練也「これは...間違いない。俺の槍だ...!」
名の無い槍、というわけではない。まだ名を知らぬだけ...。両柄の先端に煌めく、上鎌の形の十文字の刃。その刃の根本には電流が迸るが如く黄金に輝く装飾があり、それが両側から黒い鉄拵えの柄の上を伝い中央に向かい伸びている。
妖夢「迷いの竹林に置き忘れたと、白兎の方々が宴会に参加するがてら持ってきていただきました。」
幽々子「あらぁ...こんな物も、外の世界にはあったの?驚いたわあ。」
練也「...。ウチの神社の宝物庫に眠ってました。それをひょんなことから、俺が握ることになってしまって。...だけど、握ってみると。...かなりしっくり来たんです。」
白玉楼の庭園に出る両者...。俺と妖夢は、程よい位置に陣取り互いの瞳を見据えた。....先程の和やかな雰囲気とは一変、急にピリついた感じの空気が辺りを覆う。桜の花弁が何もしていないのに、散ったそばから裂けそうなそんな場の雰囲気だ。手に汗握る、その場の雰囲気に飲まれまいと、目を閉じてから再び妖夢の目を見る。どこまでも澄み切った、澱みのない、迷い無き瞳がジッとこちらを見据える。それに答えるように、右手に槍の柄を握り妖夢に向かいお辞儀をする。妖夢もそれにお辞儀で返すと、互いに構えに入った。
練也「.....。」
妖夢「.....。」
握っていた柄を持ち替え....、上段の構えに入る。槍を斜に構え、半身の姿勢に。対して妖夢は、正眼...いわゆる中段に太刀を構える...。あの長い刀身は楼観剣、白楼剣と対になる妖夢が帯刀しているとされる太刀である。あらゆる迷いを断ち切るその刀は美しく、舞い散る桜を刀身が鏡として写している。
......静寂が、...しばし流れ。
幽々子「始めっ!」
練也「ぃいいいいいやあああっ!!!!」
号令が響く。裂帛の気合い、いの一番にと突っ込み、その姿勢は前のめりに妖夢へと急速に接近していく。俺は同時に上段に構えた十文字槍を勢いつけて前へと突き出した。刺突を繰り出し、そして虚空を掠めた。妖夢はその身を逸らしたのみ、その軌道から外れている。すぐさま斬り返しがきた。首元に横一文字、それを身を逸らすことにより回避したのちその場にて反対側の刃を使いすぐさま刺突を試みる。しかし、それも体捌きのみ。上体の操作とわずかな足捌きのみで避けられる。無理矢理槍を腰に据えて身体を回転させての遠心力を伴った横薙ぎの一閃を、妖夢へと見舞い間合いを離させる。
妖夢「....なるほど。やはり槍の心得はあるようですね。」
練也「少しは俺だって稽古をしたのさ...。」