24歳、男性。Vtuberを始めるも、女性ファンより男性ファンが多い件について。   作:Rabbit Queen

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 あらすじ

 久々に外食した(8ヶ月ぶりくらい)
 女子高生のファンに会った(盗み聞き)
 ホコリを被っていたメッセージBOXに新着の文字が……?




無口なあの子と仲良くなろう。

 それは、彼女のメッセージから始まった。

 

 

 

アカネちゃん

 

 こ、こんばんは……起きて、ますか?

 

 既読 こんばんはー。起きてますよ。どうしました? 

 

 その、怖い動画を見て……

 

 ……ごめんなさい、大丈夫、です。

 

 既読 少しお話でもする? 

 

 ……お、お願いします……っ!!

 

+                                           
 

 

 

 

 

 ある日の夜、正確に言えば深夜1時を少し過ぎた頃。

 配信を終えて3時くらいまでランクでもやろうかと思ってた時の事である。

 インタビュー配信後に少しだけやり取りをして、それからしばらく使われることのなかった相手とのメッセージBOXに新着の文字が浮かび上がった。

 

 その相手とは、無口なゲーマーとして人気があるVtuberの1人、アカネちゃんだった。ちなみに無口な原因は、ただただ人見知りで緊張しやすいから。それを知ってる人物は恐らく少ない。多分私とはやて丸さんくらいなんじゃないかな。マネージャーさんは知らん。インタビュー配信の打ち合わせの時も全然顔出して来なかったし、基本放置なスタイルっぽい。サキさんといい、アカネちゃんといい、なんか適当すぎない?彼女達の事務所。

 

 

 そんな無口な少女、もとい、人見知りな女の子であるアカネちゃんからのメッセージ。

 内容は怖い動画を見たから……で止まってる。

 まぁ、多分だけど寝れなくなったんじゃないかな。

 途中まで書いて「やっぱ大丈夫です」なんて送られたらそりゃ気になるよね。

 とりあえずそれとなく「話でもする?」と送ったけど、見当違いだったらめっちゃ恥ずかしい。

 そう思いながら彼女の返信を気長に待とうとして、すぐに返信が返ってきた。早い。

 よっぽど怖かったのだろうか?アカネちゃんには悪いけど、ちょっと気になる。

 まぁ会話の中でそれとなーく聞ければいいかなぁと思いつつ返信を返そうと思ったら、なんと通話がかかってきた。

 

 あ、会話ってそういう……いやまぁ、全然いいんだけどね。ちょっとびっくりしちゃったよ。

 「……こ、こんばんは」

 「こんばんは。大丈夫?」

 「えと、大丈夫、です」

 「そかそか」

 「あの、急にごめんなさい……」

 「全然大丈夫だよ。

  しかしあれだね、アカネちゃんはてっきりホラーに強いほうかと思ったけど」

 「えと、その……そ、そうですね。実は、ホラー苦手、です」

 「ふむ?……うーん?」

 「えと、どうしました?」

 「いや……大丈夫。

  そかそか、苦手なら仕方ないよね。でもそうなると、コラボする時大丈夫かな?」

 「あっ……だ、大丈夫です。頑張ります……」

 「無理しないでね。ダメそうなら別のゲームに変えるし」

 「は、はい……」

 「……本当に大丈夫?なんか、ぎこちないというか、無理してない?」

 「……あの、その……

  ご、ごめんなさい……っ!」

 「え」

 なんか急に謝られました。あれ、やらかした?

 年下の女の子の扱い方がわからないニートです。助けて。

 「その、怖い動画見たのは嘘で……」

 「ほむ?」

 「あの……雹夜さんに、謝りたくて……」

 「え、何かあったっけ……?」

 「インタビュー配信の後、雹夜さんすぐ帰ったから、

  何か悪い事しちゃったのかなって思って……いろいろ調べたら、その……

  サキさんと、その……」

 「あー……なるほど。理解」

 「……丁度雹夜さんの配信を見てて、

  それで、終わった後なら少し話せるかなって思って……ごめんなさいです……」

 「大丈夫だよ。全然気にしてないから。

  でもあれだね、そういう話ってマネージャーさんとか事務所から何も言われない感じ?」

 「……はい。その……ボクはその、仲間外れにされているというか……ごめんなさい」

 「あー……」

 なるほど、この子もサキさんと同じ感じなのか。

 というか、一番人気と三番目に人気のVtuberさん仲間外れにして何をやっているのだろうか?

