なんで他の転生者は家があるの?   作:クレナイハルハ

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あれから一年

クロエside

 

 

私がこの世界に生まれ、外套とこの身1つで生きることになってからとうとう一年が過ぎ春となった

 

やっと温かい季節が来たと思いつつ!私は外套の中で丸くなる

 

そもそも、年を越せたこと事態に凄く驚いた

 

それと最近はお風呂が恋しくなりました

 

朱璃さんや朱乃さん、バラキエルさんの家でお風呂にいれて貰ったが凄く頭に残っているからか、最近はお風呂のことばかり考えている

 

でも、あんなに優しくしてくれた人達は、もういない

 

そして年末、私は再びアラヤに呼ばれとある教会の牧師である紫藤トウジさんだったかな?

 

その人とその人の上司さんとの問題を、どうにか話し合いだけで誰も死なずに解決させる事が出来た

 

その他にも、沢山の場所に飛ばされた

 

人体実験をされた子供達が死んでいる場所

 

そこで私は一人の少年しか救うことが出来なかった

 

私に助けてくれてありがとうと言ってくれた

 

救われて笑顔を向けてくれた少女は

 

次の日には絶望した顔で死んでいて

 

泣きながら助けてと懇願してきた子供も、物事が終わった後には地面に倒れていた

 

何も救えなくなった

 

殺して、救って、切り捨ててて

 

また殺して、切り捨てて、救って

 

殺して、殺して、殺す事を繰り返した

 

沢山の人が死んでいくのを見た

 

その後も、殺して、切り捨てる事を繰り返してきた

 

飛ばされて、言われた通り殺して

 

切り捨てて、殺して、殺して、切り捨て続けた

 

色々な人を見た

 

『何故助けなかった!』と泣き叫ぶ人がいた

 

『お前なら守れただろ!』と怒鳴る人がいた

 

『偽善者』だと叫ぶ人がいた

 

『悪魔』だと指をさす人がいた

 

言葉無く、私を睨み付けてきた人がいた

 

そして、この世界に存在するらしき

 

   『天使』『悪魔』『堕天使』

 

その内の『天使』はそんな私を犯罪者として祭り上げた

 

多くの罪なき人々を殺した滅殺すべき真の悪魔として

 

そんな私は路地裏から出られなくなった

 

あのお兄さんもあまり来なくなった

 

何も食べなくなった

 

そんなことを考えていると、目の前が霞んで

 

目の前が真っ暗になった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目が覚めると、何時の日か大きな二匹の龍と戦った場所に立っていた

 

「え………………」

 

だが、あの時とは違い

 

目の前に広がるのは、沢山の羽が生えた天使や悪魔、堕天使達が倒れ

 

赤い血で染められた大地が広がっていた

 

「な、なんで!?私は…………」

 

私が呼ばれたとき、みんな傷付いていたものの、生きていた

 

確かに救った、はずなのに

 

ふと先をみると、一人の男性が女性の死体を抱き締めて泣いていた

 

「生きていた、生きて………」

 

そう言って私は何かに縋るように彼のもとへ歩いていく

 

そして私に気付いた彼はまるで私を死んだ恋人の敵を見付けたかのように睨んできた

 

「…………お前が」

 

「え?グッ!?」

 

その男は私の服の襟を掴み、此方を絶望したように暗い瞳で言った

 

「お前がもっと早く来ていれば!■■■■■■は死なずにすんだ!僕らは来週、再来週と楽しく生きていたはずなのにッ!!」

 

なんで……………

 

「お前が彼女を!ここに死んだ、同士の皆を殺したんだ!」

 

違う、私はただ………アラヤに呼ばれただけで

 

まさかこんなことになるなんて

 

「何か言ってみろ偽善者!お前が!ここにいる皆を殺したんだ!」

 

そう言って私は投げ飛ばされる

 

「痛、い……………」

 

そう言いながら立ち上がる

 

ふと、手にまるで水に濡れたかのような感触がして、視線を右手の掌に送る

 

私の手は真っ赤な血に濡れていた

 

「ひっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────地獄を見た────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気がつくと、さっきまでいた場所とは違う

 

暗い森の中に立っていて、目の前には助けたはずの黒猫が真っ赤な血の中に倒れていた

 

そして近くには白い髪の少女が黒猫を見つめて泣いていた

 

「あなたがもっと早く来ていれば…………」

 

「ッ!?」

 

「姉様は助かったのに、何で助けてくれなかったんですか……」

 

その女の子は私を殺意の籠った視線と、殺気を向けてきた

 

「姉様じゃなくて、貴方が代わりに死ねば良かったのに」

 

そう涙を流しながら言う少女に私は、また目の前が真っ暗になった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───救われない地獄を見た───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気が付くと、私はまるで実験施設のような場所に立っていた

 

そして地面には、沢山の子供達が倒れて死んでいる

 

すると、少し先に金髪の男の子が此方へとゆらゆら歩いて来た

 

私は思わず生きていたことに驚き男の子の下に近付き

 

「……………え?」

 

そして、男の子の持っていた剣でお腹を刺された

 

刺されたお腹からはどくどくと血が流れ出ている

 

「貴方がもっと早くアイツラの実験を止めていれば、みんな死ぬことは無かったのにッ!」

 

「……………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───地獄を見た───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お前がもっと早く来ていれば』

 

 

『この偽善者!』

 

 

『貴方が変わりに死ねば良かったのに』

 

 

『お前が彼女を!ここに死んだ、同士の皆を殺したんだ!』

 

 

『貴方がもっと早くアイツラの実験を止めていれば、みんな死ぬことは無かったのにッ!』

 

 

『何故助けなかった!』

 

 

『お前なら守れただろ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気が付くと、私は両手に枷を付けられ

 

長い階段を上っていた

 

ここは何処だろう?

