きゅっきゅふきふき☆きらぴかりん♪ ハイスクールD×D異聞~外宇宙文明を添えて   作:グレン×グレン

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と、言うわけで第一話になります




 しかし本当にD×Dの二次創作は、エクスカリバー編からが一番書きやすいと思いますわ。


第一章 四色会合の章
第一章其の一 とある少年の回想と、天使長からの緊急命令


 ダブルスタンダートという言葉がこの世には存在する。

 

 わかりやすくその流れを言うと、戦争を仕掛けて降伏することになった国とかの言い分に近いものがあるだろう。

 

 彼らは始める時は死人が出ることが想定できるうえで「世の中には、命より大事なものがある」といって戦争を始める。そして敗北がほぼ確実になったときは、「これ以上命を失ってまでなすべき戦争などない」といった感じで降伏して停戦をするのだ。

 

 まあこの場合、言っている輩は別にいて発言力が変わることでなるわけだからちょっと違うが、こういったことは数多く存在する。

 

 こういうダブルスタンダートを人は嫌って批判することも多いが、然し考えてみても欲しい。

 

 人間は七十億ほど存在しており、大半の国家は思想の自由を基本的には認めている。しかし人間というものがいろいろ小さいところが違い、そしてそれが七十億ともなれば、水と油を通り越したレベルで違う物だっている。

 

 たいていの場合、人間は「嘘をついてはいけない」「正直に生きなさい」というが、然しここで大きな問題が生まれるわけだ。

 

「Aのようなことをするやつは嫌い」というBをする男と、「Bのようなことをするやつは嫌い」というAをする女。もしこの二人が出会ったら、間違いなく面倒なことになるだろう。

 

 そのため、どうしても多少の嘘や偽りをつかないといけない。そうでなければ二人は相いれないがゆえに大きな対立を起こし、折り合いをつけるための皮も被れないと、それが周囲すら巻き込んで大きな被害を生みかねない。

 

 まあ極論ではあるが、まあ考えてみてほしい

 

 人間っていうのは常にベストコンディションを維持できるわけじゃない。ストレスが溜まってるときもあるし、どうしてもやる気になれないこともある。

 

 そんな時にまでベストコンディションの状態で守っていることを、完璧にどうにかできるだろうか?

 

 答えは無理だ。日本人はこう言う観点が欠如しているという人もいるが、実際のところ、そんな真似ができるのは極僅かだ。

 

 そんな彼らがすごい奴だとほめられ、それに倣おうとするのはいい。だが一握りのぶっ飛んだ連中を基準値にしてはダメだろう。

 

 だからここで「この人のようになりなさい」と目標に設定しつつも、「無理はダメよ」とできないことに対する予防線が張られる。これだって微妙だがダブルスタンダートだろう。

 

 要は折り合いと使い分けだ。あまり頻繁に変えていたら薄っぺらい輩だが、どんな時でも一つの判断基準だけで生きていれば、その分厚さは厚顔無恥ともいえる迷惑な行為になる。

 

 人間関係はある程度の妥協が必要であり、何かしらの仮面をかぶっておかないと社会が破綻しかねない危険性がある。

 

 例えていうのなら、地図の縮尺の違いがいいたとえだろう。地図には大抵物差しとかを使ってわかりやすくなるように、数センチ程度の長さで地図上の一ミリや一センチが実際どれぐらいかを示す奴があるだろう。

 

 あれは縮尺の違いで百メートル単位とかキロ単機に代わる。もし世界地図で距離感さんの物差しが百メートルだとわかりようがない。逆に都市位置ブロックの地図で縮尺がキロ単位だと、でかすぎて役に立たない。

 

 より分かりやすいことを言おう。

 

 世の中には価値を判断するための基準がいろいろと存在する。

 

