ボーダーにカゲさんが増えた。(番外編)   作:バナハロ

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賢い人ほど、バカを見た時の威力が高い。

 ある日のボーダーにて、海斗は一人で廊下を歩いていた。そんな中、ふと聞こえてきた話し声に耳を傾けてしまったのは、ボーダーにとって不幸であったと言わざるを得ない。

 

「……学校にて、ボーダーの広報活動をしていただけますかな?」

「……ました」

 

 広報活動、という言葉に興味を持ったのは、ほんの気まぐれだった。普段なら絶対、興味どころか耳にも入らない単語。そのままスルーして三輪隊の作戦室で三輪にカンチョウしてタイマン張っていたであろうが、気が向いた。向いてしまった。

 

「失礼しまーす!」

 

 何食わぬ顔でボーダー本部上層部の部屋に、押し入っていた。

 中にいるのは、嵐山隊の面々と根付栄蔵。海斗を見るなり、根付は思わず大声を上げてしまった。

 

「な、なんだね君は⁉︎」

「いや、広報活動と聞いたもんだからな。いつもいつもその嵐山隊に任されているようだけど、君達何か忘れてるよね」

「な、何がだね?」

「ボーダーで唯一、彼女がいるアタッカーランク三位の男をね?」

 

 直後、全てを理解した嵐山隊の木虎は、早速バカに文句を言った。文句と言うか、正当な主張を。

 

「いきなり入って来て、何言ってるんですか。陰山先輩。そもそも、私達は……」

「大体、嵐山隊の面々ってそんな美男美女揃いか?」

「ちょっと! 無視しないでくれます⁉︎」

「よーくメンバーを見てみろよ」

 

 言いながら、バカはまず時枝に視線を移す。

 

「性格もアシストも良いけど、どう見てもヘルメットにしか見えない髪型に」

「……」

 

 さらに、佐鳥に視線を移す。

 

「腕と髪型は良いけど、ニヤけ面とツインスナイプ(笑)のアピールが鬱陶しい奴に」

「なんと⁉︎」

 

 続いて、嵐山と綾辻を見る。

 

「……この二人は良いや。普通に美男美女だし」

「良いのか」

「ありがとう。でも後で桐絵ちゃんに伝えておくね」

「つまり、華があるかないかで言えば五分五分なんだよ」

「私は無視ですか⁉︎」

「その点、二宮隊であれば『黒いスーツ』というイカした隊服が映えると思うんだよな」

「陰山先輩! 私の声から発される波長は届かない病気ですか⁉︎」

 

 すると、今度は根付が半眼になり聞いた。

 

「……つまり、どうしろと言うのかね?」

「その点、俺であればビジュアルも広報も映えるだろ。何故なら、スーツを着ているし、何より那須、三輪という『絶対にアニメにハマらなさそうなボーダー隊員ベスト3』に入りそうな二人を、ジャンプオタクに引き込んだ張本人だぞ」

「……」

 

 何故か、説得力があった。バカのくせに。根付も、ほんの気まぐれで聞き流すようなことをしなかった。勿論、失敗であったことは言うまでもないが。

 

「じゃあ、君に広報活動として何かプランでもあるというのかね?」

「ボーダー隊員は若い奴が多いんだろ? つまり、子供を引き込めば良い。その為にはみんなが大好きな『ヒーロー』がボーダー隊員であると、言葉にせず錯覚させりゃ良いんだ」

 

 まぁ、言わんとすることはわからないでもない。言い方はどうかと思うが、あながち間違った意見ではない。

 

「で?」

「つまり、ドラマを作れば良い。現地に行ってわざわざボーダーの仕事をイケメンが説明するより、ビデオを作ってようつべにでも流してやった方が分かりやすい」

「それを君がやるつもり?」

「見とけよ。その外国人みたいな鼻を折るようなスゲーの作ってやるから」

 

 言うだけ言って、根付の前からバカは立ち去った。

 

「……あの人、結局何しにきたの?」

「俺と時枝先輩なんて悪口言われただけなんですけど……」

「嵐山隊を比較に出そうとしたのもあんま意味ない内容だったよね」

「多分、何も考えずに入ってきて、思い浮かんだことを適当に発言してただけなんだろ」

「あの、私の存在ってあの人に見えてなかったんですかね?」

 

 なんて呟く嵐山隊の面々の中、根付は顎に手を当てる。めちゃくちゃな男だが、内容だけ聞けば間違いとは言い難い。特に、動画サイトでドラマを作るという手はアリだ。

 とりあえず、下手な期待はしないで待ってはみる事にした。

 

 ×××

 

