』が一番好きな話です。
この辺りの話は、ギャグっぽさもあり、ちゃんと子供向けアニメの体裁を保っていますよね。
まぁ、後半の狂ったセカイも好きなんですけどね。