 例えば車の場合、F1カーとかなら時速何百キロ出せるかが重要だが、トラックの場合は何トンの荷物を運べるかが重要だろう。しかし乗用車の場合なら、時速何百キロ出せるとか十トンの荷物を運べるとかではなく、家族数人程度の人が、どれだけ快適に動けるかとかだ。そこそこの性能十分だが会社として活動するなら、性能以上にいくらで買えるかが大事になる。

 

 このように、その時々において重要になったり目安とするべきことは大きく違う。メートルしか図れない観測機の結果だけで、馬力や容量が重要になる者の価値を測れるわけがない。

 

 要はあれだ。物差しの種類は使い分けるべきって話だ。時として男女の権利は同様であるべきだが、時としては男女で優先順位をつける必要がある。染色体が違う以上、性別間での違いは大きいからな。

 

 例えば、英雄というやつについて考えればいいだろう。

 

 現在において、英雄を目指すものはその時点で英雄失格であるなんて言葉がある。

 

 この言葉の事情についていろいろあるが、これが当たり前のように使われるのには理由があるだろう。

 

 それは、現代において戦争とはするのが悪に近いもので、平和であることが尊ばれるからだろう。

 

 英雄と戦いで名をはせる存在だ。だからこそ、戦争を自発的に起こすのは基本悪いという世界なら、戦争を望むといってもいい英雄を目指す行為は悪になる。

 

 ……では、仮に人類皆殺しをすることしか考えない魔獣たちが存在したとしよう。そして何百年も戦いを続けている世界があるとしよう。

 

 そんな時代情勢で、「英雄を目指すのは悪だ」なんて考えが主流になるだろうか?

 

 たぶんだが、そんなことにはならないだろう

 

 むしろ人類の守護者の象徴として、自分もこうあるべきだとか、彼らを支えられるようになれとか、そうなるだろう。

 

 大抵の物事において「最強の人物」はいても「最強の種類」はそうない。もしあらゆる格闘技の達人が戦う大会があったとして、優勝者が最強と称されることは納得でも、優勝者の格闘技が最強というのはナンセンスだろう。

 

 だからこそ、物差しは使い分けなければならない。

 

 たった一つの物差しですべてを図れると思うことが間違いだ。世の中は状況や必要な要素に応じて最適なものが存在するだけであり、あらゆる状況下においてたった一つの者で至高だの究極なんてことにはならない。むしろ、なっていいはずがない。

 

 まあ、我ながら達観しているというか、つまらないとか面倒くさいとか言われそうな価値観だ。

 

 まだ十七歳にもかかわらず、我ながら達観しているというか冷めているという感じだ。

 

 これには理由がある。

 

 俺の母親は外科医である。それも「まだ若手なのに名医」とか言われるレベルだった。

 

 だが母さんにも若いときはあるし未熟な時もある。具体的には「なぜかノリで行きずりの男と一夜を過ごし、妊娠してしまった」とかだ。

 

 しかし母は医者としての観点で産むことを決意。結果として親戚全体が「男女問わず貞淑なのがいいこと」な連中九割で構成されていたため、縁切りに近い状態だった。母は残り一割の親戚の力を借りつつ、俺をしっかり育てていた。

 

 それどころか、お袋はどうも神器を持っていたらしく、馬の調子を見抜くことに優れていた。結果としてなぜか競馬で馬の調子を見抜くことができる特技を持ち、獣医がその言葉をもとに馬の病気に気づいたとかいう伝説がある。ちなみに馬にしか効果のない神器があるらしく、どうもそんな感じなので外科医としての優秀さは自前の才能と努力だ。

 

 そんなわけで、倍率をあくまで「これまでの戦績」とみなしたうえで判断することで、母は競馬での勝率が単独に徹すれば八割強。決して生活費を切り詰めてまでやるとかいう馬鹿をしないため、適度に家族の時間を遺しつつも、莫大な金を会得している。

 

 だがお袋は「金は資材であって幸せじゃない」という持論の持ち主であり、きちんと何かあったときの俺のことを考慮して貯金もしっかり結構ためてたが、割とかなりの額をNGO団体に寄付している。それも現場に行って食糧支援をするとか言ったものより、農業事業の育成を主体とする「諸問題の源泉を解決する」方面に割り振っていた。

