クロエside
「イリ、ヤ?」
私は目の前に佇む少女、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンに驚きを隠せなかった
そう、だって目の前の存在はこの世界
ハイスクールD×Dの世界に存在するわけがない
あり得るとするならば、私と同じ転生者かカレイドステッキで別の次元から魔法で跳んできたのか
だが、目の前の少女はカレイドステッキらしきものを一切持っていない
「クロエの知り合いか?…………」
「それに、あの剣は………聖剣!?」
「クロエちゃんと………似てる?」
目の前の少女に対し、後のお父さん達が困惑の声を上げる
「イリヤ、お待たせ」
すると更にもう一人少女が現れる
その少女の姿は黒髪に、私と同じ
「ミ、ユ?」
なんで、なんで美遊までこのハイスクールD×Dの世界に
それに、なんで私と同じ《アーチャー》のクラスカードをインクルードしているの?
頭の中が真っ白になる
「やっと見付けたよ。ねぇ、何かいったら?ク~ロ?」
「な、んで………なんでこの世界にイリヤとミユがいるの!?」
私がそう言うと、イリヤとミユは何で知らないのとばかりに頭を傾げ、そして面白そうに笑った
「へぇ、覚えてないんだー。」
なんで?
なんで私がこの二人と接点があるの?
私はこの世界に転生したときにはもうクロエ・フォン・アインツベルンとして生まれ直して…………あれ?
この世界に生まれたなら、何で私は身分証明書や親が居ないの?
そもそも、神様が転生したとしたら私はどうして赤ちゃんからでは無く最初からこの体だったの?
神様が私の生前の体を作り替えた?
いや、神様はそんな事を言ってなかった
頭が、ズキズキする
思わず頭を抑えて膝を着いてしまう
頭の中にノイズが走る
わたしは…………ぼくは何かを、忘れている?
『僕が、転生?』
『そうだ。お前の転生特典はクロエ・フォン・アインツベルンの能力、容姿だ。精々俺を楽しませてくれよ?』
いや、違う
私はこの容姿も、こんな力も望んでない
「おい!クロエ大丈夫か!?」
そうだ、そもそも私の特典は既に決定されたような物だった
お父さんがそう叫ぶなか、イリヤは笑いながら近付いて口を開いた
「アハハ、ねぇクロ?最近、なんか変な事が無かった?」
「な、何の事よ…………」
頭のなかに浮かぶのはここ最近で私の身に起こっていた原因不明の吐血
妙な体の重さ、怠さ
「例えば~突然
「ッ!?」
「図星、だね」
ミユが悪戯が成功した子供のように笑いながらそう言うと、イリヤはまるで謎解きの答えを教えようとする子供のような笑みを浮かべる
「なんでか、教えて上げよっか?」
何でだろうか、この先を聞いてはいけない
直感がそう叫んでいるが、私は耳を塞ぐ余裕なんて無かった
「クロはね…………クロエ・フォン・アインツベルンって言う
頭を金属バットで殴られたような衝撃を受ける
「クロエちゃんが、クローン!?」
「架空のキャラクター?どういう事だよそりゃ……………」
「あの子は一体、何者にゃ?クロエの事をクローンって」
目の前の少女はなんと言った?
私が、人間ではなく………クローン?
嘘だ、私は人間に転生したはず……………
それに、何故イリヤは自信の事を架空のキャラクターだとを知っているの!?
「そして私とイリヤも同じ。私はクローン第2製作体S型2017『Sakatuki Miyuu』」
「私はクローン第1製作体E型2025『Illya Feel von Einzbern』」
「私達はある男に作られたクローンの最高傑作。でも、クロは違う。クロの正式名称は、クローン 第二製作体E型257─Ⅱ─K『Chloe von Einzbern』」
まさか、この世界には私達を知る人物が
転生者がわたしの他いるの!?
「私達を作ったのは天使の男。ソイツは私達をこの世界に誕生させようとした、たくさんの人を誘拐しては殺し、細胞やDNA、内蔵を入手し私とミユは作り出された。」
「そしてクロは作られる際に元のキャラクターに似せようと天使の男が入手した英霊エミヤと思われる人物の血痕……DNAが組み込まれ完成間近と言った時、天使の男は抑止力により死にクロは不完全の状態で放置され、私達は逃げ出した」
私の体に、英霊エミヤの血が……だから私はアラヤに守護者として動かさせられた
だから最初からアラヤとの繋がりがあった
でも、何故私が、吐血をするかの理由にはならない
「そして、作られたクロは寿命に関する処置が終わってない、製作から二年で死ぬ体となったまま、研究所から突如として消えた」
「え?」
頭の中で自信の吐血の原因に一つの予想が浮かびあがる
「まさ、か…………」
「そう、そのまさか。クロが作られたのは二年前の明日。つまり、明日でクロは死んじゃうってこと!」
まるで、時が止まったかのような錯覚がした
イリヤの言葉が私には理解できなかった
いや、理解しているが理解したくなかった
「うそ、だろ………クロエが、明日死ぬだと」
私は、死ぬ
なんで、私は何のために此処まで生きたの?
