24歳、男性。Vtuberを始めるも、女性ファンより男性ファンが多い件について。   作:Rabbit Queen

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 俺ならきっと、もっとかっこつけて、言葉を選ぶだろう。
 でもあいつはいつだって、かっこつけず、思うままに言うんだ。

 それが俺の親友。……カッコいいやつだろ?



親友

 「――ふっふっふ。遂に来てやったぜ、東京!!」

 

 飛行機から下りて無事空港内部に入れた私は両手を広げてこの喜びを表そうとしたが、流石に周りの迷惑になりかけない……いや、絶対になるだろうし、変な目で見られるだろうから両手を広げるのはやめて軽くガッツポーズだけはした。その様子を後ろで見ていた不良少女?もとい、クロエちゃんが苦笑しながら言った。

 

 「あはは、お兄さん楽しそうだね」

 「そりゃねぇ。なんだかんだ一度は行ってみたいと思ってたし、何よりおっさ……あー、知り合いに会えるのが楽しみだからね」

 「へぇー……そんなに嬉しいんだ。えーと、彼女さん、とか?」

 「遠距離恋愛はしない派だからないね。男性だよ。んで親友」

 「親友かぁ。それなら、嬉しくなるのも仕方ないか」

 「うむ」

 

 クロエちゃんに返事しつつスマホを取り出しLINEを開く。「着いたじぇ」とメッセージを送信して……お、もう既読が付いた。なになに……「受付近くに居るならそこで待っててくれ。すぐ迎えにいく。目立つからすぐわかると思うわ」……と。ふむ、目立つとな?まさかあいつ頭にパンツ被って……いや、「YESロリータノータッチ」って書かれたシャツか?前にそのシャツ買ってたみたいだしありえるな……うーむ、おっさんがどんなインパクトを与えてくれるのか気になるぞ。……とりあえず私はここで待ってるか。さて、クロエちゃんはどうしよ?

 

 「ふむ。知り合いが迎えに来るみたいだから僕はここで待ってることにするけど、クロエちゃんはどうする?」

 「あー、連絡ついたんすね。よかった。オレは……まぁ大丈夫だと思います」

 「ん?大丈夫って?誰か迎えに来るの?」

 「あーいや、忙しいみたいで迎えには来ないっすね。道は正直ちょっとわからないけど……まぁお兄さんの時みたいに誰かに聞きながら行こうかなって」

 

 「荷物確認したらオレも行きますね」と言って少女は背負ってたかばんを地面に置いて中を確認する。……本当なら彼女を近くまで送ってあげたい気持ちは多少ある。あるが……こればっかりは私が決めれる事じゃないんだよなぁ。流石におっさんの車に赤の他人を乗せるわけにはいかないだろうし、何より学生だ。私達よりかなり年下で女の子だ。これだけでもうアウトよ。後で難癖つけられても反論できんしそういう目で見られても仕方ない状況になる。なので本当は送ってあげたいが、すまんな。アニメや漫画の世界ならそういう事もあっただろうが、現実はそう簡単じゃないんよ。

 

 

 「……あっ」

 「ふぇ?えと、どうしたんすか?お兄さん」

 「まだ時間ある?せっかくだし、アイスでも食べない?」

 「え……?アイスっすか……?」

 「あれ、苦手だった?」

 「いや、結構好きっすよ!いやでも……いいんすか?」

 「いいよいいよ。このままさよならってのもなんか寂しいなぁって」

 「そ……そっすか。えと、じゃ……お、おねがいします」

 「ういうい。んじゃおっさ……あー、知り合いが来たら行こうか。

  今動いたらあっちも困るだろうし」

 「あ、はいっす。……あの、ちなみにどんな人なんすか?」

 「ん?わかんない」

 「え」

 「なんか目立つって言ってたけど、どんなのだろうね」

 「えー……心配になってきた……あれ……?」

 「ん?……あらまぁ……」

 「……え、もしかして、あれっすか……?」

 「いやー……まぁ、目立ってるね。うん。多分あれじゃの」

 「」

 