 

 だからと言って「今泣いているやつは無視していい」なんて手合いでもなく、おふくろの一年は仕事・NGO活動・俺との時間を適度に割り振っている。

 

 そんなお袋の影響もあってか、俺もお袋が見ている世界が見たいと思い、NGO活動に参加したいといった。

 

 勿論政情不安定な所が主体なので躊躇されたけど、世界にある悲劇や悪意を知ることは悪くないと思ったのか、とりあえず一週間程度の医療支援に付き添うことになった。

 

 子供も多くお袋が評価されてることから、「子供たちの交流はいい影響になる」と思われたわけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして向かって三日で、一気に情勢が悪化した。

 

 

 

 

 

 

 

 政府の対応に耐えられなくなった軍部がクーデターを敢行。同時に政府と敵対していたテロリストが大規模作戦を敢行。それとは別に長引く戦乱で宗教団体が蔓延っていたらしく、これまた別の形で武装蜂起。

 

 それが原因で政府も含めた四つ巴になり、俺はお袋と離れ離れになり、そのまま浮浪児になったわけだ。

 

 ……我ながら死んでないことが奇跡だろう。

 

 政情不安定ではあるが、あくまで後方での難民支援だからこそ連れてこられたが、このせいで「南米のソマリア」と言われるレベルの大混乱。日本人なんていないところだから目立つこともあり、普通なら死んでいただろう。

 

 しかもお袋はこの時死んでおり、それだけは日本に伝えられたこともあって、俺も死んだと判断されたのもまずかった。

 

 だがしかし、俺の悪運は二重の意味ですさまじかった。

 

 寄りにもよって初めての海外でこんな目に合うあたり、正しい意味での悪運が強すぎる。だが、不幸中の幸いという誤用の意味でも俺の悪運は強かった。

 

 同時期に孤児になった日本出身のハーフ及び、彼女が上手くフォローをしていた孤児たちのグループに逃げ込めたのだ。

 

 さらにそこには超人じみた孤児が存在しており、「近づかなければ何もされない」という、ロクデナシからのセーフゾーン及びそいつの友達認定を俺も受けれた。

 

 そしてその少女は異形関係の知識もあり、俺に神器があることに気づいたこともあった。そしてその力を使っていろいろとフォローもできるようになった。

 

 ……いろいろと彼女に負担をかけたが、それを止めることのリスクと彼女の気持ちを考え、俺はさっきの超人孤児とともに孤児たちの用心棒じみたことをしつつ、日本小学生レベルだが算数を教えることにした。

 

 第三世界の政情不安定国なだけあり、平均偏差値も識字率も低い。成人ですら小学生レベルの計算が困難な物が全体の数割存在するレベルだ。国家全体でいうのなら、下から数えて28番目ぐらいとか言われていた。ちなみに日本とアメリカは上から数えて同率28位グループにいるそうだ。

 

 その辺もあって、「子供にものを教えられるほどわかれば、当人の学力も高くなる」という視点もあったのだろう。俺も同年代の子供や年少者に算数を教える形で参加していたため、そこがきちんとできたのも好都合だ。

 

 あと数少ない味方側の親戚が体育会系というか武術道場で、そんな流れで洗濯板の使い方を教えられていたことも大きい。人間不潔すぎると嫌われるが、多少なりとも洗濯してればだいぶましになるからな。比較的ましレベルだが、まあ何とかなった。

 

 そして三年前のエグゾールがらみで、この内乱がさらに変動する。

 

 どの勢力もエグゾールの調達しやすさに目をつけてこぞってかき集めておりそれが理由で内乱が激化。さらにこの内乱を利用してエグゾールの軍事利用の研究を行っている輩がいたらしく、ガチの激化でやばくなった。

 

 しかし捨てる神あれば拾う神あり。それが理由で三大勢力が動き出し、奇跡的ミラクルで俺たちは教会に発見される。

 

