24歳、男性。Vtuberを始めるも、女性ファンより男性ファンが多い件について。 作:Rabbit Queen
その少女は人と話すのがとても大好きでした。
無邪気な笑顔で話す少女の姿は、人々を笑顔にさせていました。
少女はそんな笑顔の中心に居ました。
少女は沢山の人に好かれていました。
笑顔で明るい少女を、誰もが愛していました。
そんな少女ですが、不思議な事が一つだけありました。
皆に愛されている少女には、なぜ✗✗✗✗がいないのでしょうか?
わたしがVtuberを始めた理由
「○○ちゃんって本当に面白いよね!」
小学校の時からずっと言われてきた言葉。
元々人と話すのが好きだったわたしにとって、面白いという言葉は人と積極的に関わらせてくれる頼もしい言葉となった。誰かに楽しんでほしい、誰かに笑ってほしい。その中にわたしも居て、一緒に笑い合いたい。そんな夢を、ずっと抱いていた。わたしが持つ、2つの夢の内の一つがそれだった。
中学校に上がっても同じで、入学式の日から積極的に声を掛けていった。
皆知らない人ばかりで緊張している様子だったけど、わたしが声を掛けたら喜んで話してくれた。話してる顔がとても楽しそうで、嬉しそうで、わたしも凄く嬉しかった。もっともっといろんな人と話したい。いろんな人を笑顔にさせたい。私の想いは、どんどん加速していった。
部活を始めた時、思い切って上級生に話しかけてみた。
結果は大成功で、先輩方は皆笑ってくれた。
わたしはどんどん話しかけていった。
学年もクラスも関係なく、いろんな人と話し、いろんな人達のグループに入っていった。
嫌われる事もなく、皆嬉しそうに、わたしを受け入れてくれた。
わたしはきっと、恵まれているんだと、その時初めて思った。
それから2年が経ち、中学3年生になった頃だった。
上級生になって浮かれてる人達もいれば、既にどこの高校に行くか話してる人達もいた。
わたしも早めに考えておこうと思い、彼女達の会話に参加した。
何人かは同じ高校に行く予定だと話していた。
わたしはそれを聞いて、羨ましいなと感じた。
そして心の中で「わたしも同じ高校に行きたい!」と思った。
放課後、同じ高校に行く予定の人達がこれから家で勉強会をすると話していた。
わたしも同じように勉強すれば一緒の高校に行けるかな?と思い、声を掛けた。
いつものように、無邪気で、今思えば、バカみたいな顔をして。
「わたしも勉強会行っていい!?」
「……ごめん○○ちゃん、勉強会は友達とだけやる予定だから」
「……え?」
「じゃ、また明日ね!」
「……とも、だち……?」
言っている意味がわからなかった。
何故今頃、友達なんて言葉を言ったんだろう?
唐突なその言葉に、わたしは何も言えず、その場で立ち尽くしていた。
次の日。
わたしは別のグループの会話に入っていた。
その人達は放課後にジャンクフード店で何か食べて帰る予定だと言っていた。
その話を聞いてわたしはふと思った。
そういえば、わたしはそういう事を一切した事がなかったと。
皆で雑談しながら食べたら美味しいだろうなと、頭で考えてたらお腹が少しずつ空いてきた。
お母さんに怒られるかもしれないけど、たまにはいいよね?
そう思いながら、わたしは彼女達に言った。
「わたしも一緒に行く―!」
「……どうする?」
「えー、でも、○○ちゃん友達じゃないし」
「だよねぇ……ごめん!○○ちゃん、今日は友達とだけだから」
「……え」
「ごめんね!」
そう言って、彼女達は再び会話を始める。
今思えば、きっと、多分、彼女達に悪気はなかったのかもしれない。
でも当時のわたしはそんなことよりも、彼女達に言われた言葉だけが気になっていて。
……何故彼女達は、友達という言葉を強調したのだろう?
だって、おかしいじゃない。わたしも、その友達の1人のはずなのに。
……なんで?まるで、わたしは友達じゃないって言っているようなものなのに。
どうして、そんな事を言うのだろうか。
「ごめん!今日は友達と予定が……」
「……え?○○ちゃんもカラオケ行きたいの?でもごめん、友達と行く予定だから」
「明日のお泊り会楽しみだねー!……○○ちゃんも行きたいの?うーん……ごめんね、今回は友達とだけだから……」
「友達と」
「友達と」
「友達と」
中学校卒業式の日。
多くの卒業生が、親と、親戚と、そして友達と、楽しそうに話していた。
誰よりも沢山の人と話していたわたしの隣には、親と妹しか居なかった。
不思議と、涙は出なかった。皆が楽しいなら、それでいいんだ。
高校入学式の日、わたしはいつものように、隣の子に話しかけた。
最初は緊張していたようだったけど、すぐに打ち解けた。
楽しそうに笑うその子を見て、わたしは改めて思った。
やっぱり、わたしにはそういう才能があるんだ。
人を笑顔にさせる才能が。なんて恵まれているんだろうか。
当時のわたしは本当に、それを誇りに感じていた。
高校生活も慣れてきた頃。
既にある程度出来上がっていたグループの中にわたしは居た。
会話の中心にはいつもわたしが居て、皆が必ず笑ってくれる。
嬉しくて、楽しくて。どんどん話が出てくる。
いつまでもこんな時間が続けばいいのにな。そう、思った時だった。
1人の女の子が言った。
「ねぇ?この後皆で遊びに行かない?」
その言葉にドキッとした。
今までわたしは、誰かと遊びに行ったことがない。
学校が終わったらすぐ家に帰り、勉強をして、日付が変わる前には寝る。
そんな、真面目ちゃんな生活をずっと続けていた。
だから、ドキッとしたけど、それ以上に嬉しかった。
遂にわたしも、そういう「普通」の生活を体験できるんだなと。
皆が楽しそうに賛成している中、わたしは笑顔で言った。
「ねぇねぇ、どこに遊びに行く!?」
「ふんふふーん……あっ、おねえちゃんおかえりなさい!……おねえちゃん?」
「……うん。ただいま」
時刻は午後17時前。いつもどおりの帰宅時間。
わたしは部屋に戻り、制服を脱いで、部屋着に着替える。
そして、机の前の椅子に座り、カバンから今日の分の課題と、授業で習った事の復習を始めた。
勉強を始めてから少し経って、ふと、机の上に置いてある置き時計を見た。
時刻は午後18時。
今頃、彼女達は遊んでいる頃だろうか。