バトルスピリッツ~Flame soul~ 作:ナックルボーラー
「はぁ? 不良グループにバトルフィールドを占領された?」
「そうなんだ。遂さっき、突然と現れて、いきなりバトルフィールドを……」
バトルフィールドとは、近年開発されたバトルに迫力をと開発されたバーチャルシステムであり。
その開発こそがバトスピを全世界に浸透させた立役者でもある。
バトルフィールドは各地にあり、主にショップや専用の会場などだが、不良グループが占領したのは公共施設でも会場なのだ。
蓮と呼びに来た浩紀はその会場へと現在向かっている。
「てか、占領されたからってお前たちは何も抵抗しなかったのか?」
「したさ! だけど、グループの1人にA級の人がいて、闘いを挑んだ人全員がそいつに……」
「卓也もか?」
「…………うん」
バトスピによる諍いはバトスピで勝敗を決める。それが暗黙の了解。
故に、バトスピで敗ければ勝者の言う事に準ずる。
「卓也はB級だぞ。この地域でB級以上はあまりいない。つまり、卓也が頼みの綱なのに……」
「だから、もう蓮くんに頼るしかないよ。僕含めて全員敗けたから……あとは蓮くんだけなんだ」
「俺はC級だぞ。B級の卓也が勝てない相手に俺が勝てる訳が……」
「だけどもう、蓮くんに頼るしかないんだ! お願いだよ蓮くん! 僕たちの、皆のバトルフィールドを取り戻してよ!」
無茶苦茶な事を言っている。多分、浩紀も重々承知しているだろう。
だが、彼の言う通り、あと戦えるのはその場にいなかった蓮だけ。
蓮は唾を呑みこみ、腰に下げるカードケースに手を当てる。
「っても……俺のデッキは作りたてでまだ試してもない。ぶっつけ本番でそんな重役を任されるなんて……いけるのか? いや、やるしかない。俺がそいつをぶっ倒す!」
蓮と浩紀は問題の会場へと辿り着き、息を切らすのを我慢して2人は中へと入る。
するとフィールドの中心から高笑いが聞こえる。
「ガハハハッ! 弱い! 弱すぎるぜ! こんな雑魚たちがフィールドを使うなんて勿体ないぜ! 今日からここは俺達が使わせてもらう! ほら、雑魚どもはさっさと出ていきな!」
金髪に片目に傷と一見して不良な人物が、敗北して泣く少年たちに叫ぶ。
「それにしても、マジでここの奴らは歯ごたえがねえな。もっと俺を楽しませる奴はいないのか?」
高笑いを上げる、恐らく件のA級とその取り巻き達。
少年たちは悔しそうに歯噛みをするだけだが、敗けた自分たちに何も言えないと堪えるしかない。
蓮は敗けて倒れる卓也の許へと向かう。
「おい! 大丈夫か卓也!」
「れ、蓮、か……。すまねぇ……敗けちまった。だがよ、アイツ強ぇぜ……全く歯が立たなかった」
悔しそうに震える卓也を見て、蓮の心の炎が燃える。
「おい! テメェ! よくも俺の友達に酷い目に遭わせてくれたな!」
「あ? テメェ誰だよ」
怒り心頭で蓮は主犯の男に噛みつく。
卓也は蓮を止めようと手を伸ばす。
「おい……止めろ蓮。お前が敵う相手じゃ……」
「敵う敵わねえじゃねえよ。お前を、皆を酷い目に遭わせて嘲笑うコイツが許せねえんだ! 俺がコイツを、ぶっ倒す! 勝負しやがれ!」
蓮は腰に下げるカードケースからデッキを取り出し構える。
「粗方ここら辺の雑魚は一掃したと思ったが、まだ雑魚がいたか。その大口を叩けなくしてやるよ」
勝負を了承と意味か主犯の男もデッキを構える。
「おいガキ。テメェ、名前は?」
「本条蓮だ」
「そうか。俺は森敬一だ。この名前、恐怖に刻め!」
蓮と森と名乗る男は数十メートル離れ、対峙する。
2人の戦士はバトルの始まりの合図を叫ぶ。
「「ゲートオープン! 開放!」」
合言葉を叫ぶと2人の眼下の地面が開き、そこからホバーリングで浮上するバトルマシーンが姿を現わし、2人はそれぞれに搭乗。