 本来ならあまり過度に手を差し伸べるのもアレになるのだろうが、とある理由により、俺たちは全員が保護されて先進国の孤児院に送られることになる。

 

 そして俺たち面倒を見る側三人は、異形社会でも戦闘ができるポテンシャルがあることもあって、悪魔払いなどの武闘派陣営に属することを勧められる。

 

 ……そして俺以外の二人は、肉体的理由により暗部組織である、プルガトリオ機関に行くことを選んだ。

 

 プルガトリオ機関は教義的グレーゾーンに位置するが信仰心のあるものが属する暗部組織だ。そのため信徒や信仰のために有効活用することが求められる。

 

 そして、俺は正規の悪魔祓いじゃなく、プルガトリオ機関を選択した。

 

 もとより俺は日本人で、別にクリスチャンじゃない。だからガチの信徒になれる気がなかったし、付き合いで信仰する奴は表側に立たない方がいいだろう。

 

 それに、三年間の共同生活は、二人に対して情を持つには十分すぎた。

 

 俺のいい加減信仰に真面目な信仰のツッコミが入れば、塩をなめた後の砂糖がより甘いてきな理屈であいつの扱いはましになるだろう。片割れは知らん。

 

 

 

 

 

 

 

 そんな理由で結成され、純日本人・日系人・日本人のハーフという理由で日本担当のジュリエット部隊に配属された俺たち三人。

 

 信徒の娘は、下級天使と信徒の間に生まれた娘にして、スラム世界での生活で生活の糧を得るため、堕天使になることを受け入れた少女、西野アメリア。

 

 超人じみた娘は、体質検査で堕天使及び悪魔の因子が観測され、それゆえに表の教会に置けない記憶喪失の少女、立花珊瑚(たちばな さんご)

 

 そして俺の名前は、旗本錬一(はたもと れいいち)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな俺は、正直失神したくなっている。

 

「錬一? そろそろ現実に戻ってきてください」

 

 そう苦笑交じりにアメリアに嘆息され、俺は現実に戻ってくる。

 

 ちらりとアメリアの向こう側を見れば―

 

「んまんま。コレおいしい……です、ミカエル様」

 

「それはよかった。来る直前にいただいた信徒からの捧げ物ですが、数が多かったので無駄にしないか不安だったのですよ」

 

 ―珊瑚のバカは、ドーナツをほおばったままミカエル様に頭をなでられている。

 

 俺は三秒ほど深呼吸をしてから、ミカエル様に視線を向ける。

 

「み、ミカエル様? 悪魔と堕天使の因子があるうえ、「アメリアが行くなら行く」なんて理由で暗部とはいえ教会に所属している信仰ないだろお前な輩と仲良くするのは……天使的にどうなんですか?」

 

 今回、俺たちジュリエット部隊第三班は、任務終了後にプルガトリオ機関用の拠点に帰還して報告書を提出。

 

 事後処理とかで仮眠と朝飯を食ってから帰ってきたので、まあ仕事上がりだしちょっとだべるか……と思ったら上から連絡。

 

「上役が直接お前たちに会いに来ている」とのことで、来てみればこれだ。

 

 アメリアが任務の情報などを語っている間、遠い目をしながら過去を改装していた俺は悪くないと思いたい。

 

 っていうか、やむを得ない理由で堕天使になったアメリアはともかくとして、信仰心って概念すら首をかしげてそうな感じの珊瑚に関しては、もうちょっと距離をとっていいと思う。

 

 だがミカエル様は、微笑を浮かべながら軽く紅茶を一口飲んだ。

 

「ここは前向きに生きましょう。むしろ悪魔で堕天使なのに、教会側の組織に就くことを決める要素となったアメリアの評価を上げるべきでしょう。もちろん、貴方もですよ?」

 

 ………ぐぅの音も出ない。

 

 俺はちらりと視線を逸らすと、アメリアは肩をポンと叩いてくれた。

 

 や、優しさが目に染みる。いや、ミカエル様はいじめてるわけじゃないけどね?

