月の少年と夏に揺らめく水の国   作:ゆるポメラ

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ゆるポメラです。
今回で最終回になります。

それではどうぞ。


第6話 Roseliaの夏

『レディースアンドジェントルメン! トコナッツパークへようこそ! 今宵、皆様には水と魔法のステージをお目にかけましょう!』

 

どうぞ最後までお楽しみください!とテーマパークアクターが言った。

 

「わあ! 湖の上がライトアップされたよ!」

「昼間はなかったのに……湖の真ん中にステージができてる……赤や青や色々な色に光って……夢の世界にいるみたいだね……」

「あ、見て見て! たくさん船が出てきたよ! 船の上でダンスしてる~!」

 

あこ、燐子、リサが言う。

ダンサー達のパフォーマンスを見て、ダンス部の血が騒いできちゃった~と言うあこ。

 

「ダンサーさんの衣装も……すごく……素敵だね……デザインは……海の生き物をモチーフにしてるのかな……? かわいい……」

「ふふ、燐子も衣装作りの血が騒いできちゃった?」

「はい……あんな衣装でステージができたら……キレイだなと思って……」

 

リサに聞かれそう言うと、ちょうど花火が上がった。

 

「わあ! 花火が上がったよ! 湖がキラキラして、ホントに魔法みたいだねっ! あこもあんなふうに見てる人を釘付けにしちゃうステージしてみたいな~!」

 

そう言うと、いい事思いついちゃったと言うあこ。

リサがどうしたのと訊く。

 

「あこがドラムを叩くと花火が上がるようにしたら、ちょーカッコよくない!? ステージはキラキラだし、お客さんも大盛り上がり間違いなしだよっ!」

「あはは、それライブハウス出禁になるっていうか、花火でアタシらが危ないから~!」

「……(いや、意外と危ないじゃ済まないと思うけど)」

 

その内容を聞いて、それだけじゃ済まなくなると思うけどなーと思う悠里。

 

「…………みんな、すっかりショーに心を奪われてるみたいね」

「ええ、これだけ見事なステージですから無理もありません」

 

友希那と紗夜の言葉に悠里も頷く。

正直に言って、見事だなとしか言いようがない……

 

「あこは何か起こるたびに目を輝かせているわね。燐子はステージよりも衣装のほうに目が向いているのかしら……」

「そういう湊さんも、ショーよりそれを見ているメンバーのほうが気になっているようですね」

「……?」

 

紗夜にそう指摘され、首を傾げる友希那。

 

「今日、湊さんを見ていてなんとなく分かった気がします。どうして一緒にここに来たのか。バンドから離れたところで、メンバーがどんなふうに考え、行動するのかを知りたかったんじゃないですか?」

「…具体的には、自分が知らない、みんなの内面的な事を知りたかった……でしょ?」

「……ええ、その通りよ。気づいていたのね」

 

紗夜と悠里に言われ、そうだと認める友希那。

 

「はい、でも私や悠里さんだけではなく、他のメンバーも様子が違う事に気がついていたと思います。湊さんがテーマパークに興味があるとは思えませんし、何より明らかに様子が変だったので」

「そんなにおかしなことはしていないと思うけれど……」

「僕は正直言って、不自然だった。ね、紗夜ちゃん?」

「ええ、大分不自然でした」

「…………」

 

そんなはっきりと不自然と言われると複雑なのだけれど……と思う友希那。

 

「でも、こんなことを始めたのには何か理由があるんですか?」

 

紗夜がそう訊くと、友希那は口を開いた。

 

「……SMSに出演した時のこと、あなた達も覚えているでしょう。あのフェスでの失敗のあと、同じ気持ちでバンドに向き合えなかった私達はバラバラになるところだった」

「……まぁ……あったね」

 

あの空気はもう勘弁してほしいけどねと淡々と悠里が言う。

そう……友希那の言う通り、Roseliaは、SMSのフェスに出演して失敗し、その後の練習や方針で空気が険悪になり、危うくバンドが解散になりかけになったのだ。

この時、悠里は運悪く、色々とごたごたが重なってしまい、精神的に辛かった事もあって鬱になりかけた程だ……

 

「もう二度とあんなことは起こしたくない……そう思ったのよ」

「そのために一緒にここに来たというわけですか」

「Roseliaでいる時には見せない姿を見られると思ったの。みんなが興味のあることを一緒に体験したら、見えるものも変わってくる……そんな気がして」

「それで宇田川さんと遊んだり、ウォータースライダーに……」

 

それを聞いた紗夜は、それも一理あるのかもしれないと付け足す。

相手と同じ目線に立って初めて見えるものもありますからと……

 

「それにしても……今日はのんびりテーマパークを楽しんでいるのかと思ったら、結局Roseliaのことを考えていたんですね」

「そうね。でも、それはいつものことよ。何かをしていても、ふとRoseliaのことを考えている時間が増えてきたから……」

「それだけ湊さんの中でRoseliaが大きな存在だということです。それは私にとってもですが……」

「ただ、今日のことだけれどうまくいったのかは少し疑問だわ」

「…何か気になる事でもあったの?」

 

悠里が友希那に訊く。

どうやら彼女的には、上手くいったのか疑問だとの事……

 

「1日ここで過ごして、前よりもみんなのことがわかった気がする。けれど、わかったのは些細なことばかりだもの」

 

だからあまり理解が深まった実感がないわと言った。

その言葉を聞いて紗夜は、今すぐ結論を出せることではないと口にした。

 

「お互いを理解していくことは大切なことだと思います。ですが、何より同じ時間を積み重ねることが大切だと思います」

 

今の私達にはきっと今日のことも意味のあることですと付け足しながら。

それを聞いた友希那は、そうかもしれないわね……と言った。

 

「……お互いを理解していく……か……」

「「?」」

 

ポツリと花火を見ながら悠里がそう呟いた。

気になった友希那と紗夜は、彼を見る。

表情はどこか寂しそうだった……

 

「……ほんと……そうなったらいいのに。1()0()0()0()()()()()()……そうなった事なんて、一度もないのに……」

 

今度は何かを悟ったような表情になり、何かを言った気がするが2人には聞こえなかった。

 

「……? あぁ……今の僕の勝手な独り言だから忘れて」

 

視線に気づいたのか、いつもの表情で友希那と紗夜にそう言った悠里。

 

「…やっぱり湖がある場所で花火は幻想的でいいもんだね……みんなと来れたから尚の事だけど」

「……(悠里が……)」

「……(笑って……る?)」

 

当人は微かに笑ってる事に気づいていないのか、友希那と紗夜はそれを見て驚く。

そう。例えるなら夏の夜空の海の下で小さく輝く……見つけにくい小さな宝石のような……

 

そんな表情を彼はしていたという。




最後まで読んでいただきありがとうございます。
ここまで出来たのも、読者の皆様のお陰です。
気が向いたら、また何か息抜きに書くかもしれません。

それではまたいつかどこかでお会いしましょう。
ありがとうございました。
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