なんで他の転生者は家があるの?   作:クレナイハルハ

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少女は眠り、残された者達は思い出す

 

 

 

 

…………ピッピッピッピッ

 

 

真っ暗な暗い部屋

 

病室ような設備のある部屋で大きなベットに一人の少女が眠っている

 

酸素マスクをつけ、手には複数の点滴が刺さっており、静かに眠っている

 

まだ目覚めない

 

ボロボロとなったその体がいくら治療されようが彼女が目覚めることはない

 

絶望に染まった彼女の心は、治ることはない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アザゼルside

 

 

病室のような部屋、そこには大きなベッドに一人の少女が眠っていた

 

口には酸素マスクが付けられ、ようやく呼吸しており

 

点滴により、体に栄養素を注入されていた

 

そして点滴の近くの機械が、ずっとピッピッピッと彼女が生きていることを表す電子音を鳴らしている

 

コイツが眠ってから、1ヶ月の月日がたった

 

近くに椅子を持ってきて座った俺は、彼女の様子を見る

 

傷付き続けてきた体、ろくに食べてこなかったからか、痩せこけからだで深い呼吸を繰り返す

 

「こいつに一体何が起きやがった……」

 

そう呟き俺はコイツを見つけた時の事を思い出す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は何時も通り仕事をサボり、人間界の駒王町に遊びに来ていた

 

「ったく、アイツは仕事仕事って。そんな事言われたらやる気が出ねぇつの…………?」

 

ゲーセンでもいくかぁ

 

そうボヤきながら歩いていると何でもない路地裏がふと目に止まった

 

普段なら気になることもないはずの路地裏へ

 

俺は興味を引かれ、入っていく

 

そこには恐らくは誰が捨てたであろう様々な廃棄物が転がっており

 

その中で外套を羽織った何者かが手にナイフを持っていた

 

しかも、そいつは俺ではなく自身へとナイフを向けていて俺に気付く素振りを見せない

 

「私はッ!」

 

そう言って大きくナイフを振りかぶる

 

俺は急いでそいつのナイフを持った右手を掴んでこいつが行おうとしていた、自殺を止める

 

「おい、悪い事は言わねぇがバカな事は辞めろッ!」

 

俺に捕まれたことに驚いたのか、そいつが此方を見ようとし、外套のフードが外れる

 

「なッ!お前はあん時の!?」

 

そこには昔、二天龍であるはずのドライグとアルビオンを倒し

 

力を使い果たして光の粒子となって消えたはずの少女がいた

 

だが、その体はまるで成長しておらず

 

あの時の少女の瞳には、まだ光が灯っていた

 

だが、今はどうだろうか

 

少女の琥珀色の目は酷く濁り、あの時よりも痩せていた

 

一体、こいつに何があったんだ?

 

そもそもコイツは人間だ、何故あんな風に消えることが出来た?

 

何故生きている?

 

少女が押さえている右手を動かし、ナイフを動こうとしたするが手に力を込めてそれを阻止する

 

「………………離してよッ!」

 

「離すかよ、離したらお前が死ぬだろうが!」

 

そう言って更に掴む手に力を入れてナイフで自身の命を絶とうとする少女を止める

 

「死なせてよ!!」

 

すると先ほどまでの小さな声ではなく、大声で彼女は俺に叫んだ

 

「どうせこの先生きても良いことなんて無いに決まってるじゃない!」

 

そんな事はねぇ、そう言おうとした

 

だが、言えなかった

 

「それどころか、助けようと動いてもみんな私を責める声ばかり!『お前なら守れた』『もっとはやくお前が来てくれれば』そんなこと私だって分かってるわよ!でもどれだけ救おうと手を伸ばしても、救えない!救いきれない!どうやっても、何かを切り捨ててしまう!更に天使は私を滅殺すべき真の悪魔だと宣言したッ!!」

 

「なっ!?」

 

そう言って泣きながら話す彼女に、そんな気休め程度の言葉は言えるはずがなかった

 

どういう事だ?何故こいつが天使から狙われるはめに?

