アリス「...練也....。」
雨の当たらない東屋にて休息をとる、アリス、椛、文の3人。外の雨は段々と小雨になりつつあり地を跳ねる飛沫も弱まる一方、アリスはびしょ濡れの衣類を身に纏ったまま身体を震わせていた。シャンハイ人形も身体を震わせながら、アリスに寄り添う。
文「アリスさん、大丈夫ですか?」
アリス「えぇ....大丈夫....。」
手拭いで顔を拭こうとする文の手を、声で制した。心ここにあらず、アリスは自らの身より擬態練也の安否を気にかけていた。先程の戦い。弾幕ごっこもヒートアップしてしまえばただの殺しになるかもしれない、だけどあれはもはやその領域に最初から達している。あれほど激しい戦いをやって、最後にあの爆ぜて消し飛んでしまったような消え方をした擬態練也の身を、彼女は案じていた。
椛「大丈夫ですよ、アリスさん。私の千里眼で、お2人はちゃんと見えていましたから。炸裂したのはスキマの中に入ってから、おそらくあの空間の中では無事でしょう。」
アリス「...。」
文「どうやら戻ってきたみたい、ですね。」
虚空から複数の目玉がこちらを覗くスキマが姿を見せて、そこから練也と擬態練也が順番にゆっくりと地面に降り立つ。その姿を見て、アリスは小走りで擬態練也へと近付いて行き...。
練也「.....?(...やっぱり、何か関係があったのかこの2人には。)」
びしょ濡れのいつもの装いを着たまま、歩いて擬態練也の前まで来ると少しの間隙を空けた後、アリスは擬態練也の頬を平手で打った。練也は、その場に面食らった様子でその光景を凝視してしまっていた。
アリス「....貴方、どれだけ心配かけたかわかる?!!」
擬態練也「目的の為に動いたに過ぎん...、現に殺し損ねてしまったが...。」
また大きな音がその場に鳴る。雨は止み、アリスの頬を伝うものの中には雨水以外のものが流れていると解るのは容易であった。擬態練也も同じような様子で、涙を零すアリスの表情から目が離せない。
アリス「貴方の身体だけじゃないことをいい加減理解しなさいよ!!貴方の近くで生活していた私達が過ごしていた日常は、まさに貴方がいることで成り立つものなの!貴方、...もしその日常の中で姿を消したらそれがどうなるかわかってる!?穴が空いてしまうのよ、大きな穴が!貴方が入っていた部分から貴方が消えてしまったら...それを残された私と人形達でどう埋め合わせをしろって言うの!?」
擬態練也「人形ならば何体でも作って埋め合わせをすれば良い...。」
また大きな音が鳴る。擬態練也の頬にはアリスの手形がクッキリと残っていた。
アリス「私は...貴方の目的がわからなくて初めは不安だったわ。だけどその不安の中でも貴方はすごく誠実に動いてくれる...私はそれが嬉しかった...。些細なことが積み重なっていくと、生き物というのは気を許していけるものだと、...改めて感じたわ。ここまで来たら、貴方が実際本物か偽物かなんて関係ない!貴方は貴方!私にとって一緒に居たいと思える、居候の怪物の貴方なの!」
擬態練也「.....何を言いたい....。」
アリス「命を危険に晒さないでと言ってるの...。また命の危険を犯す時があるなら...その都度引っ叩いてあげるわ。....死なないで...。」
そう感情の溢れてくるがままの言葉を言って、アリスはその場から飛び去って行ってしまった。それを見て、見送る一同。
練也「...。」
擬態練也「....命拾いしたな。"オリジナル"。」
そう言って、擬態練也はその場から消え去った。