東方 外来人物語   作:佐藤練也

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第14話

射命丸と数人の白狼天狗の尋問と事情説明を終えてから、俺は妖怪の山を降りていた。白狼天狗の犬走椛の先導の下、軽い会話を交えながら彼女と共に勾配が急な坂道を下っていく。初対面のしかも異世界から来た御仁にもこんなアットホームに接してくれるとは、流石一大組織に属する妖怪だ。おかげで気まずい雰囲気にならずに済んでいる。

 

 

椛「....それは気の毒でしたね。まさか外界でそのような目に合われているとは....。」

 

練也「俺も驚いた.....、いくら外界で認知されているとはいえ、空想上の生き物から攻撃を受けるなんて....。」

 

 

昇る朝日に照らされた幻想郷は、美しい。坂道から見えた朝焼けに染まる田園、遠くに見えるのは数棟の人家....あれは茅葺屋根か。俺、本当に幻想郷に来たんだな....。

 

ガサガサ...!!!

 

突然不意に響く茂みを掻き分けるような音に、俺と椛さんは立ち止まり辺りを見渡した。鋭く視線を向け、打って変わって抜刀して刀と盾を構える椛さん。それを見た俺も周囲に目を配り下段払いの構えで、その向かってくる者を待ち構える。

 

 

椛「誰だっ!」

 

???「....。」

 

椛「!?」

 

練也「.....!!?(こいつは....。)」

 

 

椛さんだ....。椛さんがそこにいた、モフモフなしっぽ、ふさふさな頭髪にぴょこんと出ているけも耳...、美しい紅葉のような色の眼。全体的に白の印象が強い服装、そしてトレードマークの紅葉が。

 

 

椛?「練也さん。その輩から離れて下さい、彼女は偽物です!」

 

椛「何を言っているんですか!私はこの方と先程から山を下りている途中、貴女こそ私に化けた何かでは.....!....もしやあの化け狸では....!!」

 

練也「(まさか......。ワーム.....!)」

 

椛?「さあ、こちらへ.....。」

 

 

茂みから出てきた方の椛さんが、俺に手を伸ばそうと迫ってくる。雰囲気でわかるし、短い時間で分かったが椛はとても親切に接してくれる子だけど、これ程までに積極的に行動はとらない子だろう.....。そもそも俺はさっきから彼女と一緒にいたのだし、簡単に判断が出来た。

 

 

練也「俺はさっきまでこの子と一緒にいた....。...擬態しているのはわかっている!!」

 

椛「擬態?練也さん、それは一体....?」

 

椛?「ふん.....。手始めに静かに襲う手筈だったが....。まあいい。」

 

 

もう一人の椛さんの身体が徐々に変化していき、案の定それは禍々しい姿に変わった。ワーム蛹体が椛さんに擬態し、彼女の隙を伺い攻撃の機会を待っていたのである。にしても出てくるの早すぎるだろお前...。

 

 

蛹体「フシュウウウ......。」

 

椛「!!妖怪っ!」

 

 

ワームが椛さんめがけて突っ込みにかかり、それを素早い動きで回避する椛さん。軽やかな足さばき、流石白狼天狗の身のこなし。そこから刀を振りかぶり、ワームに斬撃を浴びせる。

 

 

椛「ふっ!」

 

蛹体「っ!」

 

 

ワーム蛹体の身体に斬撃が繰り出され、火花を散らせる。椛さんの刀は刃こぼれこそ起こしてはいないが、蛹体に決定打を打ててはいない様子だった。

 

 

椛「この妖怪....硬い...!」

 

練也「...くそっ!」

 

 

椛さんのバックアップをしようと俺も間髪入れずに突っ込む。昨晩の記憶が確かなものなら、俺は自らの拳でワームを吹き飛ばした、それが出来たなら今この状況でそれを実践してみようじゃないか。そうだ。女の子一人に戦わせてちゃ、男が廃るぜ....!!俺は自らの拳に意識を集中させて、蛹体へと突きを見舞う。

 

 

蛹体「....シャアアッ!!」

 

椛「練也さんっ!?(外来人がなんて無茶を....!)」

 

 

蛇の威嚇のような声を上げて、こちらに向きを変える蛹体。拳に熱を感じる、それの直後突きが当たった。熱が体内から拳に転じて収束した後に開放、次いでドゴォッ!という音が響き、それと同時に吹き飛ばされる蛹体。俺をカバーするために近付いてきた椛は、俺の傍らに立つ。

 

 

練也「....凄い、本当にできた!!」

 

椛「練也さん、...先程の力は。」

 

練也「さっきの尋問で話した通りさ...。ここに来る前に身につけた...。」

 

 

先程吹き飛ばしたワーム蛹体が気になる。爆裂し四散をした様子もない、ということはまだ生きている。そう考えたその時に、ワームの攻勢が始まった....。

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