 

ミカエルは一体何をしてやがる!コイツが二天龍を倒したところはアイツも見ていたはずだ!

 

しかも今の言葉から推測するに、こいつは二天龍との戦いのあとも数々の戦場を経験したと見える

 

一体、その体の何処にそんな力があるってんだよ

 

「貴方に分かるの!?私の気持ちが、必死に戦って、殺して!救えたと思えた存在に罵倒された上に人殺しの犯罪者として認識された私の気持ちが!」

 

泣きながらそう訴える少女に対し、俺はただ少女の言葉に耳を傾けていた

 

「それに私には家がない!帰る場所もない!もう…………私はこの世界に居場所がない」

 

そして怒りがだんだんと冷めてきたのか、ポツリポツリの少女は言葉を紡ぎだす

 

そして再びナイフを持つ手に力が入るがどうにか押さえ込む

 

「私は死ぬべきなの、皆を救えなかった私は生きる資格なんて………無いんだから!ねぇ離してよ!お願い、だから…………死なせて」

 

少女が怒った際に、放っていた言葉が頭の中で繰り返される

 

そして次の瞬間、少女がまるで糸がプツンと切れた操り人形のように倒れる

 

「おい!」

 

あの時と同じようにどうか受け止める

 

軽い、人間とは思えないほど目の前の存在は軽くて、ボロボロで、壊れていた

 

少女は此方を見つめながらゆっくりと瞳を閉じていく

 

「おい!しっかりしろよ!おい!聞こえるか!?」

 

声をかけるが、少女は気付くそぶりを見せず目を閉じた

 

「クッ!」

 

少女を抱えて人払いの魔術を使用しながら、近くの顔の聞く個人病院へと向かう

 

死なせねぇ、絶対にさなせるわけにはいかねぇ

 

そう心の中で言い聞かせ

 

俺は病院へと走った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今考えれば、サボる目的で駒王町に行ったがこんなことになるだなんて思いもしなかったな

 

「…………せっかく助けたんだから、死ぬんじゃねぇぞ」

 

そう言ってそっとベットに眠る少女の髪を撫でる

 

そういや、前に『お腹いっぱい食べたかった』って言ってたな

 

起きたら、何でも好きなもん買ってやるよ

 

お前はまだ、甘えていい歳だしな

 

俺が助けちまったんだ

 

だから、責任もって最後まで面倒ぐらいみてやるさ

 

………………こんな小さな子供がこんなになるまで見てただけなんて、一人の大人として情けねぇな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

木場 祐斗side

 

 

剣道場で竹刀を振る

 

頭にあるのは、強くなって僕の、みんなの人生を狂わせた

 

聖剣を破壊すること

 

その目的は今でも変わらない

 

でも、それと同じように僕が今しなければいけないものがある

 

僕を助けてくれたあの女の子を探すこと

 

あの女の子がいなければ、恐らく僕はここにいない

 

改めてお礼を言いたかった

 

ふと竹刀を振る手を止めて窓から見える夕陽を眺める

 

そして思い出す、僕の目的が1つから2つに変わった日の事を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前には沢山の仲間だった、友達だった者が倒れている

 

僕はその光景を見て、心から暗い何かが押し寄せてくるのを感じた

 

聖剣が憎い

 

聖剣のせいで僕らは………………

 

涙を流しながら、僕は周囲を見回す

 

その時だ、向こうからふらふらと何者かが歩いてくる

 

もしかしたら僕と同じように生き残りが、そう思い痛むからだを気にせず人影の見える方へ歩く

 

すると銀髪で褐色の肌、琥珀色の目から涙を流した僕より小さな女の子が涙を流しながら必死の形相で周囲を見回していた

 

何かを探しているのか?

