ここは.....一体どこだろうか。あの男、佐藤練也を捜索し始めて半日かそこらが経過した。その時は既に太陽は頭上へと昇り、その直射日光を防ぐかの様に自分の上を覆う大量の樹木。俺が擬態するこいつの脳みそに多少の類似した既存データはあるが、このように繁茂した上に瘴気が飛び交う森のデータなどは無かった...。擬態をしたつもりが....、記憶に至る部分に関して完全な擬態ではなかったようだ。仕損じてしまったことを今更悔やむこともあるまい...。今は、この森を脱出することが先決....。俺は周囲を注意深く見渡しながら、ゆっくりと地面を踏みしめながら歩き始めた。
擬態練也「.....。」
自分の足音以外には何も聞こえない。おそらくこの瘴気が原因で、通常並の生物は生息できないのであろう。人間に関してもそれは例外ではない筈、ワームであることが功を奏したか身体にこれと言って悪影響は今のところは出ていないようだ。黄色っぽい色合いの微細な粒子を吸い込んでは吐き出しているに過ぎないと言ったところだろうが、何か気配を感じ俺はその方向を見た。
擬態練也「......。」
周囲を見渡す。気配のあった樹木の陰などに身を跨ぎ細部にわたり確認するも、人影もなければ、小動物の姿形もなかった。一体何なのだろうか、このまとわりつく感じの気配は。数はそんなに多くはない、一人ぐらいの気配だった。そんなに遠くへは行っていない筈だと思いながら、俺はその気配の正体を探ることにした。
???「.......。」
その気配の正体はすぐ近くに居た。彼の直ぐ近くに....。
それは人間よりもはるかに小さく、頭に乗っかる程度の大きさの人形のようであった。全体的にフランス人形を彷彿とさせる容姿のその人形は自ら意思を持っているように動き、上手いこと彼の視界に入らないように浮遊しながら様子を伺っているようであった。何とも可愛らしい様子であるその人形は、上海人形。彼が彷徨う魔法の森に住むと言われている七色の魔法使い、アリス・マーガトロイドが使役している人形の内の一体である。一通り様子を見た彼女は、行動を起こす。
上海人形「.......。」
徐々に彼に近付いて行ったかと思えば、彼の頭の上にポフンと音を立てて彼の頭に自らの尻を敷いた。何故か。人形独特の勘でも冴えたのだろうか?訳が分からないと一瞬困惑する者もいるように、擬態練也もそのポフンと言う音と感触に面食らって反応が出来なかった。
擬態練也「.....。」
上海人形「.....。シャンハーイ?」
俺の耳に障害が起こっていなければ、今この人形は意味は解らないが口を聞いたことになる。見るからに人間のそれとはかけ離れたサイズに、宙を浮く身体....極めつけは先程の奇行...。何かが起こっていると感じざるを得ない。その小さなフランス人形の風体を呈した小さな少女?の容姿をまじまじと眺めた。実に不思議である。引き続き俺の周りをゆっくりと舐めるように眺めながら回るこの存在に、興味を覚えた。
上海人形「.....。シャンハーイ!」
擬態練也「.....。」
俺の周りを旋回し終えたのちに、眼前へと舞い戻るその可愛らしい少女。こちらの眼をひとしきりジーッっと見つめてふっと上に飛んでいき視界から消えた。行ったかと思えば、再び頭部に感じるあの感触と共に、ポフンという音が聞こえた。.....そこにまた乗るのかお前は。
上海人形「シャンハーイ♪」
擬態練也「.......。」
どうせ引きはがさんとしてもまたしつこくついてくるのだろうと思いつつ、そのまま魔法の森を歩き始める擬態練也とそれにのっかる上海人形。この奇妙な出会いが、この先どのようになるのか.....。