バトルスピリッツ~Flame soul~   作:ナックルボーラー

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1話 出会いの奇跡

 少年はカードダスと呼ばれるカード専用販売機の前に祈りを捧げていた。

 

「神様、仏様、バトスピ神様! どうか! どうか俺に初Xレアをお恵み下さい!」

 

 少年は祈りを捧げると、ポケットからなけなしの100円玉を取り出して、コイン口へと投入。

 ダイヤルを回してカードを購入する。

 

 カードダスは1回100円で5枚のカードを購入が出来る。

 輩出されたカードの束を取り出し、帯を取って少年はカードを確認すると。

 

「……またハズレだ! 全部コモン! ふざけんなマジで! いつになったら俺はXレアを手に入れる事ができるんだ!」

 

 少年は購入したカードを宙に放り投げて吼える。

 そして項垂れると、後ろにいた2人の少年が声を掛けてくる。

 

「また蓮は惨敗か? レアカード一枚も当たらずに」

 

「それは何ともご愁傷様なことですね。ですが蓮くん。Xレアなんて大層な物は早々当たる物ではありません。当たったカードで自分に合ったデッキを組むのが一流のデュエリストというものです」

 

「煩いわ卓也に浩紀! テメェらだってXレア一枚も持ってないくせによ! それに浩紀! テメェのその持論はムカつくんだよ! ただの負け惜しみじゃねえか!」

 

 鼻に絆創膏をつけるヤンチャ風の少年の名は岡戸卓也。

 そして眼鏡をかけたインテリ風の少年の名は一ノ瀬浩紀。

 

 そしてレアカードを一枚も当たらずに惨敗した少年の名は本条蓮。

 

 

 バトルスピリッツ。通称バトスピ。

 

 今、世界中で爆発的に人気を誇るカードゲームで、この本条蓮もバトスピを愛する1人の少年。

 

 

「それにしても、今回当たったのは白が2枚、黄が1枚、青が1枚で、紫が1枚って。蓮君が使用する赤のカードは殆ど入ってませんね」

 

「いや。蓮が使っているって言っても、蓮のデッキは赤がメインって言ってもカード赤のカード枚数が足らなくて混色デッキじゃねえか。んで蓮。なんか良いコモンカードは当たったのか?」

 

「黙れ黙れ! 外野が! 今効果見てるんだからよ!」

 

 と言って、唸りながら先ほど当たったカードを睨むが、残念な事に蓮が使える様なカードはなかった。

 

「つーか蓮。お前はいつもチマチマと一回ずつ買うけど、親には我儘とか言わないのか? 俺の親は滅茶苦茶頼み込めば1000円ぐらい出してくれる事あるけど。まあ、言い過ぎると怒られるが」

 

「そうですね。蓮くんはいつも100円玉に魂を込めた気魄ある表情で買ってますが。そもそも、その100円もジュース代として貰っている物で、お小遣いとかはないのですか? 僕たちは今や中学3年生なんですよ?」

 

 一般的かは定かではないが、中学生ぐらいであれば、遊びの度にジュース代として渡される以外にもお小遣いがあっても不思議ではない。

 だが、蓮はお小遣いは貰ってはいない。

 

「色々と事情があるんだよ……」

 

 蓮はある思い出がある。

 今よりも昔に、ある”少女”にお小遣いを大分前借して購入したあるカードを渡したのだ。

 その行動に蓮は後悔はないが、ふと思う。

 

「あいつは……今もバトスピをしているのかな……」

 

 出来れば、渡したあのカードを切り札、にと思うが、効果も確認せずに似合うと言う意味で購入したカード故に、弱かったから使わないだろうと思い、蓮は更に陰鬱になる。

 

「なに感傷に浸ってるんだ。良し! その鬱憤をバトルで晴らそうぜ! バトルフィールドもそろそろ空くみたいだし!」

 

「おっ! いいな! 今日こそお前に買ってやるよ! B級バトラーが!」

 

「C級バトラーが何を言ってやがる! ボコボコにしてやる!」

 

 火花散らす蓮と卓也だが、蓮は浩紀の腕時計の時間を見て目を見開く。

 

「うげっ! いつの間にこんな時間に! 俺、今日母さんに3時までに親父の部屋を掃除しろって言われてたんだった!」

 

 時刻は午後2時前。タイムリミットまで残り1時間。

 

「悪い、卓也! 勝負はまた今度な! 母さん、怒るとかなり怖いからな……」

 

 母親からの折檻を恐れ、蓮は唖然とする卓也と浩紀を置いて帰路を走る。

 家に帰り付いた蓮は急いで父親の部屋掃除に入る。

 

「……って言っても、母さんが定期的に掃除しているから、汚れとかはあまりないんだけどな……。てか、父さんはいつまでほっつき歩いてるんだ。もう8年も帰って来ないでよ」

 

 蓮の家は若干母子家庭気味であった。

 蓮の父親は存命であるが、8年前に突然と居なくなり、以降家に帰って来ていない。

 不定期に手紙と荷物が送られて来るから、元気ではあるのだろうが、自由奔放な父親に蓮は呆れる。

 

「まあ、言われた通りに掃除するか。しねえとジュース代も無くなるかもしれないしよ」

 

