練也「.....。」
どうやら投げ飛ばされた衝撃で、壁を突き破って別の部屋へと来てしまったようだが.....とりあえず....奴が来る前に何とか宝物庫から抜け出さないと....。砂埃が舞っている中、痛みに耐えながら俺はゆっくりと立ちあがった。
練也「.......?」
宝物庫の中にはいろいろな年季を感じさせるものが、数多くある。その中でも目を惹くものが、彼の目に飛び込んできた。それは人の身の丈を超えて、大体長さが2m少々程あるものとわかる。布に覆われていて全容は見えないが、長い棒のようなものという感じがした。
覆われている布に手を掛ける、掌にちゃんと収まる柄、握ればしっくり来た。
???「......くたばり損ないが。」
練也「?!」
先程の攻撃で仕留めていてもおかしくはなかった筈...。だとでも思っているのだろう、その自分自身を一目見る。その目つきは先程より鋭く、次は必ず仕留める気で来るものと考えるのは馬鹿な俺でも容易に判断できたことであった。この得物にかけてみよう...。そう思い布を一気に引っぺがした。それは一目見れば明らかに何であるか解る、そこには槍があった。漆黒に塗られた両柄の末端には煌めく刃を持ち、形は十文字槍。その刃の根元には、まるで稲妻が走るが如く金の装飾が施されていた。再び手に持てば、やはりしっくりくる。
???「人間風情が槍を持ったところで....。」
練也「.......。」
槍を持ったまま、その穂先を俺は敵に向けた....。これ以外に武器を探す時間もない。それに何より......、この槍を持っていい気がした。その自分の直感に従うことが、今の自分にとって1番の最良の結果になると思えた。ふと思い立ち、自分のポッケに再び手を通す。そこにはあの丸薬があった。俺は、”自分に秘められた潜在的な力”にかけてみることにした。ポッケから取り出した丸薬を迷わずに、ゴクンッと音を立てて勢いよく飲み込んだ。瞬時に広がる苦みに、顔をしかめる。
???「....死ね。」
一撃を持って、殺しに来る。自分自身がその拳に力を注ぎ、自身の頬へ拳をめり込ませるところで、俺は先程から感じていた身体の熱や、呼吸の苦しさなど気にするほどではない。そう言った規模の現象が起きた。持っていた槍を突き刺すところではあるが、そこをあえて拳を使い反撃する。”その拳から、見えない何かが発せられた。”それと拳の力が敵に浴びせられ、宙を舞い壁に叩き付けられた。
練也「......なんだ、今の....!」
偽物の自分を吹き飛ばした俺の拳を見ても、何の変化も認められない。先程の身体から立ち昇っていた白煙も消え失せていた。体温も正常、この力は何なのか俺にはわからない。だけど、今目の前にある脅威を”吹き飛ばす”には十分な力だということはわかった。
???「.......生意気な....。」
その場から立ち上がると、敵は俺を見るなり握り拳を作り身体を力ませ始めた。何が起ころうとしているか...。.....いやな予感しかしないぜ、この溜め方は.....。見る見るうちに、奴の身体に変化が起きる。体表に歪みが生じた刹那、緑色のオーラを帯び始め次いで現れたのは、紛れもないワーム蛹体の容姿その者。
ワーム「人間ごときどのような術を使ったか知らんが......これで終わりにしてくれる!!」
練也「......そんな、ワームだと....!!?」
俺が驚く間に、攻撃は始まっていた。一瞬で姿が消えたと思いきや、痛みと共に俺の身体が宙へと浮く。ワームのクロックアップが発動したのだろう。クロックアップとは、自身の時間と敵の時間の速度に差異を生じさせる力、つまり超スピードで敵に対して攻撃できる技と思ってくれれば良い。それを受けているのだからたまったもんじゃない。
練也「.....ぐっ......!!」
ワーム「今度こそ....最期だ!!!!」
ワームが俺に対して、近寄りその禍々しい腕を俺に振り下ろそうとする瞬間に、身体の内から湧き上がる、急激な熱を俺は感じた.....。身体の内側から一挙に外へ出ようと必死に何かが駆け巡るが如く、その感覚に間違いはなかった。自らを中心として起こる微細な振動、その後に最早想像もしないことが起きた。
練也「ああああああああああああああっ!!!!!!!」
その場で咆哮を上げた。その咆哮に呼応するようにして、体内から不可視の波が体外に向けて全周囲に放射される。その波に巻き込まれたものは、土煙に巻かれるだけではなくその場から跡形もなく消え去っていた。