東方 外来人物語   作:佐藤練也

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第29話

太秦走馬が命蓮寺の聖白蓮との合流を果たした、その丁度同じ頃。

人里において騒ぎは終息したらしく、新たに現れた神社の存在がまず人里の住人に徐々に認知されるに至った。

これも上白沢慧音と、藤原妹紅の口頭による里人達への報告によってだが、それだけで納得するほど彼女達の人望はすごく高いらしい。

 

 

練也「あの、これは?」

 

慧音「何。私達が君に対しての無礼をしたと思ったのでな、ここは外の世界のものとはいえ、神の神聖な領域...。それを土足で踏み入るような真似を自警団の者達にやらせてしまった故の、せめてものお詫びの品と思ってくれれば良い。」

 

 

夜、外灯などが無く闇に包まれ静まり返った人里の外れ。

練也や擬態練也と共に外界から飛ばされてきた神社。

その境内には上白沢慧音が手に何やら着物のようなものを持って彼の下を訪れていた。

 

 

練也「...袴だ。それに足袋や草鞋も。」

 

慧音「ああ。神社で務める者にはピッタリな装束だろう。知り合いに手先が器用な者がいてね。無理を言って拵えてもらったんだ。」

 

 

萌葱色か、それに近い緑の中間色と言った感じの色合いの袴を慧音さんから受け取る。

一日足らずでこんな立派な衣料品を拵えるなんて、流石幻想郷...。

どうやら、慧音さんの話によればあの後自警団の中で少々話し合いがあったらしく、それで自警団代表として慧音さんがわざわざ夜の中、人里の外れまで出向いてきてくれたらしい。

妹紅は竹林の案内人の務めがある故、席を外しているとのことだった。

 

 

練也「いい肌触りに...いい香りがする...。ありがとうございます、慧音さん。こんないいものを...。」

 

慧音「礼には及ばないよ。...それよりも、明日に予定が無ければまた話し合いをしたいと思っている。キミにまた協力を頼みたいんだ。」

 

練也「ええ、喜んで。」

 

 

翌朝。

早速昨日拵えてもらった袴を身に纏い、玄関先へと出る。

元々神職ではなかった身の俺から言わせれば、このような着こなしは畏れ多いと言うか...、神主達がこれを着て仕事をしていたと思うと、やはりうらやましく思えた。

姿見で確認したけれど、普通の私服よかこっちの方が俺好みだな...。

 

 

【挿絵表示】

 

 

これからはお言葉に甘えて着させてもらうことにしよう...。

そういえば、神社ごと幻想郷に来てしまったのだから...、つまるところ俺は幻想郷に住む格好になっているのだろうか...?

神社ごととなってはもう俺が考えたところでどうにもなるまい、流れに身を任せるしかないだろうよ。

袴から漂う麻の香りがとても良い。

俺は幻想郷3日目の朝を迎え、ゆっくりと玄関の戸を開けた。

 

 

練也「...。」

 

 

神社の周りを囲むよう立ち並ぶ、数多くの杉の木の間から朝日が見える。

その場から歩き出すと、どこかで一番鶏が鳴き朝を知らせた。

チャイムでもなく、アラームでもなく。

全てが自然の流れで動いている。

この世界に俺は歓迎でもされているのかと、そう思える程快活な気持ちで朝を迎えることが出来た。

空気が美味しい、そう思いながら境内を歩く。

 

 

紫「おはよう...。」

 

練也「ぅおっ?!」

 

 

俺は驚いた。

驚かないのが、土台おかしな話にもなってくるんだろうが。

虚空に突然目玉だらけの不気味な空間が口を開けた、その先。

1人の金髪美女が、華美な服装を身につけ....多分着てるのはドレスだろ。

十中八九、この幻想郷において該当する人物など最早1人しかいない。

八雲紫が、そこにいた。

 

 

紫「ふふっ、驚かせちゃったわね...。」

 

練也「はっ、はぁ...。(ぶつかるかスキマに入るところだった...。)」

 

 

 

ホントに目と鼻の先に、その空間。

"スキマ"が生じ、そこから優雅な様子で地に降り立つ紫さん...。

その美しい紫色の瞳を薄らと開け、俺を見つめる。

 

 

紫「ようこそ、...幻想郷へ。」

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