 一週間後、根付が部屋に戻ると一つのUSBメモリがメモと一緒に置かれていた。メモには「仮面ボーダー」と書かれている。

 脳裏に浮かんだのは、あのボーダー1バカな隊員が先週、ほざいていた事。もう出来たのか、と仕事の早さだけは感心しておく。

 なんかどっかで聞いたことあるようなタイトルだが、問題は内容だ。とりあえず、パソコンで拝見する事にした。

 あの時、聞いた話では、ヒーローものを作るようなことを言っていたが、ヒーローの正体が秘密であることは当たり前なので、まぁ良しとしよう。

 はてさて、果たしてどうなっていることやら。

 

『仮面ボーダー』

 

 やはりどこかで見たような斜めのロゴと爆発から始まった。直後、メロディが流れてくる。オープニングムービーのようだ。

 

『開く〜、ゲートー。地獄のネーイーバー』

 

 オープニングも丸パクリかよ、と思わないでもないが、そこに時間をかけられても困るので黙っておく。

 それより気になったのは、歌っている声が林藤支部長である事だ。あの人ホント何考えているのか。

 

『トリオン狙う白い影、三門の平和を守る為〜。オン、オン、トリガー。輝くトーリーオーン』

 

 オン、とトリガーの順番が逆だが、そもそも設定すれば「トリガーオン」以外でも起動できるのでスルー。

 

『ボーダー、ジャンプ!』

 

 そこはグラスホッパーじゃないのかよ、ボーダージャンプって何だ、と心の中で浮かびながらも続きを見る。

 

『流星〜、キック!』

 

 それ帰ってきたウルトラマンだろうが! と口に出そうになるのを抑える。作品間違えてんじゃないよ、と言いたいところだ。

 

『仮面ボーダー、キャ面ボーダー。ボーダー、ボーダー』

 

 途中で噛んでんじゃん! てか、ボーダーを連呼されるとユ○クロのCMみたいだな! というツッコミも飲み込む。

 

『スペシ〜ウム、光線!』

 

「何で急に仮面ライダーからウルトラマンの技変わっているのかね⁉︎ あとそのフレーズにそれだけ長い技名を入れるのは無理がある!」

 

 とうとう声に出てしまった。

 

『ワイド〜、ショット!』

 

「いやだから無理がある! さっきからそれ蹴り技じゃないし!」

 

『ウル〜トラマン、ウル〜トラマン、ラーマンー、ラーメン』

 

「ラーメンどこから出て来た⁉︎」

 

 噛んだだけなのか、それともわざとギャグをねじ込んできているのか判定に困るところだった。

 ここまでだけで大分、ツッコミどころが多かったが、まだ本編は始まってもいない。

 映されたのは、恐らくシュミレーションルームの中と思われる土手沿い。そこでナレーターの声が聞こえてくる。

 

 ナレーター『とある、のどかな草原と、透き通るような綺麗な川岸。みんなが住んでいる三門市にあるせせらぎ』

 

 ゲートと共にトリオン兵を引き連れた黒いスーツの男が三人、現れた。

 

 ナレーター『そこに現れる。不審な影が、ゲートと呼ばれる黒い穴から舞い降りた』

 

 その後、その三つの影の顔が露わになる。一人目は、軍服を着ているヤンキー風の男だった。

 

 海斗『此処が俺らの住処となる地か』

 

「君、敵側かね⁉︎ スーツ全く関係なくなっているけど⁉︎」

 

 その海斗に、隣から白い白衣を見に纏った冷徹な視線を誇る男が声をかける。

 

 二宮『気を抜くなよ、バカ大佐。この地には「ボーダー」と呼ばれる正義とやらのくだらぬ味方がいると聞く』

 

「恐れ多くも一番あり得なさそうな出演者⁉︎ あとまたスーツ出てきてない!」

 

 まさかの登場に、さらに声が大きく出てしまった。その隣で、扇状ということ以外、形容し難い被り物を被った髭が言い返す。

 

 太刀川『わーかってるって、二宮博士。俺ら、こう見えて近界民のエリートよ?』

 二宮『ふんっ、貴様は存分に気を抜いて構わないぞ。太刀大使。No1は俺一人で十分だ』

 太刀川『ははっ、笑い話として流してやるよ』

 

「だから豪華すぎるキャスティング! ボーダーの実力者は皆、暇なのかね⁉︎」

 

 ナレーター『彼らは近界民。我々が住む地球を侵略するため、異世界からやって来た地獄の使者である』

 

「このメンツが侵略者⁉︎ ヒーローか誰であっても勝ち目はないんじゃないのかね⁉︎」

 