 

「それにあなたの評判は割といいですよ? 信仰心が浅いのはプルガトリオの存在を知る者たちでも知られていますが、規律関係ではむしろ正規の教会よりも厳しく向き合っているとか」

 

「いえまあ、アメリアの評価を下げたくないんで、絞めれるところは締めてるだけです、ハイ」

 

 具体的には肉食しないだけだ。

 

 本来キリスト教的には、生物の殺生そのものはあれだからな。最近はその辺緩いけど、中世ヨーロッパでは肉屋は「自然に死んでるのを拾った」という名目は立ててたらしいし。実際は違うそうだけど。

 

 まあそういうわけなので、牛・豚・鳥などの一般的な肉類はもちろん、魚も食べてない。買い食いはしても外食はしない。普通外食で肉・魚不使用の料理とか、サラダぐらいになって注文を受ける側が気にするやつとかいそうだからだ。うっかりラード使用してたりカツオ節で出しとってたりする可能性もあるからな。

 

 買い食いなら成分表を見て自立判断できる。まあ不意打ちとかはあるが、わかめのおにぎりならもんだない。

 

 で、体を使う職業ゆえにとっておいた方がいい動物性たんぱく質は、乳製品と無精卵でカバーしている。甘未とかは基本肉も魚も使わないから、比較的安全だ。

 

 結果として料理が趣味になってしまった。得意料理はチーズオムレツとプリン。

 

 ……まあ、あくまで「他の信徒に対する気遣い」だから、もてなしとして出されたら食べる。あと変に気を使わせるのも何なので、あまりそういうことを人に吹聴もしない。施設暮らしだからその辺はカバーできるしな。

 

 っと。

 

「そ、それでミカエル様? 暗部組織の俺たち相手に、まさかねぎらいが目的っていうわけではないですよね?」

 

 さすがに、そういうことをできる立場ではないだろう。

 

 アメリアがもともと奇跡の子ゆえ、顔合わせをしたことは何度かある。だがプルガトリオ機関に入ってからは一度もなかったはずだ。

 

 何せ暗部組織な上、「教義的グレーゾーン主体の戦闘部隊」だからな。ミカエル様自身がその辺を気にしなくとも、大組織のトップクラスなら醜聞などには気を使うべき案件だろう。

 

 だから、何かあると思ったんだが、どうなんだろう?

 

「……そうですね。ご尊顔を拝せるのは喜ばしいですが、それだけ……というわけではないのでしょう?」

 

 アメリアもそこはわかっていたらしい。ま、そりゃそうだがな。

 

 ミカエル様も、静かにカップを置くと、本題に突入した。

 

「実は少し前から、神の子を見張る者(グリゴリ)幹部のコカビエルの手のものによる襲撃で、エクスカリバーが()()奪取される事件が起こりました」

 

「……っ!?」

 

「まじかよ……」

 

 アメリアは息を呑むし、俺も天を仰いだ。

 

 問題は珊瑚なんだが―

 

「………ん、覚えてる。聖剣の名前だよね」

 

 ―うん、記憶力はよかったな、お前。

 

大事(おおごと)……です、ミカエルさま。エクスカリバーは有名どころですごい聖剣。その内六本持ってた教会が、三分の一も奪われるとか大事……です」

 

 そんでもって、意外とそういう機微には強いよな。

 

 まあそれはともかく。

 

 聖剣と言われればかなりの確率で真っ先に上がる、有名どころのエクスカリバー。アーサー王伝説知らなくてもエクスカリバー知ってるやつはいるだろう。

 

 ま、アーサー王伝説はあくまで物語であって、全部が全部本物じゃない。エクスカリバーは湖に返却されることなかったのかそのあと回収されたのかはともかく、その後も教会の戦力として使用された。そんでもって七つに折れてしまい、七本の聖剣として作り直された。