 

この先に何があるのだろう?

 

そう考える内にだんだんと何があるのか見えてきた

 

目の前には上の台から輪っかの出来た縄が降りている

 

処刑台があった

 

私は怖くなり、逃げ出そうとするが体は勝手に処刑台へと上っていく

 

『これより、数々の罪なき人を殺した

 真の悪魔であるこの者を処刑する!』

 

何者かの声がそう言い放つと、沢山の人がまるで私の死を望むかのような雄叫びをあげる

 

い、いや…………やめて

 

私は、アラヤに言われて……………

 

そんな心とは裏腹に体は縄へ近付ついていく

 

そして私は、縄に手をかけた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───無限に続く、地獄を見た───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は!はぁ、はぁ………ゆ、め?」

 

目が覚めると何時もの路地裏に横になっていた

 

太陽が大分上っていくるから、お昼ぐらいだろう

 

私は震える体をどうにか押さえて、右手を開くと真っ赤な血に濡れておらず

 

首もとにも、傷は出来ていなかった

 

思わず体を抱き締める

 

怖い、怖い…………コワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイ

 

なんで、なんでみんな私を責めるの?

 

貴方は、貴方達は何もしないで

 

見てるだけなのに、なんで

 

私ばかり責められるの?

 

犯罪者として扱われるの?

 

みんな私の本当の心をしらない

 

何を言われても、助けたくて

 

ひたすらにアラヤに言われて頑張ってきた

 

……………………だけどもう、無理だ

 

そう思い、ふとアーチャーエミヤの投影品である短剣【破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)】を思い出した

 

確かあれは、対象を突き刺せば色々な魔力や繋がりを破棄することができたはず

 

そう思い、私は右手に破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)を投影する

 

もしこれを私に刺せば、アラヤとの繋がりも

 

もしかしたら破棄することが出来るかもしれない

 

そう思い破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)を逆手に持ち、自分の胸に向ける

 

もし失敗すれば、私は死ぬ

 

いや、もう死んだ方がいいかもしれない

 

それに、私は………もう疲れた

 

どうせこの先、生きてられるかわからない

 

私の事を家族と言ってくれたあの人達も、もういない

 

そもそもあんな状況から、ここまで良く頑張ったと思う

 

お金も家も、家族もいない

 

そんな0の状態から、一年生き延びた

 

これからも私はアラヤに呼ばれ

 

指示通り人を殺し、救おうとして

 

あのように責められるのであれば

 

「………私はッ!」

 

右手を振り上げ勢い良く自分の胸に突き刺そうと、短剣を振り下ろす

 

やっと、楽になれる

 

ねぇ、朱璃さん

 

朱乃ちゃん、バラキエルさん

 

時々施してくれるお兄さん

 

私、今度こそ来世で

 

………幸せになれるかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………おい、悪い事は言わねぇがバカな事は辞めろッ!」

 

そう言って、後ろから伸びた手が私の短剣を持った右手を掴んだ

 

思わず驚愕して後ろを向くと、その勢いで被っていた外套のフードがとれる

 

見えたのはあの二匹の龍と戦ったときに私を受け止めてくれた金髪のおじさん

 

「なッ!お前はあん時の!?」

 

私は金髪のおじさんに押さえられた手をどうにか動かそうとするが、全く動かない

 

あと少しで、死ねるところだったのに

 

「………………離してよッ!」

 

「離すかよ、離したらお前が死ぬだろうが!」

 

「死なせてよ!!」

 

大声で金髪のおじさんへと叫ぶ

 

「どうせこの先生きても良いことなんて無いに決まってるじゃない!」

 

私は金髪のおじさんへとまるで、吐き出すように自分の本心を叫ぶ

 

「それどころか、助けようと動いてもみんな私を責める声ばかり!『お前なら守れた』『もっとはやくお前が来てくれれば』そんなこと私だって分かってるわよ!でもどれだけ救おうと手を伸ばしても、救えない!救いきれない!どうやっても、何かを切り捨ててしまう!更に天使は私を滅殺すべき真の悪魔だと宣言したッ!!」

 

「なッ!?」

 

頬に何かが伝う感覚がするが、きにせず話し続ける

 

あるのは、行為を止められたこと

 

今まで誰にも言わずにいた自分の怒り

 

「貴方に分かるの!?私の気持ちが、必死に戦って、殺して!救えたと思えた存在に罵倒された上に人殺しの犯罪者として認識された私の気持ちが!」

 

こんなこと言ってもなにも変わらない

 

そう分かっていても、止まらない

 

心の壁と言うダムが壊れ、感情が流れ出て止まらないのだ

 

「それに私には家がない!帰る場所もない!もう…………私はこの世界に居場所がない」

 

そして最後は、ポツリポツリと声を発する

 

「私は死ぬべきなの、皆を救えなかった私は生きる資格なんて………無いんだから!ねぇ離してよ!お願い、だから…………死なせて」

 

そう言った瞬間だった

 

体からスウッと何かが抜けていくような感じがして足に力が入らず

 

そんな感覚がして意識が遠くなる

 

………………………あぁ

 

心当たりはある

 

もうどれだけ食べてないのか飲み物を飲んでいないのか覚えてない

 

そっか、どっちみち私は…………もう

 

最後に見たのは私をあの時と同じように受け止め、何かを叫ぶおじさんの焦ったような顔だった

 

 

 

 

 

 




ご愛読、ありがとうございました

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【番外編】アラヤ社クロエ出張サービスin異世界

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  • 魔法少女まどか☆マギカ
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  • 戦姫絶唱シンフォギア
  • ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか?

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