東方 外来人物語   作:佐藤練也

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(霊夢が大幣を構えて。)

東方外来人物語、この後すぐ。


第145話

ねっむ。起きたくない、あと5分...。そういった心境を理解する者は、どの世界線にも一定数存在するものであるかもしれない。生きている以上、人間ならばなおさら睡眠欲には抗い難いものだ。だがそれに打ち勝たんとする者が、命蓮寺の一室にて唸り声をあげる。だが、実際はただ怠惰に身を任せたいと思っているのかもわからない。至るまでの過程如何で、情状酌量の余地はあるんだろうが。事実、命蓮寺の修業は常軌を逸しているともっぱらの評判。そんな場所に勤めていれば、朝が来るたびに気がめいってしまうのもうなずける。

 

 

 

走馬「眠い....。」

 

 

 

???「ぅおいっ。」

 

 

 

襖の奥から女性ではない、明らかに男性のものと思われるドスの効いた声で呼ばれる外来人の太秦走馬は、恐る恐る廊下と寝室を区切る襖に手をかけた。すすーっ、とゆっくり横へ開かれていく襖戸の奥には巨大な顔があった。淡い桜色という鮮やかな色合いの顔には、ぎょろっと剥いた2つの目玉、ぷっくりと膨らんだ鼻っ柱の下に蓄えた立派な鼻ひげ。それと同じくらいの太く整えられた眉毛は上に反るような生え方をしている。

 

 

 

走馬「なんだぁ、雲山かあ。まあ知ってたけど!」

 

 

雲山「やかましい、朝飯じゃい。はやくだらしないのを無くしてこい。」

 

 

走馬「不思議となれたもんだよなぁ....、わかったありがとさんきゅっ!」

 

 

 

雲の強面の顔、雲山からの叱咤により走馬は目を覚ました。この朝の到来が元居た世界よりも苦痛ではないというのも、彼が異世界の人間だというのも影響しているからだろうか。姿見の前に立ち、作務衣を着正し布団をたたむ走馬の姿が反射して映し出される。畳み終えて姿見の方を向けば反射的にベントホルダーに目が行き、それを手にしては作務衣の懐へ仕舞えばゆっくりと御堂へ向かう。

 

 

 

走馬「....。」

 

 

雲山「しかし、お前さんも大変じゃのう。」

 

 

走馬「え....?まあ写経はごっつだるいけどさ...。なんというか幻想郷補正というか、そういう目に見えない部分でなんとか補えているというか。」

 

 

雲山「ふーむぅ...。わからん、修行以外にお前にやることはないのか?お前と会うのはいつも命蓮寺の中のみ。外出先では見たことなどない。一輪もそういっていたしな。」

 

 

走馬の日々の生活が心配な様子の命蓮寺の妖怪達、普通の人間にはいささか荷が重い風に見えるようだ。

 

 

 

走馬「ココの生活、楽しんでるからさ。外出も時々したりしてるし!キツいけどね実際!」

 

 

雲山「ふん、そうか....。たまには息抜きも必要だぞ?」

 

 

走馬「ありがと、雲山。...っていうか、おやじみたいだよな。一般家庭に多くいそうな!」

 

 

雲山「誰がオヤジじゃい!」

 

 

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美鈴「.....。」

 

 

 

紅魔館。吸血鬼や魔法使いが住むその館は、今日も変わらずその姿をとどめ続ける。朝の館の門前、堅牢な鉄の格子戸を背にして佇む1人の娘の姿がある。腰に手を添えて足を肩幅に開き、きれいな顔立ちに中華娘が身に着けるチャイナドレスという身なり。館の主、レミリア・スカーレットに仕える、紅美鈴は今日も紅魔館のセキュリティーを担う。

 

 

 

美鈴「.....。」

 

 

れんな「めーりんさんっ!門番お疲れ様ですっ!」

 

 

 

鉄格子の扉が開かれ、そこから1人のメイドが美鈴の労を労うように声をかけながらやってきた。紅魔館のメイドの一員となった外来人の発音れんなは、小走りで美鈴に近寄り携えていた弁当箱を彼女の手に渡す。

 

 

 

れんな「はいっ、今日はサンドイッチ作ってみたよ。どうぞっ。」

 

 

美鈴「れんなさん、ありがとうございます。では、早速....。はむっ。」

 

 

 

中を見れば、出来立てのサンドイッチが端正に敷き詰められていた。自らの給仕に来てくれるれんなとの絡みが、門番をやっている時の数少ない楽しみ。彼女の作る料理がとにかく旨いので、最近はそれが影響してか門番の仕事がはかどっているのだという。れんなが手に塩かけて作ったサンドイッチを一口かじれば、自然と笑顔をこぼす美鈴。その顔を見て、れんなもなおさらのこと仕事への精も出るというもの。

 

 

 

美鈴「おいしいですれんなさんっ!これで今日も頑張れます!」

 

 

れんな「よかった!♪それじゃあ私も頑張らなくちゃね!」

 

 

 

紅魔館での平和なワンシーンを垣間見たのは、なにもその場に居合わせた2人だけではない。もうすぐ地平線から日が昇る時間帯、それをバルコニーから見守るレミリア・スカーレットの目にも止まっていた。

 

 

 

レミリア「...ふふ。やっぱり入れて正解だったわね....。」

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