白玉楼の台所に立つレプトーフィスと妖夢。なるほどこれだけ広い屋敷に対して無難な広さや内容の充実に、レプトーフィスは黙々と手に器具などを取り、質感を確かめつつ妖夢に言った。
レプトーフィス「...。道具が揃っているな、...流石だ。」
妖夢「ええ、まあ。ここは宴会にも度々使われる場所ですし、それ相応に賄いが出来るとは思いますけど...。」
妖夢が買ってきた食材に目をやるレプトーフィス、彼にもどうやら思うところはある様子。理由なく行動を起こしはしない、ワームとしてでも人間としてでもなく、もはやこの世界で生きていく"一存在"として、アリス邸で色々と感じたことも多いのである。
レプトーフィス「アリスが言っていた。"受けた恩には0を余計に付けて返してやれ"ってな...。」
妖夢「...アリスさんが?」
レプトーフィスは今の自分がワームの道からはもはや遠ざかり、遥か遠くの位置にいるのだと思った。レミリアにしろ幽々子にしろ、それを示唆する言葉を幻想郷の面々から投げかけられた彼の心の中にはもはや"佐藤練也の殺害"に対する関心は遥か彼方へ追いやられていた。手を洗い手にジャガイモを持ちながら、それを確認しながら妖夢へと声をかける。
レプトーフィス「...ふっ。やはり焼きが回ったか、俺も...。お前も薄々気付いていた様だがな...、俺の正体に....。」
妖夢「...やっぱり、貴方は練也さんじゃないんですね...。なんで幽々子さまや私に手を出さずしてこのような...。」
レプトーフィス「...そこらにいる血の気の多い妖怪と一緒にされるのは心外だな....。」
ジャガイモの皮を包丁で器用に剥いていくレプトーフィスを横に、妖夢はニンジンの皮を剥きながら会話を交える。
妖夢「貴方だって練也さんと同じ顔をしておいて、何であんなに違う雰囲気を漂わせているんですか...。こちらに敵意が無いにしても、あんなに掴みどころがないと気も抜けませんよ。」
レプトーフィス「俺の振る舞い自体は、普段と変わらん。...それに。互いに明確な脅威と判断したのであれば、俺たちはこの包丁を互いの首に向けている頃だろう...。」
妖夢「....(苦手だな、この人...。)」
淡々と会話を重ねながら料理をする妖夢とレプトーフィス。肉を切り、玉ねぎを切り調味料をそれらに注ぎ鍋に火を掛けて、しばしそれを見守る。不意に妖夢が口を開いた。
妖夢「もし、...貴方がこの世界に来ず、あちらの世界にいたままだとしたら...。」
レプトーフィス「...。アリスやシャンハイ、人形たちに会うこともなければ...。...そのまま真っ当なワームとなっただろう....。ワームは擬態した人間を殺して、その人間に代わる。....そういうことだ。」
妖夢「練也さんとも、私は会うことは無かった...。」
レプトーフィス「...そうだな。」
次回、東方外来人物語。