虚空からいきなり生じたスキマ。
そこから優雅な様子で出でた紫さんの姿からは、強者ゆえの余裕と言うか、それとも妖怪の賢者と言うに相違無いカリスマ....。
そういうものを感じた。
なりは人間の形をしちゃいるが、その次元を飛び出ているモノがある。
だってそうだろ?スキマって何、いきなり空間に穴開けれる人なんて常人じゃないでしょ?人?そもそも違うわ、人間じゃなくて妖怪だよ。
練也「....八雲.....紫....さん....。」
紫「初めまして、外来人の殿方....。....名前を知っているというのも、助かるわね。自己紹介の手間が省けるわ。やっぱり、外の世界では私達の世界、存在は認知されているのかしら....?」
突然の遭遇で声を失った。
無意識のうちに出たその彼女の名前が、自分の前に居るものが何者であるのか、俺に認識させようとしている。
幻想郷最強の実力者、その存在が俺の前にいるのだと。
紫「そんなに身構えなくても良いわよ。私は”貴方達”に用があって来た....。」
練也「達....?俺は、今1人ですよ?」
紫「どうかしらね....?まあいいわ....。本題に入らせてもらうから、貴方は私の話を黙って聞けばいい。良いわね?」
うなずくしかなかった。誰もいない、神社の近く。
メインストリートからも外れた小路で、妖怪の賢者からの言葉を俺は聞き入れた。
ここは人里の筈なのだが、昨日にぎわっていた雰囲気とは一変。
重苦しい雰囲気が、俺の上に乗っかってくる....。
紫「まず貴方に伝えることは2つ。....”今回の異変に積極的に関与すること”....。そしてもう1つ。....”この幻想郷に害を及ぼす真似をしないこと”。」
練也「.....。」
紫「”この幻想郷は、ありとあらゆるものを受け入れる”....。覚えておきなさい。貴方の辿る運命が如何なものだろうと、それさえも受け入れるということをね....。」
練也「....はい....。」
言葉の一言一言、ちゃんと言霊が詰まっているように俺は感じた。
人やそれ以外の声や言葉を発する者には、すべて言霊が宿るという話をどこかで聞いたことがある....。
次いで紫さんは、何やら数枚のカードをスキマから取り出し、受け取るように俺に催促した。
黙って彼女に近づきそれを受け取る俺の手には、黒に縁どられた白一色のカードが。
練也「...これは....もしかして、スペルカード....!」
紫「そうよ....。貴方達の役に立つはずよ、せいぜいがんばりなさいな....。」
そう言った後に紫さんは再びスキマを開き、そこへ入って行く。去り際、スキマが閉じる前。彼女は俺に微笑を向けているようであった。