 ジュース……否、カードの為に渋々と父親の部屋を掃除する蓮だが、ある物に気づく。

 

「なんだ? この紙包みは?」

 

 父親の書斎机に置かれた紙包みを発見する。

 包みの表紙には差出人が書かれていた。

 

「差出人は、父さんじゃねえか。んで、蓮へ、って。もしかしてこれ、俺宛てか?」

 

 自分の名前が書かれている事で許可なく紙包みを破る蓮。

 中にはもう1つの包みと手紙が封入されていた。

 蓮は二つ折りの手紙を開き、中身を見る。

 

『蓮。誕生日おめでとう。父親でありながらお前の傍に居てやれなくて悪いと思っている。今やっている仕事が終われば、いつかお前と母さんが待つ家に帰るつもりだから、安心してくれ。それはそうと、誕生日プレゼントとしてお前にそれを渡す。もしお前が”選ばれし者”ならきっと使えこなせるはずだ。父より』

 

 実を言うと、蓮は先週誕生日を迎えていた。

 誕生日は母親からの細やかな祝いだったが、毎年の事だから別に蓮は気にしていない。

 

 しかし、手紙の内容の前半部分は分かったが、後半部分はなんだったのだろうか。

 

「父さん……今まで俺に誕生日プレゼントなんて送って来なかった癖に、なんで今回だけ……。それになんなんだこの選ばれし者、って。父さん家出て行ったあとに頭可笑しくなったのか?」

 

 蓮は姿なき父親に呆れながら手紙を放り投げ、もう1つの荷物に目を向ける。

 

「これが父さんからの誕生日プレゼントか。中身はなんなんだ?」

 

 と蓮は包みを破ろうとするが、包みは固くて開けられない。

 

「なんだこの硬さは! 父さん、息子にセコイ悪戯しやがって!」

 

 蓮が力づくで破ろうとすると、包みは真っ赤に光出す。

 

「うわっ! なんだ!? いきなり光りやがったぞ!?」

 

 蓮は驚いて包みを放り投げるが、怪奇現象の様に包みは浮き、赤い光が更に強くなる。

 

「なんだ!? マジでなんなんだ!? まさか、爆発を、って、うわっ!?」

 

 光が強くなったかと思えば、次は蓮の胸元から赤い結晶が飛び出す。

 

「これは……赤のシンボル!?」

 

 蓮がするスピリットの魂ともいえるシンボルが何故自分の胸から飛び出したのか、蓮には理解が出来なかった。

 だが、真っ赤に光る包みと蓮から飛び出した赤のシンボルが共鳴する様に、更に光を強くして。

 先ほどまで、力では破れなかった包みが、飛び散る様に弾け、中身を曝け出す。

 

「あれは、バトスピのカード……」

 

 包みの中身はバトスピだった。

 カードが露わになると光は消え、宙に浮くカードは蓮の掌に収まる。

 

「なんなんだマジで……。父さん。あんたはいったい何がしたいんだ……」

 

 と蓮は父親に言うが、当たり前だが返事はない。

 部屋の中心で立ち尽くす蓮だが、父親の誕生日プレゼントして送られたカードを見る。

 

「父さん。俺がバトスピをしているの知ってたんだ……いや、そもそも父さんが俺にバトスピを教えてくれたんだっけ。昔過ぎて一瞬忘れてたわ」

 

 カードは5枚入っていた。

 蓮は扇にしてカードを見ると、目が飛び出んばかりに見開く。

 

「う、ううううううううう嘘ぉおおおおお! こ、これってXレア! しかも3枚も! 後2枚はマスターだけど、遜色ないぐらいに使えそうなカード! うぉおおおおお! やっぱり祈るなら神様よりも父さん神様だ! 父親は偉大だ!」

 

 掌を返す蓮。

 だが、送られたカードは蓮にとっては最高のカードである。

 

 バトルスピリッツにはカード事にレア度があり、コモン、Uコモン、レア、Mレア、Xレアとあり、蓮が手に入れたカードは最高ランクのカードなのだ。

 Xレアならどんな弱いカードでも最低でも10万を超える代物で、カードダスで当たるなら1000人に1人の確率で貴重なのだ。

 

「色々と訳分かんねえことはあったけど、父さん、マジで感謝するよ」

 

 嬉しさのあまりに涙が出かかった蓮だが、こうしてはいられなかった。

 

「早速デッキ作りだ! 偶然にもカードの色は赤! これらを中心にデッキが組めるぜ!」

 

 有頂天になり蓮は掃除を放棄して自室でデッキ作りに没頭する。

 何年間もコツコツと貯めたカードたちをひっくり返し、蓮は赤デッキを構築する。

 そして1時間。蓮は自分の中で最高のデッキを完成させた。

 

「これなら、俺はS級ランカーも夢じゃなくなる! よし! 早速試運転として卓也達と一勝負―――――!」

 

 蓮は腕試しとして卓也達と勝負をしようと家を飛び出そうとする、が。

 家の外でドンドン!と誰かがドアを叩いている。

 

「蓮くん! 蓮くん! 大変です! 直ぐに僕と一緒にショップに来てください!」

 

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