24歳、男性。Vtuberを始めるも、女性ファンより男性ファンが多い件について。 作:Rabbit Queen
おら東京さ行くだ。
Vtuber祭というものを知っているだろうか?
名前の通り、Vtuberの為のイベントである。三日間行われる大きな祭りであり、二年前から始まったこのイベントは年に一度夏に行われ初回に参加出来たVtuber達は皆「参加出来たら今後が約束される」とイベント終了後の個人配信で口を揃えて言った。実際、参加出来たVtuber達は全員今では人気Vtuberになっている。それほど、多くの人気が得られるこのイベントはVtuberにとってとても大切なイベントなのであった。
ちなみに、私はさっきイベントの事を知った。
なぜ今この話をしているのかと言うと、現在そのイベントのサイトを視聴者さん達と見ながら雑談していたからである。そう、今の私は配信中なのだ。
「なるほどー。つまり参加出来たら勝ち確かぁ」
:間違ってない。
:せやな。
:初回でも結構な人数が参加して落とされたらしいから、今回はやばいね
:というか今後の参加がやばい。
:参加条件あるとはいえ、それでもやばいだろうな。抽選。
:運が試されるな。
:運だけで済むかが問題。
:どういうこと?
:噂だと企業勢は受かりやすいとか
:それ証拠なければやばい発言になるぞ……
:コメント消しとけ消しとけ!
:雹夜さんは参加されますか!?
:雹さん参加しましょ!!
:見に行きますよ!!!!
「うーん、条件は確かに満たしているけど、抽選だからねぇ」
:出すだけ出しときましょ!
:そうだそうだ!
:会場で雹さんの声聞きたい!
:雹の兄貴の為なら有給もとってやらぁ!!
:当たらなかったらどんまいで!
:とりあえず出しておこう!
「んー……」
イベントの参加条件は、
一つ、Vtuberであること。
一つ、活動開始して三ヶ月経っていること。
一つ、登録者数が1000人超えてること。
一つ、過去のVtuber祭に参加していないこと。
私の場合条件はすべてクリアしているので問題なく参加申請は出せる。あとは彼らの言う通り抽選なので当たれば良し。外れたらまぁどんまい。次回もあるからそれに期待しよう!で済む。どうしても今回じゃないとダメなんだ!ってわけじゃない限りはいくらでもチャンスはあるわけなんだけど……残念ながら、参加する理由がない。そう、理由が、ないのだ。
「人気が出るからいいじゃないか!」と言われれば確かにそうなんだけどね。まぁ、前にも言ったかもしれないけど私自身あんま表立って目立ちたくない。活動している中で自然と人気になっていくのは仕方ないとしても、自分からそういう事に突っ込む気はないのだ。ファンの皆が参加を望んでいる事はわかってるし、今後の事も考えるとやっぱり参加申請は出しておいたほうがいいのかもしれない。全てが自分の今後の経験値になるのはわかっている。わかっているのだけども……あぁ、わかった、正直に話そう。
ぶっちゃけ遠出が嫌なのでござる。
いやだってさ、仮にだよ?仮に「申請が通りましたよ☆」とか言われたら、どうしても外せない用事がない限り参加するしかないじゃない?「やっぱり面倒なので参加やめまーす」なんて言ったら信用もガタ落ちだしファンや他のVtuberさん達からは「あぁこういう事する人なんだな」って思われるわけじゃない。それだけは嫌なのだよ。確かに面倒だし知らない土地に行くのも嫌だし夏だから暑いし独りは怖いしカツアゲされないか不安だしちゃんと喋れるかわからないから行きたくないんだけどさぁ……でもなぁ……皆期待してくれてるしなぁ……。
行きたくないでござる……行きたくないでござるよ……やっぱりやめよ。こういう時下手に申請したら通りそうだし。他のVtuberさん達に譲ろう。うん。そこまで参加の意思ないのに他の人の邪魔しちゃ悪いしね。ということでやめまーす。さて、エー○ックス配信でもしますか。
「ということで、参加はしないかな」
「えー!もったいないッスよ!!」
「とても、残念です……」
「でも仕方ないわ。雹くんが乗り気じゃないんだもの」
「そういうことー。ごめんね、アカネちゃん、はやて丸さん、サキさん」
「うぅー……」
「だ、大丈夫です……!すごく残念ですけど……」
「イベントに参加はしなくても、来場者としての参加もしないのかしら?」