 

 昔の大戦争で一本紛失したが、それでも六本は存在するエクスカリバー。使い手が見繕われた時は有力兵器になるのは言うまでもない。そのせいで人工的に作ろうという計画が持ち上がったんだが、その過程で当時の研究主任らが暴走して被験者が殺されまくるという嫌な話まである。

 

 まあそんなこともあったが、結果として天然で三本まで仕えたエヴァルド・クリスタリディ現助祭枢機卿殿の後継として、人工聖剣使いも含めて六本全員使い手が存在。してたんだが………

 

「四本って……無事なの二本だけなんですか!?」

 

 思わず悲鳴を上げた俺は悪くない。

 

 堕天使のコカビエルとくれば、目の前の天使の長であるミカエル様とも戦える猛者だ。そんな猛者にエクスカリバー使いがいたら、ちょっとシャレにならない。

 

 ……当時の研究主任が堕天使側に逃げたっていうし、十中八九人工聖剣使いにあてがわれてる……よなぁ。

 

「わかった。つまり、私たちがコカビエルやっつけろ……です?」

 

「近いですが、若干違います」

 

 珊瑚にそう答えるミカエル様は、すごく頭痛をこらえる状態だった。

 

 え、なに? どんな問題があるんだよ。……普通に戦うだけでも問題なのに?

 

 ミカエル様は目頭あたりをもむと、少し遠い目をする。

 

「……エグゾールがらみで人類側の情勢が変化し始めているのは、みなさんご存じのとおりですね?」

 

 そりゃまあ。

 

 だけどあくまで人間社会だ。エグゾールが相手だろうと上級天使クラスなら、絨毯爆撃級の火力でごり押しできるだろう。中級天使クラスでもエグゾールが銃火器として使う光景なら耐えられるだろうし。飛べる天使なら下級でも同じ土俵で数段上になるんじゃね?

 

 確かに毎日供給数が五千体ってのは面倒だけど、どういうこった?

 

「……錬一。もしかしてちょっと勘違いしてませんか?」

 

 と、アメリアがため息をついた。

 

「いや、平均五千体ってのは国連からの発表だろ? そりゃ正式な数は推測しきれないだろうが、そこまで大差があるわけじゃ……」

 

「それはあくまで、三年間の平均数です」

 

 と、ミカエル様が苦い顔をする。

 

「最初の年だけなら、平均提供数は一日千機。そこから一年ごとに一日の供給数は四千機ずつ増えています。さすがに上限はあるでしょうが、おそらく最低起源とされる五年間は、一日平均提供数は四千機ずつ増えるでしょう」

 

「……ん。つまり今年は一日平均一万三千機……になるです」

 

 珊瑚。言わなくていいんだけどね。

 

 あ~。つまり五年間ってのは、試験的な供給テストって感じなわけか。来年あたりには一日平均一万七千機と。

 

 その供給の増加は、どんどん情勢が厄介なことになりそうだな、おい。

 

 確か、エイブラハム条約非加盟国は加盟国の八倍強の比率でもらってるらしい。潜在的な数も含めると、もうとんでもないな、これ。

 

「もちろんこれは表世界の話ですが。バチカンや天界の一部ではこれを利用しようという意見があります。それらを利用することで、悪魔と堕天使を制圧できる可能性を考慮しているわけですね」

 

「しかも堕天使側や悪魔側が手を付けないとも言い切れない。タカ派がいろんな意味で騒ぎ立てたいとは思ってました」

 

 あ~。アメリアの言うとおりだ。

 

 どこの世界も新技術が出たら軍事面での運用考えるからなぁ。価格の安さと使いやすさが売りならなおさらか。

 

 つまりタカ派の発言力が増えていると。

 

「その結果、追撃班のメンバーとしてタカ派の集団が選ばれてしまいました。墓守(グレイブ・キーパー)と言えば、わかりますね?」

 

「……生粋のタカ派じゃないですか。年に一回は「核縮の流れに乗じて、冥界攻撃用に三桁ぐらいもらうべき」とか言ってくる」

 

 あいつ、こっそり一個ぐらい持ってそうで怖いんだよなぁ。

 

 かなりマジのレベルでタカ派の筆頭で最強戦力。それこそ奴が声をかければ、こんな事態なら数百人ぐらい名乗りを上げかねない。

 

 そりゃまあ確かに、こういう事態ならマジギレして本腰入れるのは当然なんだけどなぁ。

 

 しかもミカエル様は、更に額に手を当てた。

 

 ま、まだあるのか!?