 よくわからん事務所だなぁ。まぁ、理解する気はないけども。

 サキさんとアカネちゃんを外してるということは、二番目に人気な子と他の新規勢を大事にしてるんかね。よくそれで炎上……あぁいや、実は結構クレーム来てたりするのかな。

 もしくはそういう方針だってファンの皆は理解しているのか。

 ……どっちにしろ、私は好きな事務所ではないなぁ。

 「だからその……インタビュー配信は、すごく嬉しかった、です」

 「なるほどねぇー……その感じだと、事務所内で友達は……」

 「……」

 「まぁ、そうだよねぇ……ごめんね」

 「だ、大丈夫です……」

 「んー……あ、はやて丸さんとは大丈夫?」

 「えと、はい。はやて丸ちゃんとは、仲良くさせてもらってます……」

 「それはよかった」

 「今日も、少しだけ通話してました」

 「何話したの?」

 「お互いの学校の話とか、勉強の事とか、あと、好きなVtuberさんのお話とか……です」

 「おー、なんだか青春っぽい」

 「えへへ……あ、でも、その、ボクは仲の良いVtuberさんも全然いないし、あまり見ないから、はやて丸ちゃんの言ってたVtuberさんがちょっとわからなかったです……」

 「はやて丸さんはインタビューとかもあるから、いっぱい見てるんだろうね」

 「ですです……。その、雹夜さんもいろんなVtuberさんを見てるんですか……?」

 「最近はね。始めた頃は全然だったけど、コラボのお誘いとか来たりするから、なるべく相手さんを調べたりする為に見てるかな。趣味で見てるのははやて丸さんとアカネちゃんかな」

 「わ、わ、あ、ありがとうございます……っ!

  ボクも、最近ははやて丸ちゃんや雹夜さんの配信、見てます!」

 「お、本当?ありがとね。嬉しいなぁ。……あ、眠くなったりしない?」

 「えと、たまに、眠ったりします。心地よくて、その、好きです」

 「おぉ、なんか照れるね。ありがとう」

 「こ、こちらこそ、ありがとうございます」

 「ふむ」

 ここまで話してなんだけど、やっぱり少しぎこちないよね。

 緊張しているのか、それともあれか、気を使ってる感じ?

 もうちょい、崩してくれてもいいんだけどなぁ。難しいかなぁ?

 「……んぁ、もうそろそろ2時になるね。学校大丈夫?少しでも寝とかないと大変じゃない?」

 「えと、明日は休みなので、大丈夫です……」

 「あれ?そうなの?……うぉ、マジだ。休日じゃん」

 ニート期間が長いせいか、平日が何時休みとか全然わかんなくなってきた。

 ちょっと恥ずかしい。机の上に日めくりカレンダーとか置こうかな。小さいタイプのやつ。

 でもどうせ置くならアニメとコラボしたカレンダーがいいよね。

 ARIAか超電磁砲のカレンダーアマゾーンに置いてるかな?

 うーむ、気になる。

 

 「ごめん、ちょっと話しながらアマゾーン見るね」

 「え?あ、はい、大丈夫です……何か探してるんですか?」

 「いやぁ、カレンダーでも買おうかなと。ちょっと恥ずかしかったし」

 「あっ……なるほど、です。ボクも、何か探そうかな……」

 「そういえばオススメのゲームあるとか言ってたよね。ついでに調べようかな」

 「あ、はい……っ!えっとですね……」

 

 

 「まさかのDO○Mだった」

 「これも名作、です……っ!」

 「意外とグロいのがお好き?」

 「特別好きではないですけど、爽快感が……」

 「確かに爽快感はあるね。だいぶグロいけど」

 「雑魚兵が弾ける瞬間が、好きです……っ!」

 「なんとたくましい女の子でしょう」

 

 

 「最近は冷蔵庫も取り扱ってるのかぁ。凄いなぁ」

 「そういえば、冷蔵庫は買いに行ったんですか……?」

 「うん、行ったよ。家族皆で出かけて買いに行った」

 「どうでした……?」

 「うちの親がめちゃくちゃ値切ってて店員さんが可哀想だった」

 「そ、そうなんですか?」

 「うん。可哀想だから値切った分何か買おうかなと思って炊飯器選んだら、

  それも値切り始めたので無限ループになるかと思った」

 「お、恐ろしいですね……」

 「まぁ……あの金額ならもう少し値切れただろうけど」

 (ひょ、雹夜さんも、ご両親の血をちゃんと受け継いでますね……)

 

 