「んー、そうですねぇ。まぁ……面倒なので」
「ぶっちゃけったッス!!この人ぶっちゃけったッスよ!?」
「雹夜さんらしい……ね」
「ふふ。そこもまた可愛いのよね」
「え……?」
「なんでもないのよアカネちゃん。
それじゃ、現地で会えるのは私とアカネちゃんとはやて丸ちゃんだけみたいね」
「でスねー!あーちゃんとサキさんに会えるの楽しみッス!!」
「ボクもすごく楽しみだよ……!!」
「会うだけじゃなく、同じステージでイベントに参加出来たら最高ね」
「でスでス!!あー!申請通っててほしいッス!!」
「はやて丸ちゃんならきっと大丈夫だわ」
「うんうん……!」
「あ、ありがとうございますッス!……照れるッスね!」
「うんうん、はやて丸さんなら大丈夫じゃ」
「雹夜せんぱいがおじいちゃんになっちゃったッス!」
「わしゃもうダメじゃ……」
「ふふ」
「あはは……あ、そろそろ落ちないと……」
「あら、もうそんな時間?私も落ちないといけないわ」
「あらま。んじゃアカネちゃん、サキさん、お疲れさまです」
「お疲れさまでス!あーちゃん、また明日ね!」
「うん……!雹夜さん、サキさん、はーちゃん、お疲れさまです……!」
「アカネちゃんもはやて丸ちゃんもお疲れさま。雹くんまた明日ね」
「あれ、なんか約束してましたっけ……って、落ちるのはやっ」
二人の声が聞こえなくなり、しばしの沈黙が流れた。私もこのあと風呂入らないとだし、はやて丸さんに挨拶して落ちるかな。
「……あの」
「ん?」
「その、本当に……出ないんでスか?」
「イベント?んー、そうだね。ちょっと面倒だし」
「あ、あの、サキさんが言ったように、来場者としての参加でも……」
「んー、遠出自体が嫌なんだよねぇ。それに初めて行く場所だし不安だらけで」
「まぁ三人で楽しんできなよ。私はきっと配信してるかなぁ」
「……」
「はやて丸さん?」
「……」
「おーい、はやて丸ー?」
「……わたしは」
「お?」
「……わたしは、せんぱいに会いたいッス。それじゃ……ダメ……ですか?」
「おぉ……?んー……あー……ごめんね」
「っ……えへへ、わかってたッスよ!冗談ッス!それじゃ、お疲れさまでス!!」
「あー、うん、お疲れさまです」
昔もこんな事があったっけ。あの時はどうしてたんだろう。思い出そうにも思い出せない。いや、思い出したくないのかな?わからない。わからないから、風呂に入るか。
それから一週間が経ち、参加申請の締切日が三日前だった日の夜。おっさんとマイ○ラをしながらイベントの事と参加しない事を話した。
「え、マジで言ってるの?キミィ……」
「うん、断った」
「ばっ!!……お前本当に、ばっ!!」
「ばっ?」
「バカやろうー!!なんで断ったんじゃ!!」
「えー、だって面倒じゃん」
「おま……せっっかくのチャンスが……しかもフラグバリバリ立ってんじゃん……あほぅ……」
「あほだとー?まぁ異論はない」
「はぁ……サキさんも言ったように参加じゃなくても見に行けばいいじゃないか」
「だーから、遠出が嫌なんだって。知らない場所だし、絶対カツアゲされる。あと人多いところ無理。気持ち悪くなる」
「うーむ……まぁ身体に何かしら影響が出るのなら仕方ないのか。にしても、残念じゃのぅ」
「なんじゃい、そんなに人の青春の行き先が楽しみか」
「それもあるが、ほれ、来るならせっかくだし会えるなと思っての」
「サキさん達に?会っても特になぁ。幻滅されても困るし」
「いやいや、わしじゃよ」
「どうした?ア○サ博士の真似か?」
「新一ぃ……じゃなくてだな、キミと俺で会えるな、と」
「あーなるほどね。……ん?」
「丁度仕事で今東京に住んでるんだが、キミが来るなら世話はできるなと」
「え?…………マジ?」
「まぁキミが来ないなら会うことも……」
「行く」
「……なんて?」
「行くよ俺。東京行く」
「……おぉ、どうしたんだ?やっぱりサキさん達に会いたく」
「俺おっさんに会いに東京行くわ!!!」
「……えぇ……」
後日事情を聞いた彼女たち。
「うぅ……男に負けたッス……」
「まぁまぁ……これで雹夜さん来てくれるわけだし、ね?サキさんも良かったですね……!」
「やっぱり龍さんは難敵ね……」
「サキさん……?」
例の病気は無い世界なので問題なし!!!
また書けたら投稿します。コメントあると励みになりやす。