 

 それは、遠くからでもわかるように、ドシンドシンと音を立てながら歩いてきた。纏ってる空気感が明らかに周りと違い、まるでこれから「一仕事してくる」ような威圧感が漂っている……ようにも見える。ざわざわと周りが小さくどよめく中、その大きく、まるで熊のように大柄な男は、たまたま目が合ってしまった私を見ると、何かを確かめるようにゆっくりと近づいてきた。周りに立っていた人達が避けていく中、私はそのまま動くことなく熊のような男が近づいてくるのを待った。……これで違ったら、恥ずかしい。じゃなくて、結構やばいかも……?

 

 

 「……すいません、人を探してるんですがもしかして」

 

 その声を聞いて、俺は思わずニコッと笑う。あぁ、やっぱりそうか。

 何度も何度も聞いた、あいつの声だ。

 

 

 「――ようおっさん。やっと会えたな」

 「……あぁ、やっぱりか。うむ、ようやく、じゃのぅ」

 

 

 そう言って、俺達はお互いの背中を叩きあった。

 

 

 

 

 

 「いてぇ」

 「すまんすまん」

 

 叩きあったのだが、おっさんのバカ力がやばくてめっちゃ痛い。吹き飛ぶかと思っちゃったよ

 

 「嬉しくてのぅ。ついやってしまった。すまん」

 「嬉しいけどなんか複雑」

 「すまんすまん、何かお詫びに奢るから許してくれんか」

 「ま?いいよ」

 「相変わらずチョロいのぅ」

 「そう褒めるなよ。んじゃとりあえずアイス食いに行こう」

 「ん、わかった。……ところで」

 

 「その女の子は誰じゃ」

 

 おっさんがそう言いながら先程から気になってるであろうクロエちゃんの方をチラッと見る。それに反応しクロエちゃんがビクッと震えたかと思えば私の背中に隠れるように移動した。

 

 「クロエちゃんだよ」

 「……で?」

 「ん?見ての通りだが?」

 「……えと、どうもっす…………この人こわっ……

 「うん、こんにちは。……いやいやいや……キミ、その女の子は?」

 「空港で出会った」

 「……まさか本当に女の子を連れてくるとは……冗談だったのに……」

 「わっはっは」

 「とりあえず説明をしてくれんかのぅ?」

 「ういうい。その辺の説明もアイス食べながらするよ。とりあえずちょっと休憩したい」

 「ふむ……まぁそうじゃのぅ。キミにとっては初の長旅じゃろうし。

  よし、二人共ついてきなさい。こっちに美味しいアイス屋さんがあるぞ」

 「うーい。んじゃ行きますか、クロエちゃん」

 「は、はいっす!」

 

 道中寄り道しながらも目的のアイス屋さんにたどり着き、それぞれアイスを購入して近くのベンチに座って食べ始めた。ちなみにチョコミント大好きなんだけど売り切れてた。チョコミント売り切れてた。無い。

 

 「なんでよぉ……」

 「どんまいじゃのぅ。後で別の店で買ってやるから食べなさいな」

 「うぅぅ……久々のバニラもおいちぃ……」

 「あむ……!はむ……!んぅー……!!」

 

 ペロペロとバニラを食べてる横で美味しそうにモグモグと食べ続けてる少女クロエちゃん。食べ物全般に言えるけど、男女関係なく美味しそうに食べてる姿っていいよね。ついつい見ちゃうわ。おっさんも同じようにクロエちゃんを見ていて、半分くらい食べ終えて一息つこうとしていたクロエちゃんが俺達の視線に気付いた。

 

 「あ……す、すみません!えと、あの」

 「あぁ、いいよいいよ。僕らに気にせずどんどんお食べ」

 「うむ。良い食べっぷりじゃのぅ。

  ……まぁ流石に、ここまで見られてちゃ食べづらいかもしれんが」

 「だ、大丈夫っす!あの、あ、ありがとうございます!奢ってもらって……」

 「全然構わんよ。おかわりもするかい?」

 「あ、いえ!だ、大丈夫っす!すみません!」

 「ふむ……そうか」

 

