練也「はぐっ...、...むぐっ...。」
目の前に盛られた数多くの新鮮な食材に俺は齧り付き、腹をどんどん満たしていく。自分でも予想以上に腹が減っていたと思うほどの食いっぷり、もうなりふり構ってもいられない。とにかく腹に注ぎ込み、それを見ても目の前の女性2人は怒るでもなく引き気味になるわけでもなく、静かに近くの岩場に腰掛け、それを見守っていた。山の果物の中でも、木通の実は絶品だ。淡い紫色の殻を割って、中に入っている実を種ごと口にする。
穣子「...朝早くから滝行をやっていたんだもの、こうなるのも仕方ないわ。」
静葉「しかし、凄い食べっぷりね。」
2人はどうやら妖怪の山に住む、実りの神という二柱の神様。言わば保食神(うけもちのかみ)と言われる部類の神様らしい。静葉ちゃんも穣子ちゃんも似たような服装をしており、仲も良く常に2人で行動していることが多いのだそうだ。まず静葉ちゃんは、紅葉を愛し秋に活発になる。穣子ちゃんはその先ほど言った通り、保食神に該当する存在。常に甘い香りがさっきから漂っているのは、この子が原因らしい。
練也「....はぁ....。危うく行き倒れるとこだったよ...。」
静葉「山で行き倒れだなんて、こっちが御免だわ。ね、穣子。」
穣子「確かにぃ、ねー?」
姉の静葉ちゃんの問いかけに、妹の穣子ちゃんも苦笑いを浮かべる。
練也「ありがとう、静葉ちゃん、穣子ちゃん。...よーし!元気いっぱい!」
静葉「む〜、ちゃん付け...今まで呼ばれたことなかったわね。」
穣子「いいじゃない、姉さん。それだけ私たちが練也くんから見て若く見えてるってことでしょ?ね、練也くん!」
笑顔を向けながら俺に言う穣子ちゃん、正直この世界の女性の笑顔はどれも素敵だ。甘い香りがする穣子ちゃんは更に、それが際立って見える。
穣子「まあ私は、元々姉さんより若いしね?♪」
静葉「何よそれ?私は確かに貴女より歳はいっぱいかもしれないけど、着太り気味の食べ過ぎな神様とはワケが違うの。美しさなら私が上よ!」
穣子「美しさでお腹は満たせませんー。満たせるのは欲求だけですー。」
静葉「そんなんだから着太りのまま歳経て売れ残り女になっちゃうのよー。」
穣子「なんですってえ...!」
静葉「何よ?」
練也「あの、...2人ともセーブセーブ...。」
妖怪の山にて新たに結んだ縁。練也は2人が仲睦まじく言葉を交えている様子を静かに見守りながら、手に持った柿を一つ齧った。
【飯縄神社】
映姫「ふむ。ここが外界の人間が住まう家ですか...。(辺りを見渡し。).」
練也「全てってわけじゃないけど、外では基本使われているものが多いかな。これとか。(子機タイプの電話機を指差して。)」
映姫「あれくらい電話機だと見ればわかります。天狗の一部が使っている携帯電話など、の類でしょう。」
練也「あと。...。これかな。(電気ケトルを指差して。)」
映姫「これは...魔法瓶と呼ばれるものですか?これくらい知っています。全く、馬鹿にして...。」
練也「見ていてください。(水が入っていることを確認して、スイッチを入れて数秒でお湯が沸き。)」
映姫「...お湯がこんなに早く...。」
練也「(お湯をカップ麺に注いで。)はい、閻魔さん。(手渡して。)」
映姫「私に?というかこれは....。(マジマジと見て。)」
練也「3分待ってね。」
3分後...
練也、映姫「ズゾゾーーーーーッ。」