この後すぐ
横になっていた姿勢から、ぱっと目を開ける。見覚えのある木目が露わになっている天井。ああ、確か妹紅と修行をして火傷を負ってから寝かされた部屋も、確かここだったっけ?なんか落ち着く感じがして、俺は好きだ。床は畳、その上にフカフカな床を敷いて誰かが俺を寝かせてくれたらしい。自分以外には、誰もいない。ぬえは、...帰ったか?ぬえも命蓮寺のことで何かお勤めがあるのかもと勝手に納得した矢先、襖が開かれそこからぬえが姿を見せた。
ぬえ「よっ、よう、...。平気なのか?」
練也「うん...。いたって落ち着いてる。痛みもない。」
ゆっくりと俺の側まで来て座るぬえは、そこへ俺が口を開くより先に少しバツが悪いという心境を露わにするように、ゆっくり口を開く。
ぬえ「...正直。やりすぎた、....ごめん。」
友達になってまだそんなに時間は経ってないものの、ぬえの素直な部分を垣間見た俺の心は勝負の勝敗以上に貴重なものを彼女の言の葉から得た気がした。永遠亭に運ぶ迄の間は、あんな無茶苦茶な言い振りだったのに...。
ぬえ「あの時、刺し違える気なんてお前が持ってるとは思わなかった。...だけど私みたいな妖怪相手に、最後まで戦い抜いた姿...正直かっこよくは見えたぞ...?」
練也「なんだよ、それ。...でも、俺もありがとう。勝負を受けてくれたのも、ここまで運んでくれたのも、ぬえだしね。感謝してる。」
ぬえ「...まっ、まあ...お礼を言われるほどじゃないけど...!」
真心を込めながら微笑みを向けて、彼女の目を見つめながらお礼を述べた。心なしか言葉に詰まり、動揺を隠している風を装い半ばそっぽを向くぬえ。それから軽く咳払いしながら、藪から棒に話を続ける。
ぬえ「...もう嫌になって来たんじゃないか?竹林の案内人と言い...半人半霊と言い...それから化けたヤツだけど、聖和尚とかの時も...。」
練也「.....。正直、命がいくつあっても足りないって、ちょっと前までは思ったりした...。だけど...。」
俺は身体を座前屈気味な姿勢から、ゆっくり立ち上がって縁側へと出る。外に見えるのは綺麗に手入れされてある庭に、放されている数多くのウサギ達。そしてその奥に広がる青い竹林。そのあとに少し離れて着いてくる、ぬえは俺の溜めた返答に続けて問う。
ぬえ「だけど...?」
練也「みんなが...近くに見守ってくれるなら。...俺は頑張れる。ぬえも、その1人だ。」
ぬえ「...。私も?火傷負わせたんだぞ、私なんか...。」
練也「全員が心のこもった言葉を、相手に向かって言えるわけじゃない。それが、ぶっきらぼうな言葉でもな。俺は...さっきの言葉だけで嬉しかったよ。」
ぬえ「....。ありがと。」
そのあとに、俺は竹林の上に広がる青空に向かって、静かに指を差しながら言葉を虚空に放った。
練也「"紫さんが言っていた。俺が臨みさえすれば...幻想郷は、絶えず俺に味方する。"」