ウィンプの日常   作:Almin

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調味料って大事。




はじめてのひとふり(塩)

「もういやぁ」

 

叱責(めっ):個体名称:ウィンプには依然としてゼリーマテリアルの摂取が急務です」

 

「ごんなのだべものじゃないわよぉおお……」

 

妥協(しゃーねーな):……」

 

 

◆◆◆

 

「えらいぞーエムル」

 

「あの蛇さんは大丈夫ですわ……?」

 

「サイナも流石に同じ轍は踏まないと信じているよ」

 

「あっ、あんたっ、ま、まってたのよ!」

 

ブリュバスから出たところで、ウィンプがこちらへ走ってくる。サイナを一瞥するが、どうやら訓練中でも食事中でもなく、休憩の最中だったようだ。

 

「ちゅうりきゅぐをかいなさい!」

 

「説明:ゼリーマテリアルの摂取に伴う精神的苦痛の軽減策として、原始人類が用いる加熱による物質の変性技術を提案しました。」

 

ああ、ちゅうりきゅぐって調理器具のことか。

 

「まあそれは構わんが……特訓の方は?」

 

解説(察しろ):モチベーションの向上が最優先と判断。」

 

「いいぞサイナ。インテリジェンスな判断だ」

 

歓喜(やったぜ):契約者もインテリジェンスを理解されたようですね。」

 

「?? 何の話ですわ?」

 

「お前にはもう一往復してもらうってことだ。ほら、ピーツんとこで品物漁るぞ」

 

「んー、よく分かんないけど分かったですわ!」

 

 

◇◇◇

 

「ぽんこつー、これなによー?」

 

警告(おいマテ):再度その呼称を用いた場合、訓練負荷を3割増しにします。それはチュウカ鍋と言い、食材を入れて加熱調理するものです。」

 

「……じゃあ()()()、こっちは?」

 

「確認:その呼称は?」

 

「あいつがそうよんでたじゃない」

 

「……説明:それは包丁です。食材を細かくし、咀嚼回数を減らすことが可能です。」

 

「……」

 

調味料一式を持ち上げて見せる。

 

「説明:右から胡椒、塩、砂糖、酢、――データベースを確認――神代に僻地で用いられていた発酵調味料の味噌、及び醤油に類似するものと推測。」

 

「どうやってつかうの?」

 

「確認:調理時に食材に加えることで風味を追加します。」

 

 

「……」

 

「提案:取り敢えず調理してみては?」

 

「……やってみる」

 

 

でっかいくものぜりー?をちいさくきって、ちゅうかなべ?にいれる。

 

これをひにかけるのよね。ひ……?

 

あ、さいな、つけてくれるの?

 

「って、なにしてるのよ!」

 

疑問(は?):これは|当機に現存する燃焼現象を誘発可能な唯一の装備《ジェットスラスター》です」

 

「それしかないの?」

 

肯定(そうだよ):最低出力でも余波により熱傷の危険性があるため退避を推奨」

 

「いわれなくてもどくわよ!」

 

 

◇◇◇

 

「これくらい?」

 

「確認:加熱時間に不足が見られます。30秒ほどの追加過熱を推奨します」

 

「あんた、おもったよりべんりね」

 

ちょっと!むごんで手をふりあげないでよ!ほめたのよ?!

 

「……確認:十分に加熱されたかと」

 

ほんと?

 

「じゃあおさらに出して……サミーちゃんありがと!」

 

皿に盛られたソレは、一見すると炒め物のように……は見えない。熱で凝固されたナニカの集合体、直訳するとそうとしか言えないだろう。

 

「いただきむす!」

 

「訂正:」

 

「あー、もう!いただきます!」

 

そのナニカ――アーミレットガルガンチュラのゼリーマテリアルのサイコロステーキ――がウィンプの口の中に入れられる。

 

モグモグ……

 

確認(おい):調理は成功しましたか?」

 

ゴックン。

 

「……おいしい」

 

「すごくおいしい!」

 

流し込むだけだったゼリーマテリアルには噛みごたえが生まれ、調味料によって加えられた塩味と香辛料により、生臭さは軽減された。

 

地上の料理とはとても比較できない出来ではあるが、ことこの領域においてはこれが最良。

 

「安堵:好きなだけ摂取しなさい。ウィンプ。食事後は訓練の続きを行います」

 

「えー……」

 

「訂正:新たなゼリーマテリアルを確保すれば、調理並びに他の調味料を試すことが可能です」

 

「んむむむむ……」

 

「追記:マスターの用意した器具を用いれば、他の調理方法も試行可能です」

 

「や、やる!」

 

承認(よっしゃ):では速やかに訓練を再開します」

 

 

 

◇◇◇

 

「うぇえ……そんなの食べてるんですわ?」

 

「これしかないのよ。それにおいちいわよ。みそあじ」

 

「なんか不憫ですわ。にんじん食べてみるですわ?」

 

「え?!いいの?!」

 

ぱくり。

 

「忠告:火を通すことを(すい)し……遅かったか」

 

「うぇえ……でもくもよりはおいしい」

 

ひさびさのはごたえ……

 

「にんじんはそのままでも美味しいし、パフェにするともっと美味しいですわ!」

 

「提案:パフェには材料が不足しています。まずはゼリーマテリアルと炒め物にしてみては?」

 

「いや、それは不味そうですわ」

 

ならあんたもたべてみるのよ!

 

「あっ、なにをするですわ……むぐむぐ……」

 

……

 

「思ったより食べれるですわ……」

 

でしょ?!

 

「でも、このぐにぐにした食感ににんじんを入れても微妙な気がするですわ。付け合わせにした方が美味しいと思うですわ」

 

「つけあわしぇ?」

 

「提案:この場合は炒め物に混ぜるのではなく、別で調理して炒め物に添える、と言うことです」

 

「そうなの?」

 

更新:(であれば)当機はグラッセにすることを推奨します」

 

「グらッセ?」

 

「あ、それ知ってるですわ!甘く煮たやつですわ!」

 

「さとうをつかうのね」

 

正解:(よくわかったな)早速調理しましょう」

 

 

◆◆◆

 

ちょっとヘマしたな。領地の境目は把握してたんだが、気にしすぎて動きが鈍っちゃ元も子もない。

 

ブリュバスを出て再挑戦……と言うところでなにやら騒がしいことに気付く。

 

「なにこれぇ……ものすごくおいしい!」

 

「ちょっと甘過ぎだけど美味しいですわ!」

 

「肯定:ここまで甘いとお菓子の類いですね」

 

「ん?お前らなにやってんの?」

 

「サンラクサン!食べてみるですわ!」

 

「お、おう」

 

どうしたんだ?いったい。

 

わー、こりゃニンジンだな。エムルが持ってきたやつを煮たのか。

 

そういえばゼリー対策で料理してるんだったか。

 

「……ん。結構いけるな。うまいじゃん」

 

「ほんと?」

 

美食舌のお陰で、これが甘いことはわかる。味覚に制限のあるプレイヤーでこれってことは、実際はかなり甘いんだろう。

 

「少し甘過ぎる気はするが、グラッセならアリの範疇だろ」

 

 

◇◇◇

 

「……というケイイよ!」

 

「グラッセが俺たち(プレイヤー)にも甘く感じるのはそういうことだったのか……」

 

「ってことは、この塩入れすぎました感のある煮魚も?」

 

「……そっちはただのいれすぎ」

 

 





マスター「調理の際はちゃんと味見してください」

ウィンプ「したわよ」

マスター「……開拓者の方々以外にはソレはお出ししないように」
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