 

「しかも任務の都合で、ハト派の信徒で彼のカウンターになりえるデュリオ・ジュズアルドが当面手が離せないのです。しかもあろうことか、コカビエルはなぜか現魔王であるサーゼクス・ルシファー及びセラフォルー・レヴィアタンの実妹がいる日本の駒王町という場所に逃げ込んでいるようで」

 

 おいおいおい。ちょっと、ちょっとちょっと。

 

「どういうことですか? なんで堕天使のトップクラスが悪魔の、ましてや魔王の妹の管轄区域に!?」

 

 おいおいおいおい、それってまさか……。

 

「―考えられる可能性は二つですね。一つはもちろん両者が手を組んでいて、教会の追撃部隊を同盟状態で迎え撃とうというもの」

 

 俺の嫌な予感を、わざわざアメリアが言葉にしてくれている。

 

 だが、更にアメリアは指を一本立てる。

 

「もう一つは、コカビエルはエクスカリバーを使って魔王の妹二人の打倒をももくろんでいる。こちらに関しては、魔王ルシファーとレヴィアタンを相手にするのなら、神の子を見張る者が保有している神滅具使いである白龍皇(アルビオン)刃狗(スラッシュ・ドッグ)の力を借りる方が確実で、わざわざ教会と敵対する必要性がないので、薄いとは言えますが」

 

「そういうことです。なのでタカ派は両者の可能性を考慮したうえで前者の確率が高いと判断してます。事実、神滅具を二つも保有する勢力は歴史上にそういませんからね。それで戦争再開にかじを切った可能性は十分にあります」

 

 そう言って、ミカエル様は静かに目を伏せる。

 

「ですが、人類社会が大きく揺れ動いているこの状況下で戦争は悪手として思えません。なので、彼らタカ派が暴走しないよう、抑えられる戦力を送り込む必要があるのです。墓守は何とか一人で派遣させれましたが、当初の予定の追撃メンバーも同調気味でして」

 

 ま、その辺はあり得るわな。

 

 人間正義が自分にあると思っているときは考えなしに動きやすいし。そこはむしろ「常に正義の側にいるかどうか自問する」とかならいいんだけどなぁ。

 

 ま、いい大人でも早々出来ないことだしな。俺だってできてるか自信なんてないし。

 

 と、ドーナツを食べながら珊瑚が首をかしげている。

 

 ………いつ食べられなくなるかわからない生活を送っていることもあり、食えるものはきっちり全部食べる主義なのは知っている。

 

 知ってるけど、話が終わるまで抑えてくれない?

 

「というと、誰……です?」

 

「残ったエクスカリバー使いです。こと切り姫ゼノヴィアは、エクスカリバー使いはあくまで兼任のデュランダル使いですから―」

 

「……墓守との連携なら、コカビエル相手でも勝率を五割は超えるでしょうか」

 

 ミカエル様の言葉を継いで、アメリアが納得したかのようにそううなづく。

 

 ……むしろ堕天使最強格相手なら高い部類かとも思うが、そうもいかないよなぁ。

 

「つってもエクスカリバーって使い手が少ないわけでしょ? そんなのわざわざ盗むってんなら、何かしらあてがあるって考えるべきじゃないすか?」

 

「いえ、それも踏まえての五割です。墓守(グレイブ・キーパー)とデュランダルはもちろんですが、切り姫の相方でもあるエクスカリバー使いも、数年はエクスカリバーを使っているのなら肩を並べることは十分可能でしょうし」

 

 俺が首をかしげて問題点を口にすると、アメリアがそう訂正してくる。

 

 まあ確かに。墓守の野郎はタカ派で最強の悪魔祓いだし、デュランダルは七本に分かたれる前のエクスカリバーとタメ張れる聖剣だ。エクスカリバー使いの方も、デュランダルと肩を並べられるってんなら、エクスカリバー使いの中でも上の方だろうしな。

 

 だけど……なぁ?

