アークナイツRPG 実績【生命の向こう側】取得RTA 作:凍洞
スゥー………フゥー………スゥー……アーイキソ…イキソ…ヌッ!
落ち着きました。うっかりリセットボタンを押すところでしたが、素晴らしいアーツを見て冷静になれました。
詳細なステータスを見ていきましょう。
検体No722 個体名:【オーバー】
【物理強度】欠落
【戦場機動】欠落
【生理的耐性】測定不能
【戦術立案】欠落
【戦闘技術】欠落
【アーツ適性】卓越
ほうほう、この娘はオーバーちゃんと言う名前らしいです。
【源石掌握】
誰だよ(ピネガキ)と思うかもしれませんが、これは今回のRTAにおいて非常に便利で強力なアーツです。
このアーツの効果は、『一定範囲内の源石の掌握』。範囲内にさえあれば、加工されてようが、地中に埋まってようが、相手の体内にあろうが、源石を意のままに操ることが出来ます。怖いねぇ…
それが今回のRTAとどう関係があるのだよと言う話しですが、つまりこれは『自身の体内に存在する源石も掌握出来る』ということです。やろうと思えば血中の源石の流れを操作して血管を傷つけないように動かすなんて芸当も可能です。なんだこのクソチート!?
まあ、それをすると常時アーツを使用していることになる訳でして。はい、鉱石病がマッハで進行しますね。鉱石病の苦しみから逃れる為にアーツを使うことで、結局更に苦しむことになるとはたまげたなぁ…。
ですが、今回はそれを利用します。こまめにアーツを使用することで、源石融合率を調整します。これを行うことで、最終実験に至るまでのいくつかの実験を、研究者たちの満足のいく結果になるようにして、最短で実験を終了させるように調整します。自分たちの研究成果が、実は被検体に操作されてたっていうのはキモティカ?キモティダロ?
ついでに部屋に置いてある鏡でオーバーちゃんの見た目を確認しましょう。このゲーム、ステータス画面では自分の見た目を確認出来ないんですよね…
―――鏡に映る自分を見つめる。
―――右目の部分に、内側から突き出た源石。右腕はほぼ源石に覆われ、脇腹からも源石が飛び出している。角と尻尾からは、源石が枝分かれするように乱雑に生えている。
―――…以前と比べて、右目の源石が大きくなっている気がする。
あら可愛い。大体身長が160cmくらいでしょうか?灰色っぽい感じの髪色で髪型はサイドテールですか。瞳の色は橙っぽくてイフリータに似てますね。たしかに姉妹と言われても分からなくもないですね。
それにしても…中々にハードな源石の生え方をしてますね。右腕、脇腹、角と尻尾の源石はまだいいですが、問題は右目の源石です。目というのは、脳に非常に近い臓器です。それの内側から生えているということなので、このままアーツを使い続けて源石が成長すると、源石が脳に到達し、良くて記憶障害、最悪脳死状態になります。見た目では分かりませんが、当然ながらそれ以外の臓器も源石に侵されているでしょう。適切な処置を受けないと非常に危険です。
まあ、今回のRTA中ではそこまで進行する前に実績達成するのでどうでもいいんですが。
少なくともオーバーちゃんはこのままロドスに行って、マトモな治療を受けたとしても長くは持ちませんね…カワイソウ…カワイソウニ…
―――部屋のドアがノックされた。
―――誰だろうか
おっと、誰か訪問してきましたね。と言っても、来るのは恐らくモブ研究員か、先程確認した主治医であるサイレンスでしょう。出来ればモブ研究員が良いですね。サイレンスだった場合、会話イベントが挟まって若干のタイムロスになります。イフリータ?(流石に)ないです。絶賛ライン生命のモルモットであるオーバーちゃんとイフリータを引き合わせた場合、鉱石病の進行具合が大きく変化するかもしれませんからね。
なにやらイフリータとは義妹という関係になってるらしいですが(なんで?)、そうだとしてもあのライン生命のイカれ研究者たちが姉妹の絆なんて考える筈が―――
「アネサマ、オレサマだ!イフリータだ!」
ファッッッッッッッッッッッ!!!!!!??????