 「そういえば、欲しい物リストを作ったらいっぱい物届いたよ」

 「便利ですよね……ボクも、ファンの方から貰ったりしてます」

 「ありがたいよねぇ」

 「お菓子とかジュースとか、いっぱい家にあります……」

 「僕は本かなぁ。あんまり物欲ないから、オススメされた物をとりあえずリストに入れてるけど」

 「そうなんですか……?えと、どういう本を……?」

 「んー……」

 「……?」

 「官能小説の読み方とか、セクシーな声の出し方とか、そういう本かな」

 「え……」

 「……流石にリストから除外したよね、うん」

 「雹夜さんの視聴者さんは、その……愉快な人が、多いですね……」

 「言葉を選んでくれてありがとう。良い人達なんだけどね……」

 

 

 「……ふわぁ……」

 「ん、眠くなった?」

 それから1時間くらい話し込んで、時刻は2時を過ぎていた。

 そりゃ眠くなるよね。深夜だし。多分私の声の効果もあるかもだし。

 元々謝る為に来たっぽいし、そろそろ寝かせた方がいいよね。

 「あっ……ご、ごめんなさいです……」

 「全然いいよ。どうする?今日はもう寝る?」

 「えっと……そうします」

 「あいよー。んじゃ、また今度話そうね」

 「……また、通話しても、いいんですか?」

 「うん。また寂しくなったらかけておいで」

 「……はいっ!あの、今日は、ありがとうございました……っ!」

 「いいえー。ゆっくり休んでね」

 「はい。それじゃ、おやすみなさい、です」

 「うん。おやすみ」

 「……また、です」 

 最後にそんな声が聞こえた気がして、プツンと通話が切れた。

 最初に比べれば、ほんの少し距離感が縮まった……はず。

 私の気のせいでなければだけど。

 まぁ彼女の歩幅に合わせて仲を深めれればいいかな。

 彼女も彼女で、自分なりに勇気を出して声をかけてくれたみたいだし。

 そもそもこんな男に声をかけてくれるだけでも、ねぇ?

 おっさんなら泣いて喜んでるよ。多分。

 ……とりあえず、彼女とはゆっくりと仲を深めていこうかな。さーて、私も寝よ。

 

 ――それから。

 

 「こ、こんばんは……っ!!」

 「うん、こんばんは」

 

 ――1週間。

 

 「こんばんはですっ……!!」

 「うん……こんばんは」

 

 ――経ったけど。

 

 「こんばんはっ!!」

 「はいこんばんは」

 

 ……ちょーっと、通話の機会が多い気がする。

 

 「こんばんはです!」

 「はーい、こんばんは」

 うんうん、今日で見事にコンプリートだよ。

 1週間、毎日、通話かかってきておらもうびっくりだぁ。

 決して嫌じゃないよ。女の子からの通話だもんね。嬉しいよ。

 でもなんというか……あんま良くない気がする。

 なんだっけなぁ……あぁ、思い出した。あれだ、ちょっと依存入ってる感じがする。

 昔おっさんが付き合ってた彼女がすごい依存症のメンヘラで大変だったと言ってたな。

 メンヘラはまだないけど、なる可能性は十分ある気がする。

 うーん……これはちょっと、言うしかないかなぁ。

 「……アカネちゃんは、リアルで友達とかいないの?」

 「え?……えと、その…………いない、です」

 「ふむ」

 「……あの、もしかして、嫌でした?」

 「うん?」

 「その、毎日通話してて、嫌になったかなって……」

 「んー、嫌じゃないけど……あー、ちょっと辛口になるけど、いい?」

 「……どうぞ」

 「アカネちゃんと話せるのは全然嬉しいけど、僕だけじゃなく、

  もっといろんな人と話してみない?今後他のVtuberさんとコラボする時とか大変だろうし」

 「……難しい、です」

 「だよねぇー……んー……学校で話しかけられたりしない?」

 「えと、一応、話しかけてくれます。でも、その、恥ずかしくて……何も言えないです……」

 「うーむ……あ、じゃあ僕で練習しようか」

 「練習、ですか?」

 「うん」

 聞く感じ、友達が居なくて声の掛け方とか、どういう話をすればいいのかとか、そういうので焦って黙ってしまってるのかもしれない。多少練習すれば、まぁ、挨拶程度は返せるようになるでしょう。後は……うん、少しずつ頑張ってもらおう。目標が高すぎると逆にダメになるかもしれないし、まずは挨拶かな。