バトルマシーンにはプレイシートが設計されており、分身とも呼べるデッキを所定の位置にセット。
すると、ライフカウンターに5つのコア、リザーブと呼ばれる場所に3つのコアと赤いコア『ソウルコア』がセットされる。
手札は互いに最初は4枚。
「ハッ。テメェも他の奴ら同様に軽く蹴散らしてやる! 俺の先行だ!」
森が吼え、勝負が始まる。
―――――TUN 1 森のターン
「スタートステップ! ドローステップ! 最初は手始めにコイツからだ!【冥闘士バラム】を召喚!」
フィールドに紫のシンボルが出現して、砕け散るとそこから一対のスピリットが姿を現わす。
【冥闘士バラム】コスト3 軽減(紫1)
Lv1 BP 2000
「ターンエンドだ。ほら、次はお前のターンだぞ?」
「分かってるわ! お、俺のターン!」
ターンが移り、蓮のターンだが、蓮の手は震えている。
勝負は蓮が発破をかけ、勢いのままにバトルまで持ち込んだが、無計画過ぎた。
蓮のデッキはまだ試運転も出来てない。いわば、自分でも把握出来てない可能性未知数のデッキ。
そんなデッキが上手く回ってくれるのだろうか、不安で押しつぶされそうだ。
蓮が敗ければ、ここは不良グループの物。全員の期待を一身に受け、蓮はプレッシャーで押し潰されそうだった。
……だが。
蓮は自分の手札を見る。
確かにバトルフィールドに立っているのは自分だが、戦うのは蓮1人ではない。
心強い味方が沢山いる。
「そうだ。不安のままだとスピリットも応えてはくれない。俺は自分のデッキを信じて戦うのみだ! 俺のターン!」
――――――TUN2 蓮のターン
「スタートステップ。コアステップ。ドローステップ。メインステップ!」
後攻の2ターン目からはコアステップ、リフレッシュステップが増え、初期コア4つ(ソウルコア含め)の蓮は1つのコアが増え5つとなる。
「俺は【イクサトカゲ】と【ムシャダリュー】を召喚! 【イクサトカゲ】はLv2だ!」
バラム同様に赤いシンボルが現れ、砕け散った所から2体のスピリットが出現する。
【イクサトカゲ】コスト0
Lv2 BP 3000
【ムシャダリュ―】コスト1 軽減(赤1)
LV1 BP3000
「よし。アタックステップだ! 行け! 【イクサトカゲ】! あいつのライフを削って来い!」
縦置きのカードを横に回転されると、フィールドのイクサトカゲは森へと猪突猛進する。
「ハッ! ライフで受ける!」
敢えてブロックせずにライフで受ける森。
L5→L4 R0→R1
「よし! ライフを削った! 俺はこれでターンエンドだ!」
「ライフ1つ削ったぐらいで調子に乗るな雑魚が」
――――――TUN3 森
R1→5 手札4→5
「雑魚は調子に乗らせるとウザくて敵わねえからよ! 【ボーンドッグ】を2体召喚!」
【ボーンドッグ】コスト1 軽減(紫1)×2
LV1 1000
「更にテメェを眠らすフィールド! ネクサス【冥府の深淵】を配置!」
ネクサス。それは発動すれば永遠にフィールドに効果を与え続けるカード。
【冥府の深淵】コスト4 軽減(紫2)
「オラオラ! アタックステップだ! 【ボーンドッグ】アタックだ!」
「は? BPの低い奴でアタックって。倒されに行くようなものだろ。【ムシャダリュ―】でブロック」
「駄目だ蓮! それは罠だ!」
観客席の卓也からの声が聞こえたが、時すでに遅し。
バトルするスピリット同士のBPを比べ、低い方が破壊される。
故に、BPの低い【ボーンドッグ】が破壊されるが、
「かかったな! 【呪撃】を発動」
「呪撃だって!? おい、ボーンドッグは
「気づいたか。俺が発動していたネクサス【冥府の深淵】の効果だ!」
