馬之介「ここか...立派な社だな。」
俺は加藤馬之助。自警団に所属する、幻想郷の人里に住む人間だ。今日は外来人の友人宅に用があって、そこに出向いている。天邪鬼に対する警戒を続けている自警団だが、練也はここ数日姿を見せていない。一体どうしたのだろう。
馬之介「いるかー!?練也ーっ!」
声を張り上げる、しかし返事はない。外界の人間はこうも耳目が利かないのかと一瞬考えるが、居留守は考えにくい。人の問答にはハキハキと喋り答えるヤツだ。母屋の前で声を上げた次は、玄関の戸を引いてみる。ガラガラー...という音を立てて開く戸を見た次に、里の豪農が住む屋敷とは違う、よくわからないが立派な家という感じの造りが俺の目に入る。人の気配は無く、どうやら留守のようだ。
馬之介「こんな立派な家なのに、遣いや用心棒でも立てないなんてな。今にも盗人に入り込まれるぞ...。おーい!!練也、いないのかー!!」
試しにもう一度、声を張るが変わらず問答はない。ともなれば仕方がない、少し書き置きだけ残して...。っと....、おや?他に誰か客人が来たのか...。足音が外から聞こえたので、反射的にその方へ顔を向ける。寺子屋の教師、慧音先生が手に綺麗に畳まれた狩衣を持ってくるところに出会したのだ。意外にも、交友関係とかに問題は無さそうではあるのか、練也のヤツ...。
慧音「誰か来ているのかと思ったが、馬之介か。」
馬之介「慧音先生。練也なら、今は留守ですよ。履き物も、草履が無かったし。」
慧音「ああ。それなら、今は妹紅との修行中だろう。弾幕を出したいと、練也も躍起になっていたぞ。」
馬之介「そうですか...。外界の人間なのに、なんて無茶を...。」
おそらく練也のものであろう狩衣からは、良い麻の香りが漂ってきているようで気分も自然と穏やかになるようではある。それを玄関に置いた後に、慧音先生も彼を案じるように言葉を続けた。
慧音「外来人故に、幻想郷という存在に夢中なのだろうな...。外界には無い物...正確には、外界から消えてしまったそんな存在に、彼は魅了されてるんだと私は思う...。夢中になるのは大いに結構だが...、擦り切れそうでな、私はちょっと心配だ。」
馬之介「...同感です。...ところで。」
慧音「ん?どうかしたか?」
俺が気になった家屋。その目線の先には、年季の入った納屋のような建物があった。
それは練也が幻想郷に来るきっかけを作った、あの秘薬が封印されていた宝物庫であること。それは、練也以外にはまだ誰も知られていない...。