 

「向こうだってエクスカリバー盗んで魔王血族の縄張りに入ってくるって、大事になりそうでしかないことはわかってるでしょう? 何かしら+αがありそうなんですけど」

 

「それもあってこそ、あなた方に頼むのです。万一の墓守達の暴走を抑えつつ、かつコカビエルやエクスカリバー相手に対抗できる教会の戦力は、日本に派遣されている人員ではあなた方のみ。ディートヘルムは既に別の任務に移っているので、頼めるのはあなた方だけなのです」

 

 といって、ミカエル様は静かにカップに視線を落とす。

 

「諸事情は明かせませんが、我々セラフは戦争の再発を望みません。可能ならば平和的解決も模索している三大勢力の冷戦状態を、このような形で爆発させることは避けたいのです」

 

 ……割とすごいこと言ったな。

 

 三大勢力の戦争を、平和的解決か。

 

 普通に考えれば天使の長が言っていい発言じゃない。一気に和平にもっていくことができればいいが、そうでない状況で悪魔や堕天使との和平なんて、ガチの信徒なら聞いただけで激高しそうな内容だ。下手したらバチカンで暴動が起きるぞ。

 

 しかしセラフクラスがそう考えてるってことは、そりゃ今回の事態は迷惑だよな。

 

 堕天使側だけならともかく、悪魔側すらヒートアップしかねないんだ。平和的解決を望んでいるのに、タカ派の墓守が余計なことして教会側が起爆させるなんて最悪のパターンだろ。

 

 こりゃ、責任重大かねぇ………。

 

「……了解いたしました。もとより信徒として天のお言葉は、原則従うものです。私個人としては否はありません」

 

「ま、俺もプルガトリオ機関の一員として、何よりアメリアの仲間として、行かないわけにはいかないですね」

 

「任せて……です。アメリアが行くなら、私も行く……です」

 

 と、言うわけで全員納得。

 

 まあ命がけなのはいつものこと。さすがに堕天使最強国は想定外だが、生き残って成果を上げ続けてたら、いつか到達したかもしれない難易度だしな。

 

 増してマジで世界の危機一歩手前だし、気合入れて……頑張るか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ただちょっと気になるのは。

 

「………セラフの意思、ですか」

 

 小さくぽつりとつぶやいたアメリアの表情がかなり真剣なのと―

 

「………っ」

 

 何か図星を突かれた感じの、ミカエル様の反応だ。

 

 え、なに。どういうこと?




 最初の最初で主人公のモノローグを入れる形式は、主人公の方向性を開設するのに便利だと常々思う。自分にこれを教えてくれたシルヴァリオサーガに感謝。









 そしてまあ「堕ちた奇跡の子」「悪魔と堕天使の因子持ちの人間」などすさまじい来歴持ちの二人に挟まれた、我らが主人公旗本錬一。

 彼の名前についてですが、実は本来は「神様転生による絶大なバタフライエフェクト」という、アンチにするほかないからやめたプランの時に設定した主人公の名前です。

 その場合においてはグレモリー眷属になることもあり、兵藤一誠と対を成す感じで「武家階級である旗本=(兵)藤の対」と「一が入る名前」を組み合わせたものです。

 設定を煮詰めすぎて筆が進まなくなった作品の主人公要素も入れてますが、没にする段階で作っていたスタンスを組み込むことも決めたので、名前をこっちに合わせた感じになります。
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