魔法の森の近く、そこにはある一軒の雑貨屋か萬屋か、年季の入った建物が建っていた。その建物、名を香霖堂という。その香霖堂の前に、魔女の風貌をした少女。霧雨魔理沙が静かに箒から地面へと舞い降りた。
出入口には"準備中"と看板が掲げてあるが、お構いなしにドアを開けて中に入る。
魔理沙「おーい、香霖ー。いるかー?」
霖之助「いるが今は営業時間じゃないんだ、もう少し待ってから来たらどうだい?魔理沙。」
魔理沙「そんな固いこと言うなよ。私達はアレだ、竹馬の友ってやつ?そう言う仲じゃないか。」
霖之助「親しき仲にも礼儀ありという言葉を知らないのか君は。」
僕は森近霖之助、この香霖堂の店主だ。水妖バザールから空けて数日後のこと、香霖堂へ魔理沙が訪ねて来た。なんでも少し前に弾幕ごっこをした相手の力で、八卦炉が機能しなくなったと僕に修理を依頼していたのだが、今日がとりあえずその修理依頼終了予定日だから来たというわけだ。にしても、もっとのんびり来ても良い気はするが...。いつのまにかお茶を淹れ始めるし、それは商品だ。君の為に用意したものじゃない。
魔理沙「それで?私の八卦炉は治ったのか?」
霖之助「ああ。中の部品はほぼ形を留めてはいなかったから...全て交換ということにはなった。部品の替えがあって良かったよ、どうやったらあんな凄い状態までに出来るんだろうな...。」
魔理沙「形を留めていない?どういうことだ?」
霖之助「コレを見てくれ。」
壊れた部品をいくつか魔理沙に手渡す。八卦炉がマスタースパークやブレイジングスターを繰り出す際に駆動する内蔵されたジョイント部などが、焼き切れ融解してしまっている。それを見て驚く魔理沙は、続けて僕に質問する。
魔理沙「もう溶けちまってるじゃんか、これ...!...でも、私がマスタースパークやブレイジングスターをやったりしても早々にこんな状態にはならないぜ、香霖?何発かまそうが、私の八卦炉にこんな現象は起こったことはない。」
霖之助「君が戦った相手が、原因かもしれないな。内部からの膨大な熱に晒されたとしても、この八卦炉は壊れないように出来ている。考えられるのは外部からの過度な加圧、...そして不特定多数の要素だ。」
魔理沙「ふ〜ん...。まっ、八卦炉は治してもらったのが何よりだぜ。ありがとうな、香霖。」
霖之助「礼には及ばない。それよりもっとも、キミには慎ましさを学んでもらいたいものだね...。」
魔理沙「はいはい...。」
そう言いながら、魔理沙が淹れた紅茶をゆっくりと啜る。コトンッとテーブルにティーカップを置き、近くにある新聞を手に取った。そこの見出しにデカデカと書いてある記事に、彼女は凝視をしながら僕に声をかける。
魔理沙「香霖!コイツだよ!」
霖之助「いきなりどうした?」
魔理沙「ホラッ!」
そう言って記事を見せる魔理沙、そこには2人の特殊な甲冑とは違うが何かそれを想起させる風態のモノに身を包み激しく戦っている写真が、掲載されていた。記事のタイトルは、"玄武の沢にて激戦、外来人同士の決闘!""稲妻纏う一蹴必殺の技、炸裂!その威力とは!"...なるほど。魔理沙が言っていたのは、この彼等のうちのどちらかだろうな。