妖夢が宴会の酒肴をこしらえ始めた。
時間にして、昼の15時あたり、まだ太陽が地平線には沈まない時間。
吐く白玉楼の厨房にて軽快に響く包丁の音、火を起こし何かを鍋に入れて炒めている音など、調理をしていると容易に想像できる音が聞こえてくる。
幽々子「妖夢ー。宴会の支度はどうかしらー?」
そこへふわりというか、まるで浮遊しているかのように優雅な佇まいの美しい女性。
桃色の頭髪に特徴的な帽子を被った、白玉楼の主にして冥界の管理者。
西行寺幽々子が、厨房の出入り口から顔を覗かせていた。
妖夢「そんなに早くできませんてば....。良いからおとなしくしていてください、摘まみ食いなどもってのほかですよ。」
幽々子「むう....。妖夢の意地悪....。」
妖夢「意地悪なんてしてないじゃないですか。第一なんで今回宴会の会場が博麗神社とかじゃなくて白玉楼なんですか?」
幽々子「だってあそこまで行くのは怠いでしょう?だから頼んでウチにしてもらったのよ。」
妖夢「それじゃあ私が片付けの手間を負うじゃあないですか....。」
幽々子「それが貴女の務めではなくて?」
妖夢「いい加減度が過ぎますよ!?」
私は前の前辺りで催された宴会で盛大に酒肴などをふるまった時のことを、思い返していた。
そう、忘れもしない。
鬼の方々が酒の入った勢いで、力比べをすると言って白玉楼の庭園を荒らしたり、もちろん白玉楼の庭師である私が復旧作業をすることになったり。
それに加えて大宴会、その場に食べ散らかった食べ物の残骸や、大量の食器を洗うという手間。
誰も手伝わずに帰ってしまう、はあぁ...。
だから宴会自体私はあまり受けたくはないのですが...。
妖夢「霊夢のところでやる時には、私は時々手伝うのに....。これじゃあ不公平じゃないですか....。」
幽々子「まあまあ...、良いじゃないの。今宵は新しい御客人も来るみたいよ?」
妖夢「新しい御客人...ですか?」
所変わり、アリス邸。
擬態練也。彼の視線の先には、1つの大きな倒木があった。
その倒木を見据えていた彼は、手を前に振りかざす。
手を振りかざした瞬間、目標の前方の倒木へか細い糸のようなモノが放たれた。
アリスの扱う、ドールワイヤーである。
アリス「......。」
私は今、彼にこの世界での戦い方を教えている。
いまだに彼の目的は何なのかは聞き出せてはいないけれど、何か事を起こすこともない様子だし....。
しかしどのようにして、私が使っているドールワイヤーを....。
......?あの使い方から見るに、どうやら相手を拘束する為に扱うみたいね。
擬態練也「.....!!!」
思った通り、彼は倒木を拘束した。
私が扱うドールワイヤーには特殊な鋼製繊維が使われている為、生半可な力では破壊は出来ないようになっている....。
倒木を雁字搦めにした次は....、なんと自らの剛腕とドールワイヤーの頑丈さを利用して、引き寄せるような動作をして倒木を圧迫。
ミシミシと音が倒木から聞こえ、それが敵を締め上げて攻撃する動作というのが見て取れた。
擬態練也「ふんっ....!」
一挙に引っ張る。
それで倒木は、一気に避けて分割された。
本来の用途とは異なるが、この使い方も悪くはないかもしれない。
人形はまだ彼には使いこなせないかもしれないけれど、怪物である故の持ち前のパワーと鋼製ワイヤーの相性は良い。
アリス「凄いじゃない、練也。ドールワイヤーをこんな風に使えるなんて。」
上海人形「シャンハーイ♪」
擬態練也「ただ力を加えたにすぎん....。....だが、戦いを進めるうえで優位に立てるかもしれんな....。」