サムライドライバースクール   作:あややや

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読んでくれる人がいるなら続けます。推敲なんてしませーん。


第1話

父から車をもらった。

 

夜中に一人でガレージを開けて三台並べて置いてある内の

 

真ん中の運転席の取っ手にキーを挿す。車内はどことなく

 

年季の入った感じがする。実際古いものなのだろうけど知

 

識もない俺にはそんな感じがするだけだ。ハンドルは軸が

 

金属部分の露出した造りでたまに乗せてもらう大学の友人

 

の車のどれとも違う。座ってみてわかったが足元の奥行き

 

が広く、視線が普段乗る機会のある車より一段低く感じた。

 

免許は持ってはいるが実際の運転経験がほとんどないペー

 

パードライバーの俺からするとキーを挿してエンジンをか

 

けるだけでもそれなりに緊張した。エンジンがかかった後

 

も回し続けたら、なんか俺にはよくわからない機器に負担

 

がかかって爆発してしまうんじゃないかとか、流石にそれ

 

はないだろうとか思いながらもやっぱりどこか不安があっ

 

たりなかったりする。それは、街中にだいぶ普及してきた

 

ように思われるハイブリッドカーや電気自動車のような静

 

かなエンジン音ではなく無骨な、燃費の悪そうな轟音を夜

 

の住宅街に響かせてしまったからな気がした。

 

クラッチを踏み込んで恐る恐る戻していき、合わせてアク

 

セルを踏んだ。ゆっくりと車体が進んでいく。車庫をでて

 

住宅街をノロノロと這うように抜けていく。やっと国道に

 

出てるとそこで初めて人並みに(というか法定速度くらいに)

 

スピードを出した。ギアは2速から3、4と上げ、5速に入れ

 

る。田舎の国道は道路が広いだけで深夜にもなると車通り

 

なんてない道がほとんどだ。この通りは以前から練習に使

 

うつもりで目をつけていた。10分ほど走ってみても俺のほ

 

かに車もなく緊張も落ち着いてきて代わりに少しだけ余裕

 

が出てきた。タイヤが地面を絡める振動が気持ちいい。そ

 

れから20分程たったところで一本脇の県道に入って目につ

 

いた自販機の傍に停車することにした。お茶を買って半分

 

ほど飲んだところで再出発しようととギアをローに入れ

 

る。ハザードを消して右ウィンカーを上げてアクセルを踏

 

んで、車体が動き出した。父が言うには「そんなもん最初

 

っからセカンドでいーんだ。教習所で習ってたこと一々鵜

 

呑みにしてんな」ということだがペーパーの俺には教習所

 

の教官の教えが全てだった。おぼつかない手つきで運転し

 

ていたがやっぱり何回かエンストになりかけた。なっては

 

いない。女の子でも隣に乗せていたなら、まぁ文句言われ

 

ててもしょうがない。ただ俺的にはエンストさせずに運転

 

できただけでも上々で、自分を誉めてやりたい。お疲れ

 

俺。夜中の点滅してる赤信号でも一応停まる。

 

ぎ、どっどど。おっとまたエンストしかけた。危ない危な

 

い。発進した時だった。

 

「……お前運転下手すぎるだろ」

 

「……何?」

 

「ガタガタガタガタ、すぐ止まりかける。乗ってるこっち

 

の身にもなってみろ」

 

「こっちは自車校でてからほとんど乗ってないんだけど」

 

「それにしたってお粗末じゃないか?父親とは大違いだな」

 

「いや一緒にすんなよ!あっちは何十年乗ってたと思って

 

んだ?しかもこれ大分古い車だろ、ムズいんだよ」

 

「そんな大声出すな。本当のことしか言ってないだろ」

 

語調が強くなった。それはそうだが必死でやってたことを

 

いきなりバカにされたらそりゃムカつくだろ。

 

「……てか誰だよ」

 

「浩志は話さなかったのか?」

 

「何も聞いてない」

 

「そうか。……少し停まってくれ」

 

「……」

 

声のとおりに車体を路肩に寄せてハザードを炊いた。シー

 

トベルトを外して声の響いてきてた助手席に、肩越しに顔

 

だけを向ける。できるだけ不機嫌そうな表情で。

 

「挨拶が遅れたな。事前に浩志に説明されていると思って

 

いた。姓を有賀、名を忠政と申す」

 

助手席の声はさっきまでの呆れるような軽薄な声色ではな

 

く圧を感じさせる腹に響いてくるような低い声になった。

 

「武家の人?」

 

「祖先は平家だと聞いている。……驚かないのか」

 

「話せるような相手はほとんどいないけど、たまに」

 

「そうか」

 

所謂見える人である俺はそれくらいじゃ驚いてやらなかった。

 

 

 

 

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