【冥府の深淵】
Lv1 系統「冥主」「無魔」を持つスピリットに【呪撃】『このスピリットのアタック時』バトル解決時にブロックしていた相手のスピリットを一体を、バトル終了時に破壊する、を与える。
ボーンドッグの系統は「無魔」の為、【冥府の深淵】の効果で【呪撃】が付与されている。
BP勝負で【ムシャダリュ―】が勝っているが、【呪撃】の効果で破壊されるのだ。
「これでテメェはがら空きだ。もう一体の【ボーンドッグ】でアタック!」
「ライフで受ける!」
L5→L4 R2→R3
「ターンエンドだ。おいおい。歯ごたえねえな」
「ちくしょう……【呪撃】。こっちが力では勝っているのに、敗けてるのと変わらねえなんて……。無暗にブロックは出来ねえな……俺のターン」
―――――――TUN4 蓮のターン
R3→R4 手札3→4
「お前が効果での破壊を狙うなら、俺は真っ向勝負での破壊を狙う! まず【イクサトカゲ】のLvを1にダウンさせ! 【ジンライドラゴン】をLV2で召喚!そして【イクサトカゲ】をもう一体召喚!」
【ジンライドラゴン】コスト3 軽減(赤1)
LV2 BP4000(ソ)
「【ジンライドラゴン】でアタック! アタック時にBP+3000、更に【ジンライドラゴン】にソウルコアが乗っている事で、【真・激突】発揮! 相手は可能なら必ずブロックする!」
「チッ! ムカつく真似を。【冥闘士バラム】でブロック」
BP勝負で【ジンライドラゴン】の勝利。バラムを破壊。
「続け【イクサトカゲ】たち!」
連続してアタックして、ブロッカーがいない森は両方共ライフで受ける。
L4→L2 R2→R4
「よし! 残りライフ2だ。俺はこれでターンエンド」
ライフを2削り、戦局としては蓮有利の状況に会場は歓喜に包まれる。
「ぎゃーぎゃーうるせぇえな! ここから地獄を見せてやるよ!」
―――――――TUN5 森のターン
R4→R7 手札3
「俺はもう一体【ボーンドッグ】を召喚! そして! 闇よりいでよ、魂食らう魔物!【冥剣士ベリト】!」
空気が揺らぐ紫のシンボルが砕け散って現れたのは黒い球体。
黒い球体を突き破り姿を現わしたのは、禍々しい魔界の獣。【冥剣士ベリト】
【冥剣士ベリト】コスト5 軽減(紫2)
Lv2 BP5000【ソ)
「【冥剣士ベリト】の召喚時効果! 相手は、相手のスピリットのコア3つをリザーブに置く! さあ、選べ!」
「……【ジンライドラゴン】から2つをリザーブに置く」
このコア除去により【ジンライドラゴン】のLVは1へとダウンする。
「【冥剣士ベリト】でアタック! アタック時効果発揮! 相手のスピリットのコアを1つリザーブに置く! 【イクサトカゲ】のコアを除去!」
コアがゼロになった【イクサトカゲ】は消滅する。
「まだまだ! ここでフラッシュタイミング!【ソウルシュート】を発動! 使用コストは【冥剣士ベリト】から使用。ベリトはLV1にダウンする」
【ソウルシュート】コスト5 軽減(紫3)
相手のスピリット/アルティメットのコアを1個リザーブに置く。
更にコストにソウルコアを使用していたら、更に相手のスピリットからコアを1個リザーブに置く。
「俺は【ジンライドラゴン】のコアを2個除去する! これより【ジンライドラゴン】も消滅だ!」
一気にスピリットを2体も消滅させられた蓮。
元々ブロッカーはいなかったが、このプレッシャーは痛い。
「ライフで受ける!」
L4→L3 R5→R6
「【ボーンドッグ】でアタック!」
「それもライフで受ける!」
L3→L2 R6→R7
一気にライフが同じにされ、蓮のフィールドはスピリットが一体。
森のフィールドにはスピリットが3体で、ブロッカーが1体。万全の構えだ。
