もうすぐ、宴会が始まる。
そんな時間帯、人妖諸共街中へ躍り出ては酒を飲み始める。
外界では想像もし得ない光景が、この世界の一角で今宵見られることだろう。
練也「やっぱり夜になれば一気に暗くなるな。」
妹紅「当たり前だろ?ここいらじゃ明かりなんてものはないしな。」
慧音「しかし、妹紅から話を聞いた時は心配してしまったよ。ただの外来人相手に何をするのかとな...。」
妹紅「私は、練也の頼みを聞き届けた迄だ。本人に聞いてみればいい。それは酒が入ってからでも良い気はするがな。」
練也「ああ。命の危機を感じたことはともかくとして、...俺にとってこれ以上有意義な体験は無かったよ。」
暗闇に目が慣れてきた。
外の世界のようにスマホに向かい睨みを利かせることなく、そして街灯が点かない暗い夜道がこの世界では当たり前にある。
であるが故、本来の慣れる速度へと徐々に体が適応していっているように、俺は感じた。
いい意味で外の世界から離れて行っている、それが身体の為になるというものだ。
妹紅「慧音にも今度見せてやれば良いさ、お前の弾幕。いや、スペルカードを。」
練也「そんな見せるようなものじゃないさ。それに、来てまだ1年と経っていないんだ。」
慧音「良いじゃないか。私も話を聞いて気になっていたんだ。是非機会がある時にでも頼むよ。」
練也「外来人に何を期待しているんだ....。」
そうこうしている内に白玉楼へ到着する、いや普通に言っているがクソ長いからな?
普通に着きましたとかじゃ言えないから、あの階段の長さ。
そこで出迎えてくれたのは、紛れもないあの魂魄妖夢。
整った白髪の前髪ぱっつんの古典的なおかっぱと言われる古き良き髪型に、淡い緑を基調とした上着にスカート。
落ち着きの中に快活さを内包しているその印象は、まさに見かけと同様の年齢と言えるだろう。
彼女が軽くお辞儀をすると、白玉楼の門を快く開けてくれたのでこちらも挨拶を返す。
妖夢「貴方は...。初めて見る顔ですね。」
練也「ああ。この度幻想郷の住人になった者で、佐藤練也って言います。どうぞ、よろしく。」
妖夢「ご丁寧にありがとうございます。それでは、このままお進みください。ようこそ、白玉楼へ。」
開放された重厚な門戸の向こうへ誘われるようにして、中へと入る。
既に賑わっているのか、遠くの方からは女性がはしゃぐ声が聞こえてきた。
慧音「先客が既に酒宴を始めているようだな。」
妹紅「私達ものんびり始めるとしよう。」
3人で道なりに進めば、そこには酒宴会場が設けられていた。
屋内と屋外にブースが設けられ、屋内には演台のようなものと畳の上には置かれた座り机に沿って、色とりどりの料理が所狭しと並べられている。
そとには桜並木に沿って敷物が敷かれており、その上にて談笑する者もちらほら。
???「おらぁもっと呑みなよお!まだ宴は始まってないんだよ??!」
椛「もっ、もう勘弁してくださいいいぃ...。」
先客と思われるその御仁に、椛さんが絡まれ、もとい酒を勧められていた。
白目を丸く剥きながら、口からは何か泡を吹き意識はもうろうとしている様子。
こういう一面も幻想郷にはあるのだなと、おれは静かにかつ小さく椛さんに手を合わせた。
そうしているうちに、慧音さんと妹紅は場所を見つけたようなので、俺もそこへ行くことに。
足を運ぶ途中、おそらく先程の御仁に呼び止められる。
俺は知っていた。
頭部に生やした2本の角、ノンスリーブの上着、膝丈まであるセミロングスカート。
腰に巻き付けてある鎖に、常時持ち歩いているであろう頭程の大きさのある徳利。
そして茶髪のセミロングヘアー。
萃香「あんた最近来たっていう外来人?」
練也「ああ。初めまして...。佐藤練也という。(伊吹...萃香。酒呑童子...か。)」
その語気に圧倒されそうになるが、なんとか堪える。
これが鬼という存在なのか、味わうことのなかったその存在感。
如何な敵もその天下無双と言われた怪力で、地へ平伏させ叩き潰す。
そのような印象を抱いていた。
萃香「ふーん。後で面貸しなよ。」
練也「悪いが後でな。」
顔の向きを変え、再び妹紅や慧音の下まで行くと、ゆっくりと腰を下ろす。
妹紅「萃香に絡まれたか?」
練也「いや...。とりあえず、あとで出向くよ。」
それから酒宴が幕を開け、宴は盛況なものとなる。
誰の挨拶もなく始められたこの宴は、普段以上に盛況なものになっていた。
なんせいつもの宴会とは違う、新しいゲストが3人もこの場に居るのだから。
紅魔館組、命蓮寺組、人里組の3組に何か的が絞られている様な感じが、その3人には感じ取れたことであろう。
練也「(これは....。)」
れんな「(なにか....。)」
走馬「(嫌な予感がする....。)」