東方 外来人物語   作:佐藤練也

151 / 200
第151話

練也「...。」

 

 

???「おや?どうかしましたか?驚きのあまり、声を失ってしまったようですが?」

 

 

ひとまずこの状況をどうにか出来るものかと考えを起こそうとする俺の側に、1人の妖怪と思われる女性が突然現れる。さっきまでいなかった筈だろ、そこに。どこから出てきたんだこの人は。組んでいた腕を解き、女性に顔を向ける。

 

 

練也「...佐藤練也。外来人の、神主。...貴女は?」

 

???「おや?律儀にお名前をいただいて嬉しいですが、どこか元気を欠いているようですね?」

 

練也「....なんでそんなこと...、今聞くんだ...!」

 

???「それもそのはず...貴方は突然、なんの前触れもなくこちらの世界にいきなり飛ばされてきた身でありながら、よく五体満足で、そして精神が疲弊し切ってない状態を保ちながら過ごせている。私はそれを評価していると申し上げておきましょう。佐藤練也さん?」

 

練也「...今が疲弊し切った状態だってわかるなら、今すぐ解放してくれよ...。疲れてるんだ。」

 

???「まだお待ちください?なら話をする間、寛ぐつもりで私と相対してみませんか?決して苦ではない筈ですよ...?貴方が日頃から蓄積させている負の感情...その感情の元となる弾幕ごっこにおける大敗の数々...それによって生まれる無力かつちっぽけな自分への焦りや憤り...それから解放するお手伝いをしようというのですよ?」

 

練也「.....なら、やっぱりこの空間は、この夢は貴女が俺に見せてるモノ...。」

 

???「正確には、貴方が抱えているトラウマが夢となったもの。それを見ているだけでは、何かもったいないというか、後ろめたさも感じた故にお邪魔させていただいたんです。紹介が遅れました...。」

 

 

コホンッ。小さな咳払いをしてから、スリープキャップのような帽子を被った妖怪は、名乗った。

 

 

ドレミー「私は、ドレミー・スイート。夢を食べる、獏の妖怪です。ドレミーと、気軽に呼んでください。夢を食べる妖怪...外界では聞いたことはありますか?練也さん?」

 

練也「....ドレミーか....。合点がいった...なら、夢に出てきても不思議じゃないわけだ。こうして長く夢の中で、ゆっくり会話していることも...。」

 

ドレミー「ええ、私はどなたの夢でも現れると言う存在ですし。起きている間でももちろん、このように会話をすることは可能です。さて。本題に入りましょう、練也さん。この悪夢について...。」

 

練也「...。」

 

 

座敷に2人で向かい合う形になり、互いに虚空から現れたクッションに身を委ねながらのんびりと会話はスタートした。ゆったりとした口調で、ドレミーが口を動かす。

 

 

ドレミー「まず、何故この悪夢を見るのか。先程申し上げた通り、それは練也さんのトラウマとなる記憶が原因です。」

 

練也「...そうだね。...そうだよ、幻想郷に来る前に俺はある薬を飲んだ...。それがことの発端だ。」

 

ドレミー「ええ。そして、先程八意永琳から与えられた薬の外観、...それと貴方の飲んだ秘薬の外観...それが、偶然にも酷似していた。それでフラッシュバックを起こした...。」

 

練也「...そこまでわかるのか...。紫さんみたいに、なんでも筒抜けじゃないか...。」

 

ドレミー「ええ。私は誰の夢の中にも干渉は出来ますので...。少し貴方のことも気になってもいましたのでね...別の世界に来てまで心を擦り減らしても、自分のなりたいものになろうとする考え...決して悪くないと思いますよ...?」

 

 

ドレミーは優しく語りかけるように、言葉の一つ一つをゆっくり俺に送り届ける。一つ一つがまさに、ぬくもりが宿る言霊だ。悪夢の中に、俺は今優しさを見出しているとでも言うのか...。あっ...目頭が段々熱くなってきた...。

 

 

ドレミー「今日この場所に至るまで、よく頑張ってきましたね。練也さんは、頑張り屋さんであまりにもまっすぐな御人です。決して軟弱者ではありませんよ...♪」

 

練也「.....っ.....。」

 

 

堪え兼ねて涙をこぼしてしまった...いつぶりだろう。こんな大粒な涙をこぼしたのは。鬱憤の一つ一つが、涙に変わり身体の外へ流れて行く。その様子を見たドレミーはゆっくりと立ち上がり俺の隣へ腰を下ろし、俺の頭を足に乗せて膝枕をさせた。ゆったりとした彼女の雰囲気に包まれる。

 

ドレミー「貴方も、この幻想郷に何か縁があって来た...。だから、色々な方々とも縁を持ったのです...。このトラウマの夢からも、いずれ解放されるでしょう...その時は必ず来ます...。」

 

練也「....。悪夢が、...。...少しだけ、....いい夢になったよ。」

 

 

ドレミーから頭を撫でられる度、段々と眠気が俺を襲う。徐々に閉じられる視界の中、ドレミーの声が遠くなりながらも聞こえた。

 

 

ドレミー「外の世界から忘れ去られた者達が集う、幻想郷...。おそらくですが、貴方が飲んだその薬も外界で必要とされなくなった故に幻想郷となにかしら接点を持ったのでしょう。...急がずとも、ゆっくりでいいので。調べれば色々わかるかもしれませんね...。」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。