東方 外来人物語   作:佐藤練也

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第16話

カチャリッ.....。グラスを置く音が静かな森の邸宅内の一室にて鳴った。クラシック系の音楽に合う雰囲気の内装とその中から見える花が咲く庭は、穏やかさと美しさ、その雰囲気を完成させていた。ここは私、アリス・マーガトロイドと私の大切な人形達の住処。そこへ今日、予想もしなかった客人が来た。見たところ外来人のようだけど、どこか変わった雰囲気。最初は上海が魔理沙とでも遊びながらおうちに帰って来たと思っていたけど.....。

 

 

擬態練也「......。」

 

アリス「.....。」

 

 

だけどおかしいわね...。普通の人間なら、瘴気に満ちているあの起伏が激しい森を上海に道案内されているからと言って、容易く通れるものじゃないわ....。人間なら引き返す筈...。そう、人間なら...。私がそう考える間に上海はその場に舞い戻ってきて、何故だか知らないけどまた彼の頭の上に乗ってしまった。

 

 

【挿絵表示】

 

 

上海人形「シャンハーイ。」

 

擬態練也「.......。」

 

アリス「こらやめなさい、上海....。」

 

擬態練也「構わん....。森の中でもずっとこうだ....。」

 

 

何故だか知らないけれど....。上海はこの男に気を許しているようね....、異様な雰囲気だけれど....今しばらく様子を見ましょうか。

 

 

擬態練也「....茶を、馳走になった。」

 

アリス「ええ、礼には及ばないわ。茶菓子もあるから遠慮なく食べてちょうだい。」

 

 

にっこりと微笑みを向ける。ごくまれにスキマ妖怪の気まぐれで私の家の近くに現れた外来人をもてなしたことはあったけども....、やっぱり何処か雰囲気が違う。多分上海もこれを解っている上で、彼をここに案内した....。って、あの子乗るだけじゃなく彼の頭髪で遊んでいるし....。

 

 

擬態練也「....元気だな.....。」

 

アリス「あっ、...ああごめんなさいね....(汗)何時もはもっとおとなしくいい子なのだけれど....。」

 

上海人形「シャンハーイ♪」

 

 

彼が本来の目的を思い出すのはいつになるのだろうか.....?

 

 

 

 

妖怪の山の山中にて、多数の炸裂音が響く。それは文の耳にも届き、それからすぐに侵入者、異常を知らせる呼び笛が響く。白狼天狗達が速やかに集結をし始めていた。

 

 

文「速やかに部隊を集結させなさいっ!今の音はここからそう遠くはありませんよっ!...ん?」

 

 

私の目の端に止まった、一つの槍。それを手に携えて、他の白狼天狗達と共に炸裂音が響いた地点まで急いで向かう。あの二人、無事でいるといいのですが...!

 

 

 

練也「脱皮しやがったか.....、ごほっ....!」

 

椛「.....今のは、一体....。」

 

 

私と練也さんの前には、先程の緑の妖怪とは違う容姿の妖怪が居た。赤と青の禍々しい色合い、頭にはクモを思わせる触角。そのひたすら禍々しい姿の見たこともない妖怪に対し、練也さんは”脱皮した”と言っていました....。もしや、脱皮というのは...一種の進化のことなのでは....。だとしたら、もう時間をかけるわけには....!さきほどから警報が鳴り響いているし、仲間を待つという選択も考えはしましたが...先程のあの攻撃...。

 

 

練也「...アラクネアワーム......!」

 

 

練也さんがその妖怪の名前を呼ぶ。その返礼とばかりに、その場に屈むように姿勢をとり次の瞬間に姿を消した。何が起こったのか理解が追い付く前に、私の前で練也さんが空中に弾かれるようにして吹き飛ばされ、更に滞空中にでも容赦なく彼に対して攻撃は浴びせられた。四撃程攻撃が命中すると、練也さんは地上へと落下しもがき、息を荒げながらその場に片膝を着き、再び姿を見せたアラクネアワームと呼ばれる妖怪を見据えた。

 

 

椛「練也さん....!!」

 

 

アラクネアワームがゆっくりと歩みを2人へ進める。まるで死への恐怖がゆっくりと近付いてくるように、その足音が段々と近付いてくる。練也はこの時、死を覚悟していた。クロックアップによる攻撃を受けた時点で並の人間であれば、一撃で普通死んでいる。だが早くも練也は、自身に身についた能力を応用した使い方により、辛くもクロックアップに耐えていた。

 

 

練也「(....なんとか、なったが.......。もうもちそうにない.....、だけど.....。)」

 

 

片膝立ちの姿勢で、椛の方を見る。彼女は戦わんと前に出ようとしている。....それに比べて自分はこの場であきらめてしまっている.....。”.....ふざけるな”。その場で力強く地を踏みしめて立ち上がろうと力を振り絞る。椛さんは間髪入れずに濃密な弾幕をアラクネアワームに放ち始めた。鮮やかな赤色の光弾が大量に放たれ、これも地しぶきや爆炎によって辺りは視認できない規模の攻撃であった。

 

 

椛「よくもっ!!」

 

アラクネアワーム「.........。」

 

 

弾幕を浴びせにかかる椛さんに、アラクネアワームは先程と同様クロックアップを使い姿を消す、次の瞬間には椛は吹き飛ばされていた。体に多数の痣を作り、地面をずり裂傷が出来ている。苦しそうにもがく彼女を見てたまらなく思った....。

 

“こんな時に敵を倒すのが、ヒーローなんじゃないか”

 

 

俺が望みさえすれば、運命が味方してくれるとは限らない.....。だけどその可能性が、ほんのコンマ1%でも残っているのなら.....。

 

 

練也「....カブトゼクター......!」

 

 

そんな声じゃ聞こえないだろう。もっと....腹の奥底から見えない何かを出すぐらいの勢いとパワーをひねり出して....。

 

 

練也「カブトゼクタアアアアアアッ!!!!」

 

 

俺は力を振り絞り、その場で大きな声を上げた。天高く迄響きそうなその声は、確実に力を求め発せられたもの....。それにこたえてくれるのは、何者か....。俺は賭けた、自らにベルトを託したその存在の力に。

 

 

椛「....練也....さん....!」

 

 

もがきながらその場に横たえつつ、私は突然咆哮するように声を上げた練也さんに顔を向けた....。叫び声が遠く残響となって聞こえる、その彼方から何かが近付いてくる....。千里眼の力を通して見れば、それは明らかに虫の形をしたものだ。それが何かを携えてこっちに凄い速度で迫ってきている....。.....もう目視で確認できる。ベルトを角に提げた、一匹の赤いカブトムシが上空から練也さんめがけてベルトと共に彼の下へ迫る。

 

 

椛「.....あれは....。」

 

 

彼は戸惑う間もなく手にしたベルトを装着して、片手にそのカブトムシをしっかりと収めこう宣言した.....。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

              練也「変身っ!!!」

 

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