 これは忍田本部長に言ったほうが良いかもしれない、なんて思ったものの、まぁ近界民のトリガーと自分達のトリガーの性能に差があるのは事実。無いものを、技量で補っていると思えば、決してない話ではない。

 

 二宮『バカ大佐、貴様の事前に行われ、報告を受けた情報収集は正確なんだな?』

 海斗『当たり前ですよ、二宮さん!』

 

「二宮さんとか普通に言うのかね⁉︎ いや、たしかに二宮博士だけども!」

 

 海斗『ちゃんと一ヶ月前に街に潜り込み、情報を集めました。こいつを使ってね』

 

 言いながら海斗は、ラッドの死骸を摘み上げる。こういう所でボーダーの実績を史実に基づいてしれっと伝えるのはアリだ。

 

 海斗『俺自身も、調査に参加しましたし、間違いありません』

 二宮『そうか。なら、今夜……この地をいただくとするぞ』

 太刀川『ところでこれ、ギャラ出るんだよな?』

 海斗『根付に採用されれば出るんじゃねーの』

 二宮『おい、これ撮影中だぞ。そういうとこで採用されなくなる』

 海斗、太刀川『うわやっべ!』

 

「もう遅いが⁉︎ というか編集の段階でここ切りなさいよ!」

 

 さて、その場面から打って変わって、街中。一人のふわふわしていそうなツインテールの少女が、ニコニコしながらコンビニスイーツの白玉あんみつを食べながら歩いている場面になった。

 

 黒江『ん〜、美味しい。やっぱり、学校帰りは食べ歩きだよね』

 

 なるほど、と根付は理解する。この子はおそらくヒロイン、これからこの子が攫われる所で、いよいよヒーロー登場だろう。

 その少女に、横から声をかける白い頭の少年がいた。

 

 空閑『よう、クロエ。何たべてるんだ?』

 

 それを見て、根付は少し苦虫を噛み潰したような顔になる。近界民である彼を、こう言ったビデオに出して良い所なのかは微妙なラインだ。

 

 黒江『むっ……空閑先輩。あなたには関係ないものです』

 空閑『むぅ……一口ちょうだい?』

 黒江『関係ないって言っているじゃないですか。絶対に嫌です』

 空閑『良いじゃん、ケチ』

 黒江『ダメったらダメです! どうして師匠を一時期とはいえ盗った泥棒猫にものをあげる必要があるんですか』

 

 師匠? 設定の話? とも思ったが、確か黒江双葉は陰山海斗の弟子であるという話を聞いた事があった気がする。あと、あの近界民の黒トリガーを奪おうとした際、陰山海斗が邪魔に入ったのも覚えている。

 おそらく、その時に陰山隊員は空閑の面倒でも見ていたのだろう。

 

「いや、急に本当の人間関係を物語の内容にねじ込まれても困るんだが⁉︎ 視聴者ついていけないよ⁉︎」

 

 思わず遅れて反応してしまった。

 

 空閑『いやいや、おれもう弟子じゃないし』

 黒江『嫌と言ったら嫌です!』

 空閑『しかし俺は、そのシラタマアンミツとやらに興味がある。食べさせてくれ』

 黒江『っ、な、なんで私が「あーん」してあげる事になるんですか⁉︎』

 空閑『あ、いや普通にスプーン貸して欲しいんだけど』

 黒江『ーっ……! と、とにかくあげません!』

 

 徐々に話が脱線している。お前らの諍いなんかに興味はないから早く先に進め、と強く思ってしまった。

 そんな時だ。二人がいる道を、まるで挟み込むように白い怪物達……所謂トリオン兵が取り囲んだ。

 

「……実際は警戒区域があるのだが……」

 

 まぁ、そこに焦点を当てていないのだろう。一先ずスルーだ。

 囲まれた二人は、お互いに頷き合うとポケットから手で握るサイズの武器を取り出す。

 

 黒江『! 空閑先輩!』

 空閑『ああ、わかっている』

 

 直後、黒江は両拳を右肩上に添えて構え、空閑は右手を斜め上に伸ばし、左手を腰に添えて構える。

 あれ? と、根付は小首を傾げるが、二人の変身は続いた。

 黒江は左手を右肩口へ伸ばして上にあげつつ、左肩まで移動させ、空閑が伸ばした手を徐々に横へ移動させる。

 

 二人『変し……トリガーオン!』

 

「間違えるなよそこは⁉︎」

 

 最後に黒江は右腕を右斜め上へ伸ばして左手は肘を曲げつつ指先を同じ向きへ伸ばし、空閑は伸ばした手を腰の手に重ねた後、両腕を広げる。

 直後、二人の体は戦闘体へと変化していく。……何故か、顔だけ特殊部隊みたいなマスクをつけて。

 