せっかく、居場所が出来て
救えた人がいたのに
何のために私は毎日を必死に生き抜いてきた?
いつかは、お腹いっぱいご飯が食べられて
温かいお家で、優しい家族と暮らすため
せっかく、叶えられたと思ったのに
そう思い膝を着いたまま二人を見る
「そして、私達はクロ……貴方を殺しに来た。私達とは違い、
そう言って投影した干将莫邪を此方に向けるミユの目は先程までとは違い憎悪と殺意が宿っていた
「私達のこの力は、あくまでもその男の産み出した偽物」
「エクスカリバーモルガンとアーチャーのクラスカードが、偽物?」
「そしてもう1つ、ここのお偉いさん達に言わせて貰うけど。私達はね、この世界が憎い。自ら望んで生まれたんじゃない、作ってくれなんて望んでない。今でも聞こえるの、あの子達の声が」
そう言ってイリヤが持つエクスカリバーモルガンを握る手からは血が流れていた
「『死にたくない』『なんで私が』って。私とイリヤが、どれだけの人の死の上に生まれたのか。天使が人外が、そんな人外を産み出したこの世界が憎い」
「だから、私達は今からこの世界を壊す」
イリヤやミユが私を殺し、この世界を壊す?
そしたら、お父さんや私の救ってきた人達もみんな死んじゃう
頭によぎるのは、今までの記憶
幾度も戦場へと駆り出され、9を救うために1を切り捨て続ける
救えたと思えた存在から言われ続けてきた罵倒された
大事なナニかを救おうとしても、この手から何かがこぼれ落ちて
また、私は罵倒され独りになる
そんな世界はとても醜くて
『お前なら守れただろ!』
『何故助けなかった!』
『アイツこそが悪魔だ!滅殺すべき悪だ!』
苦しくて
『おねえちゃん!おかあさんをたすけてくれて、ありがとう!』
『ありがとう!君のお陰でアイツが死なずにすんだ!』
『貴女があの時に助けてくれたお陰で無事に生きて白音と再会することができたにゃ。本当に感謝してるにゃ』
『姉様を助けてくださってありがとうございました』
『あの時に“お母さんを、救ってくれてありがとう”』
『あの時二天龍を討伐してくれたお陰で沢山の悪魔達が助かった。本当にありがとう』
『朱璃や朱乃を救ってくれてありがとう。お陰で私は家族を失わずに住んだ』
でも、私に
この世界は醜いだけじゃなかった
寒い日や暑い日、空腹に耐えながらも毎日を必死に生きてきた
『生きるがいいマスター。必ず、お前の帰りを待っている存在がいる』
『居場所がないのなら俺がなってやるよ。俺の居る所がお前の居場所だ』
こんな人殺しの私にも手を差し伸べてくれた人達がいた
「────ない」
だから私はあの時、誓ったんだ
「?」
「どうしたのクロ?」
誰よりも戦って、殺して戦い抜いて……救えるだけ救う
私に手を差し伸べ、一時を家族として接してくれた人達を守る
だから、今ここにいる人達を取り零さずに救ってみせる
「させない、この世界を………お父さん達、大切な人達を殺させはしないッ!」
そう言って立ち上がり、両手に干将莫邪を投影する
「私の居場所を壊させはしない、例えそれがイリヤやミユだったとしても。」
これが、私の最後の戦い
「へぇ、いいよ?じゃあ殺すね、行くよミユ」
「うん、絶対に………殺す。手加減なんかしない!」
そう言ってエクスカリバーモルガンを構えるイリヤと干将莫邪を構えたミユ
両手の干将莫邪を握る手に力を込もる
私は一度視線を後ろにいる皆に向ける
泣いている朱乃ちゃんや、悲しそうな顔のバラキエルさんと朱璃さん
ボロボロなのに、剣を握ったままの木場くん
手を繋ぎ此方を見る黒歌さんと小猫さん
そして、お父さん
「お父さん、みんな……行ってきます」
そう言うと直ぐにお父さんの声が帰ってきた
「あぁ、必ず………帰ってこいよ!お前の居場所は俺がいる場所なんだからよ!!」
その声に思わず私は頬が緩むが気を引き締め、干将莫邪を構える
現在の時刻は、11時48分
タイムリミットは
ご愛読ありがとうございます
感想、お気に入り登録、高評価
お待ちしています
我、聖杯に願う
-
クロエが暖かな家族と幸せを掴めますように
-
クロエが、安心して眠れますように