 「んじゃ僕が同級生の男子役やるから。では始めまーす」

 「え?あ、あの……」

 「アカネちゃんおはようー」

 「え、と、あの、その……お、おは……よう、ございます……」

 「んー、もう一回。おはよう、アカネちゃん」

 「お、おはよう、ございましゅ……ございます……」

 「お?いい感じいい感じ」

 「お……おはよう、ございます……」

 「うんうん、いいねー。じゃあ、次挨拶されたら、頑張って返してみようー」

 「え……?む、無理ですよ……」

 「大丈夫大丈夫。ただ挨拶返すだけだから。別に会話はしなくてもいいんだよ」

 「うぅ……で、できるかな……」

 「アカネちゃんなら出来るよ。ふぁいとー」

 「お、おー……」

 

 とりあえずは、人との距離感を掴んでもらおう。

 そうすれば、きっと自然と、友達も出来るだろうし。

 根は良い子だから、あとはほんの少し勇気でどうにかなるはず。

 頑張れ、アカネちゃん。

 

 

 【……うぅ……】

 【それでさー。あ、○○ちゃん、おはようー!」

 【あ、えっと……】

 【うん?】

 【お、おはよう……】ニコッ

 【えっ……♡

 【あ、あの、大丈夫……ですか?】

 【え?あ、うん!ちょ、ちょっとびっくりしちゃった!お、おはよう!】

 【……うん、おはよう】ニコッ

 【はぅぅぅ♡

 

 

 「……ということがあって」

 「あー……」

 「話しかけてくれる人も増えてきたんですけど、その……」

 「うん……」

 「な、何故か女の子しか、声かけてくれなくて……」

 「まぁ……そうだろうね、うん」

 「あと、その、気付いたら、ファンクラブみたいのができて……」

 「ごめん、なんか、ごめん」

 「え?あ、いや、雹夜さんは何も悪くないですよ……?」

 ごめん、多分俺のせいだわ。なんか……ごめん。

 「でも、雹夜さんのおかげで、少しずつ話せるようになりました……ありがとうございます」

 「いやー……特別何もしてないし、むしろ今回に関してはちょっとやらかした気が……

 「雹夜さん……?」

 「んや、大丈夫。なんでもない。

  でもそっかぁ、少しずつ話せてるなら、それはそれでよかった」

 「はい。あの、本当に、ありがとうございます。

  雹夜さんには、インタビューの時からいろいろお世話になってて……」

 

 「気にしない気にしない。

  インタビューの時もそうだけど、僕はただ背中を軽く押しただけだから。

  そこから歩き出したのはアカネちゃんだからさ。

  だからまぁ、僕なんかよりも、自分をいっぱい褒めたほうがいいよ。うん、よく頑張った!」

 「……ありがとうございます。雹夜さんは、優しいですよね」

 「んー……それに関してはノーコメントで」

 「照れてます……?」

 「はっはっはー」

 照れてるだけならいいんだけどね。

 結局、私がやってることって、勝手に後押しして、逃げ場のない道をただ真っ直ぐ歩かせてるだけなんだよね。それは優しさなんかじゃないし、人によっては不幸にだってなる。今回はなんとかなったけど、やっぱりまぁ……私にこういうのは向いてないんだろうな。

 

 「……あの、雹夜さん」

 「うん?」

 「……これからも、その……宜しくお願いします……!」

 「……うん。俺でよければ、宜しくね」

 まぁ、彼女が自然と離れるまでは、一緒にいてあげよう。

 大丈夫、きっとこの子なら、自分の道を見つけて歩けるはず。

 俺とは違って、この子は、きっと大丈夫。

 

 

 「そういえば、サキさんに憧れてるんだっけ?」

 「はい……っ!!いつか、ちゃんと話してみたいです……!!」

 「ふむふむ。ちなみに会ったら、どういう話するの?」

 「えっと、どうやったら、そんなにクールでカッコいい女性になれますか……!」

 「あー、まぁ確かに、サキさんカッコいいよね」

 「はい!きっと、私生活もクールでカッコいいはずです……っ!!」

 「クールでカッコいいねぇ……」

 

 【今度のボイスなんだけどね?せっかくだしおねショタみたいなシチュエーションもいいと思うの。深い意味はないのよ?】

 【雹くんはゲームで悔しいって思った事はあるかしら?そうそう、その時の声をちょっと録音してほしいの。え?深い意味はないのよ?】

 【雹くんもたまにはストレス発散しないとダメよ?私が考えたセリフがあるから、大声で発してみて。大丈夫、深い意味はないのよ?】

 

 「うーむ」

 「雹夜さん……?」

 「アカネちゃん、理想は結局理想なのだよ」

 「……?」

 

 




 久々にサキさん出たと思ったらこれですよ。
 ちなみにアカネちゃんのリアル見た目はア○マスのまこちんみたいな感じのボーイッシュ。 

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