 

思わず、女の子を行動を見つめていると

 

彼女の瞳が僕を見付ける

 

すると女の子は驚愕した後、僕の方に走ってくる

 

「ッ!?」

 

思わず僕が身構えると、女の子は途中でスピードを崩し、僕の事を抱き締めた

 

訳が分からない、彼女はなんで僕を

 

そう思っていると、彼女の声と思われる声が聞こえた

 

「ありがとう!…………生きていてくれて、本当にありがとう」

 

そう泣きながら、何度も何度もありがとうと言う少女

 

何でこの子が、僕に感謝するんだろうか?

 

そんな事を考えている間も、彼女は安堵したかのように、優しい声色でありがとうと言っていた

 

それを、僕は困惑してただ聞いていていた

 

やっと離してくれた女の子を改めてみて僕は驚愕した

 

女の子はボロボロで、体は酷く痩せ細っていて骨が所々浮き出ているのが見えた

 

そして何より、女の子の目だ

 

女の子の琥珀色の瞳は暗く濁っていて、その目から大量の涙を流していた

 

そして女の子は申し訳無さそうな顔をして、言った

 

「…………ごめんなさい」

 

「え?」

 

彼女がそう言った瞬間、彼女の体から金色の粒子が零れ

 

女の子の体の所々が透けていく

 

思わず僕は女の子へと手を伸ばす

 

だがその手は宙を舞い、女の子に振れることはなかった

 

少女は消えていった

 

その瞳からずっと涙を流して

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして、その研究所から逃げた僕はリアス部長と出会い、眷属となり

 

こうして今を生きている

 

夕陽を見ながら、あの時に僕を助けてくれた彼女の最後の言葉を思い出す

 

『…………ごめんなさい』

 

あの謝罪の言葉が、当時の僕には分からなかったが今なら分かる

 

きっと、あの場にいた皆を助けることが出来なかった事に対しての言葉だったのだろう

 

リアス部長の眷属となってから、聖剣計画について調べたが

 

僕のいた研究所は、僕以外のみんなが死んだあの日

 

何者かの襲撃を受けていた、そこで計画を進めていた研究員は証拠隠滅の為

 

あの場に毒ガスを放ったらしい

 

そして僕はそれを運良く免れ、あの女の子と会った

 

信じられないが、その襲撃者は彼女だったのだろう

 

きっと、僕らを救おうとしたがあんな事になり生存者を必死に探していた所に僕が現れたんだろう

 

彼女自身があんな状態なのに、他の人の為に動いてくれた

 

だから僕は、聖剣への復讐が終わったら彼女を探して、伝えたいんだ

 

“助けてくれて、ありがとう”って

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朱乃side

 

 

部室にて、リアスが出ていった後

 

私は自分の鞄から常に持ち歩いている一枚の写真の入ったケースを取り出して眺める

 

その写真には私、お母さん、お父さんが写っている

 

一般的な家族写真だが、この写真は違う

 

映っていないのだ

 

本来ならば、その場にいたはずの少女が

 

まるで、最初からその場に存在しないかのように消えていた

 

私とお母さんの間で申し訳無さそうに笑う少女

 

クロエ・フォン・アインツベルンちゃんの姿が

 

私とお母さんをクロエちゃんが隠していた力で助けてくれたときの、彼女は最後に私達に言った言葉が今も私の頭には鮮明に思い出すことが出来る

 

『ありがとう』

 

そう言ってクロエちゃんが浮かべた笑顔は、凄く可愛いけど、何処か儚くて

 

触れれば壊れてしまいそうなほど、脆そうだった

 

クロエちゃんはあれから何処にいってしまったのだろうか?

 

だけど、きっと彼女は生きている

 

きっとどこかで

 

だから私は、私達はずっと待つ

 

もし彼女が帰ってきたとき、あの子を受け入れて上げられるように

 

そして帰ってきたら私は必ずクロエちゃんに伝えたい

 

“お母さんを私を、救ってくれてありがとう”って。

 

 

 

 

 

 

 






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【番外編】アラヤ社クロエ出張サービスin異世界

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