「ダサ……」

 

 そこはデザイン凝ってほしかった。見た目が大事なのではなかったのかと。というか、そもそも全然ヒロインではなかった。

 

 空閑『仮面ボーダー、クーガ!』

 黒江『仮面ボーダー、ブラック!』

 

「一々、危ない名前をつけないと気が済まないのかね⁉︎」

 

 その二人は、早速戦い始める。孤月とスコーピオンを構えて、トリオン兵を片っ端から片付け始めた。

 その腕前は流石、A級隊員と風間からA級並の腕前、と言われるだけの事はあり、手際良く淡々と、サブトリガーを使うことさえなく倒す。

 

「……さっきの変身シーンとあまりにも噛み合っていないねぇ」

 

 派手にポーズを決めた割に、動きが淡々とし過ぎている。

 敵が全滅し、二人はとりあえず落ち着く……かと思ったら、ポーズを決める。

 

 二人『正義は勝つ!』

 

 やはり……ダサい。差があり過ぎる。

 そんな時だった。「ハーッハッハッハッ!」と、やたら高い声が耳に響く。何かと思って二人が声のする方を見ると、そこに立っていたのはトリオン兵を引き連れた髭ダンガーだった。太刀大使のコスチュームでは無く、いつもの黒コート姿である。

 

 太刀川『今の連中を片付けた程度で勝利宣言とは、甘い連中だな!』

 黒江『何者だっ⁉︎』

 太刀川『俺の名前はー……あー、なんだっけ?』

 

「忘れるな!」

 

 出水(カメラマン)『太刀大使です、太刀川さん』

 

「誰だよ⁉︎」

 

 太刀川『そうそれ!』

 

「名乗れ! それで済ますな!」

 

 なんか一気に……いや割と最初からだが、グダグダ加減が際立って来た。

 

 黒江『っ、ショッカー最高幹部の……⁉︎』

 

「組織の名前はショッカーなのかね⁉︎」

 

 太刀川『そうだ。これ以上、俺らの邪魔はさせねえから』

 空閑『そうはいかない! 世界の平和は、おれ達がまもる!』

 黒江『行くぞ!』

 

 唐突に敵が現れ、唐突に戦闘が始まった。ほんと、子供向け番組みたいだなぁ……と、思ったのも束の間、まず突撃したのは太刀川だった。

 トリオン兵を置いて踏み込んだ太刀川は、空閑を狙って鋭い一閃を放つ。

 それを空閑がジャンプで回避した直後、横から黒江が斬りかかるが、それは太刀川がもう片方のブレードでガードし、いなして蹴りを放つ。

 蹴りを受けて後方に飛ばされる黒江を飛び越えて、空閑が上からスコーピオンで斬り掛かった。

 それを太刀川は首を横に捻って回避し、顔面に頭突きを叩き込んで下がらせる。

 

「だから戦闘になるとスタイリッシュになり過ぎじゃないかね⁉︎」

 

 さっきまでのダサイ台詞が嘘のようだ。

 

 黒江『くっ……つ、強い……!』

 空閑『すごいな……これがジンさんのライバルだった人か……』

 太刀川『はっはっはっ、空閑。今でもライバルだぞ』

 黒江『二人とも、役になりきって!』

 

 注意されて、慌てて二人はキリッとした顔を作る。どうやら、戦闘自体はそのままのようだ。

 

 太刀川『お前らの方こそ、中々やるなぁ。でも、俺ばっかりに構ってて良いのか?』

 黒江『何?』

 

 直後、太刀川の横からトリオン兵達がわしゃわしゃと進軍する。他に雑魚もいるのだ。そう太刀川ばかりに構ってはいられない。

 

 その雑魚達を相手に、黒江と空閑は二人で戦闘を始める。カメラはそちらに向けられ、根付はゴクリと喉を鳴らす。中身自体はペラッペラだが、展開自体は悪くない。ただでさえ強い太刀川相手に、雑魚とはいえ数あれば侮れない。

 つまり、勝たなきゃいけない方のピンチだ。どう逆転するのか見ものだった。

 囲まれないように上手いこと立ち回る空閑と黒江。だが、その隙間を抜けて太刀川が当てられるタイミングを狙って当てに来ている。決定打になっていないのは、太刀川自身が速度をセーブしているからだろう。

 

 黒江『クッ……やっぱり、強い……!』

 空閑『数が多いな。ジリジリ減らしている間に、こちらも削られてる』

 太刀川『どうした、ヒーロー! その程度で、市民の平和を守れると思っているのか⁉︎』

 