「ハッ。所詮お前もその程度だ。俺に勝つなんて100年早いんだよ!」
勝利を確信した様に哄笑する森。会場の空気もどよめく。
相手にはキースピリットの【冥剣士ベリト】がいる。敗色濃厚の戦局だが、蓮は諦めない。
「まだ勝ちを確信するのは早いぜ。俺のライフはまだ残ってる!」
「負け惜しみを」
「負け惜しみかどうかは、次のターンで分かる。この勝負、俺が頂く!」
――――――TUN6 蓮のターン
R7→R10 手札2→3
「遂に来てくれたか。お前が俺の成り上がりの初陣を斬る最初の相棒だ」
蓮は引いたカードに見て口端をあげる。
会場が騒めく中、蓮は勝機が来たとばかりに、手に入れた相棒を披露する。
「紅の竜よ! 火炎を纏わせ、その名を轟かせ! 現れろXレア!【センゴクグレンドラゴン】!」
地面から放出される炎の渦。渦を斬り開き姿を現わしたのは紅蓮の竜。
翼と見紛う手翼に握られる刀で敵を斬り捨てる【センゴクグレンドラゴン】の登場に会場が一気に沸き立つ。
「あれってXレア!?」
「なんで蓮がXレアを!? あいつ、さっきまで持ってなかっただろ!」
蓮を良く知る浩紀と卓也が一番に驚いていた。
そして対戦相手の森もXレアの登場に若干恐縮していた。
「え、Xレアだと……なんで雑魚がそんなカードを!」
「ちょっとある人から授かった俺の相棒の1人だ。コイツがお前を斬り倒す! アタックステップだ!」
「馬鹿が! そいつ以外にスピリットを出さねえで、どうやって俺のライフを削り切るつもりだ!」
蓮のアタッカーは【イクサトカゲ】と【センゴクグレンドラゴン】の2体。
対して森のブロッカーは【ボーンドッグ】の1体。
森の残りライフは1。一体アタックが通っても森のライフは削り切れない。
だが、蓮のプレイに間違いはなかった。
「行くぞ。【センゴクグレンドラゴン】でアタック!」
【センゴクグレンドラゴン】コスト6 軽減3
LV3 BP10000
「BP10000だと! くッ! これはライフで」
「【センゴクグレンドラゴン】の効果発動【真・激突】! 更にアタック時にカードを一枚ドロー。そして、このターンの間【センゴクグレンドラゴン】はBP+5000」
「まだBPが上がるのかよ! くッ! 【ボーンドッグ】でブロック!」
BP1000の【ボーンドッグ】ではBP15000の【センゴクグレンドラゴン】では赤子同然。
軽々破壊されたが、ライフは削り切れない。
次のターンで勝負を決めると踏んだ森だが、森に次ぎのターンはない。
「【センゴクグレンドラゴン】の効果。ソウルコアが乗っているこのスピリットが相手スピリットを破壊した時、相手のライフのコア1つをリザーブに置く!」
「なに!?」
つまり、スピリットの破壊がトリガーで森のライフが1つ削られるということ。
L2→L1
「嘘だ! 嘘だ嘘だ嘘だ! 俺がこんな雑魚に!」
「人を雑魚呼ばわりして油断しているからだ! 【イクサトカゲ】! 最後のライフを削れ!」
森の場にブロック出来るスピリットはいない。つまり———————
「うがぁああああああ!」
L1→L0
森のライフが全部削られ、会場は静寂に包まれる。
誰がこの結果を予想出来ただろう。
勝利を祈ってはいた。だが、諦めもしていた。
何故なら、蓮はこの地域では殆ど無名の存在。知っている者でも勝てる予想は出来ない。
だが、その蓮が新しいキースピリットを携え、勝利を呼び込んだのだ!
「うぉっしゃあああああああ!」
蓮の咆哮と同時に観客が歓喜の声をあげる。
その空気に耐え切れず、森とその取り巻き達は退散するが、会場の熱が冷める事はなかった。
勝利の雄叫びを上げる蓮を、少し遠い観客席から眺める少女が1人。
「ふふっ。強くなったね、蓮ちゃん」