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
オレサマには、オレサマよりも遥かに凄いアネサマがいる。
アネサマは凄い。滅茶苦茶強いし、綺麗だし、いつも笑顔で優しい。あのクソ白衣たちですら、アネサマには酷いことを言ったり出来ない。クソみたいな実験だって、アネサマが自分の分をすぐ終わらせて、オレサマにする実験を見張っててくれるから、酷いこともあんまりされない。
アネサマと初めて会ったのは、サイレンスと一緒に別の研究所からここに移されてからのことだった。クソ白衣たちの実験のせいで、オレサマは全身が引き裂かれるくらいの痛みを感じてた。その時に、偶然実験から部屋に帰ってる最中だったアネサマが、オレサマの中の源石をなんとかしてくれた。アネサマを連れてたクソ白衣たちはギャーギャー騒いでたけど、アネサマがそいつらを見ると一瞬で黙った。
そこでいくつか話をしたと思うんだけど、その時は痛みで頭が回らなかったからあんまり覚えてない。ただ一つだけ、鮮明に覚えてることがある。
『あなたもサルカズなのね。私もそうよ。髪の色も一緒だし、角と尻尾も少し似てるし、なんだか私達、姉妹みたいね?』
『ねえ、イフリータ。私達、家族にならない?』
そうして、オレサマとアネサマは家族になった。
「聞いてくれよアネサマ!あのクソ白衣共、ちょっと脅かしただけで命乞いしだしたんだぜ!ざまあねえよ!」
「あらあら…イフリータ、イタズラはいいけど、あまり迷惑をかけてはダメよ。あの人たちも、私達と同じ人間なんだから」
「ハァ!?あんな奴ら、人間じゃねえよ!アネサマだって酷いことばっかりされてるだろ!?」
アネサマはいつだって優しい。でも、あんな奴らにすら優しくしなくていい。それこそ、あのまま殺したって―――
「イフリータ」
「!」
「私は貴女に幸せで、笑顔でいて欲しいの。あなたは、幸せな気持ちのまま誰かに酷いことが出来る?」
「…ごめん、アネサマ」
「いいのよ、私も少し意地悪だったわ」
そう言って、アネサマはオレサマの頭を左腕で撫でてくれる。
…前までは、右腕だった。でも、あいつらのせいでアネサマの右腕は使えなくなった。それだけじゃない。最初に会った時は、角も尻尾ももっと源石が少なくて綺麗だったし、右目の源石も小さかった。
全部全部、あいつらのせいだ。
「…なあ、なんでアネサマはあんな奴らにも優しく出来るんだ?オレサマには絶対ムリだ」
「ふふふ、それはね―――
―――私は、誰かを幸せにするために生まれてきたからよ」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「……オーバー、入るわ。次の実験が決まったの。これから移動を…イフリータ?」
「あらサイレンス。イフリータがまたこっそり遊びに来ちゃったの。気付かれないように部屋に帰してあげてくれないかしら?」
「…ええ、分かったわ。実験を行うのは実験室Dよ」
「分かったわ、ありがとうサイレンス。…やっぱり、私のこと苦手?」
「いえ、そんなことは……ごめんなさい」
「いいのよ、むしろ私の方こそごめんなさい。最近ちょっと忘れっぽくって、貴女に何かしてしまったのかもしれないし…じゃあね、また会いましょうサイレンス。イフリータも、あまり頻繁にこっちに来ちゃいけないわよ?」
「…気付かれないうちに戻ろう、イフリー…イフリータ?」
「サイレンス、オレサマおかしくなったのかもしれない」
「え?」
「いつも通りの笑顔だったのに、いつも通りの優しいアネサマだったのに」
「さっきのアネサマ…怖かったんだ」