 背中合わせで構える二人。このままでは、トリオン兵は倒せても太刀川を打ち倒すことは出来ない。

 その直後だった。唐突にブアッと突撃してくるモールモッド。すぐに斬り刻むために、黒江が孤月に手を添えた時だった。何もせずモールモッドが切り裂かれる。そして、その後ろから姿を表したのは二刀を構えた太刀川だ。

 

 黒江『! 自分の仲間を……!』

 太刀川『言い訳結構……もらった!』

 ??? 『そ、そこ……そこまでよ!』

 

 直後、かなり照れが混じった声が聞こえて来た。その一声で手を止めるあたり、太刀川もかなり協力的になっているようだ。

 そして、その声の主は建物の上、香取葉子だった。その香取は、もうホント、心底やりたくないような顔だったものの、恥ずかしさが振り切ってしまったのか、他二人より大きな声を張り上げ、建物の上でポーズを決める。

 

 香取『へ……変、身! とうっ!』

 

 掛け声と共に、ビルから飛び降り、トリガーを起動する。変身隊に包まれつつ、同じように特殊部隊のヘルメットを被ると、落下しながらハンドガンを放ち、二人の周りにいるトリオン兵を一掃しながら、太刀川に斬りかかった。

 後方にジャンプして回避されるが、トリオン兵は大きく削れたと言うべきだろう。

 

 香取『待たせたわね! 二人とも!』

 

 ヤケクソになったのか、妙にノリノリである。

 

 空閑『遅いよ』

 黒江『でも助かりました』

 香取『一気に片付けるわよ』

 空閑・黒江『了解!』

 

 それだけ言うと、3人はトリオン兵を片づけ始めた。その中に混ざりに行く太刀川。

 太刀川の攻撃を回避しつつ、雑魚を片づけ、一気に三人は太刀川に襲い掛かった。

 まずは空閑から。正面からスコーピオンを振るうが、後ろにいなされる。地面を蹴って後ろから奇襲を仕掛け直すが、太刀でガードされ、ボディに蹴りを入れられて後方に飛ばされる。

 その次に黒江が挑む。正面から見たら顔面に斬り込むが、それを回避されつつ手首を掴まれ、遠くに投げられた。

 今度は香取。ハンドガンで牽制しつつスコーピオンで斬り込むが、それらを二刀で弾きつつ急接近し、二刀で斬りかかる。

 それを銃とスコーピオンでガードしたが、正面から蹴りで飛ばされた。

 

 太刀川『どうしたどうした、仮面ボーダーども! その程度か⁉︎』

 空閑『チッ……やっぱり強いな』

 香取『こうなったら、あれをやるわよ』

 黒江『ええ、わかりました!』

 

 そう言うと、三人は太刀川前に一気に構えを取った。大きくジャンプすると同時に、各々の武器を構えて突っ込んだ。

 それに合わせて、太刀川も二刀を構えて突っ込んだ。

 

 黒江・空閑・香取『ボーダー・トリプル・スラーッシュッ‼︎』

 太刀川『太刀川流……ダブル烈破ァアアアアッッ‼︎』

 

 四人の体が交差する。それと同時に中心でショートするように爆発が起こり、バギンッ! と、甲高く耳に響く音が響き渡った。

 通り過ぎた四人は、着地したまま構える。その間、動くことは無かった。……が、空閑と香取のスコーピオンに亀裂が走る。パッキィィィンっ……と砕け散る音がした。

 しかし、その後に太刀川の身体にも亀裂が走った。

 

 太刀川『グアアあああああッッ‼︎』

 

 爆発し、そのまま太刀川の姿は消滅した。三人は変身を解除し、そのまま微笑み合いながらハイタッチする。

 

 ナレーター『こうして、今日もボーダーの活躍により平和は守られた。しかし、まだ油断は出来ない。この地へ赴いた敵はまだ二人いるのだから。次回、仮面ボーダー第二話。「城之内、死す」。デュエルスタンバイ☆』

 

「……」

 

 鑑賞を終えた根付は、無言のままパソコンを眺める。頭が痛くなる内容だったが、一応ボーダーの仕事は簡潔にまとめられている。戦闘自体も、ブレードはブレードのまま使われ、オプショントリガーやシールドが使われることもなく、機密に関しても守られていると見て良いだろう。

 ……これを自分が一から作り直せば或いは……。

 

「……やるか!」

 

 この後、根付監督となり投稿された動画は、10万再生を記録した。

 ……そして、根付栄蔵には、城戸司令より一週間の休暇が与えられた。

 

 

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