 「ふぅ……」と小さくため息をついたおっさん。クロエちゃんも、なるべく目線を合わせないようにしてるのか、自分のアイスとテーブルを交互に見ている。クロエちゃんに関しての説明は移動中とかに話していた。とはいえ赤の他人なわけで、まぁこうなるよね。あ、アイス全部食べちゃった……。

 

 「おかわりは……いいか。お腹壊したくないし」

 「ん?もういいのか?」

 「うん。ありがとね。後はチョコミントだな!」

 「はいはい、後で寄ってあげるからの」

 「へっへっへ、おねがいしやす旦那」

 「任せなさい。……しかし、思ってたよりもずいぶん細いのぅ」

 「ん?あぁ、俺か。せやね。あんま食べないし」

 

 グッ……と右腕に力を込めて力こぶを作って見せる。ぽこんと小さなお山が出て来たので、私はドヤ顔でおっさんに言った。

 

 「どうよ」

 「ふむ。悪くはないのぅ。……どれ」

 

 上着を脱いでYシャツ姿になったおっさんも同じように右腕に力を込める。ミチミチミチミチとシャツから小さな音が聞こえながら大きな山がそこには出来上がった。今にも破けそうなほど盛り上がってる大きな力こぶを見て、思わず私は触った。

 

 「おおぉぉぉぉぉ!すげぇぇぇぇぇ!」

 「ふっふっふ。どうじゃい」

 「カッチカチだぁ。すげぇなぁ……」ペチペチ

 「わっはっは。……こらこら叩くのやめい」

 「面白いなこれ」ペチペチ

 「今日のキミは随分テンション高いのぅ」

 「ん?そりゃ、おっさんとやっと会えたわけだしね」ペチペチ

 「でも驚いたじゃろ?」

 「ん?」

 「ほれ、こんな見た目だしのぅ。初対面の人は必ず驚くんじゃよ」

 

 そりゃ身長が190ちょっとあってラ○ボーとかコ○ンドーに出てくるようなガタイの良さをしてたら皆驚くじゃろ。鍛えてるとは聞いてたけど、ここまでとは思わんかったぞ。というかそのスーツサイズ合ってる?ずっとミチミチ音してるよ??

 

 「す、すごい体型っすよね……ですよね。ちょっとびっくりした……しました」

 

 敬語口調に戻りつつあるクロエちゃんがそう言った。

 

 「ありがとう。びっくりさせてすまんのぅ。怖かったじゃろ」

 「あ、いえ!ぜんぜん、そんなことは……」

 「大丈夫じゃよ。もう慣れてるからの。すまんのぅ」

 「あぁなるほど。クロエちゃんは緊張してるんじゃなく、ちょっと怖かったんか」

 「……えと、す、すみません」

 「いいよいいよ。キミも驚かせてすまんかったの」

 「ん?俺?」

 「うむ」

 「んー」

 

 確かにびっくりはしたなぁ。お互い自分の写真とか送るタイプじゃないし、容姿とか体格とか今まで全然話さなかったし。確かに、ちょっとびっくりはした。うん。

 

 でもまぁ。

 

 「どんな見た目だろうと、龍は龍なんだし、気にしないかな」

 

 そんな些細なこと、今更気にすることじゃないよね。

 そんなことよりトイレ行きたい。

 

 「ちょいトイレ行ってくるー」

 「おぅ」

 「あ、はいっす」

 

 

 

 

 「……あの」

 「ん?」

 

 席を立ちトイレに向かう男の様子を見ながら、少女は言った。

 「オレ……えと、あたし、少ししかお兄さんと話してないんですけど……良い人っすね」

 その言葉に対し、隣に座っていた大柄な男が腕を組み小さく笑みを浮かべながら言った。

 「……あぁ。自慢の親友だよ」

 

 

 

 

 それから少しして、そろそろお互い移動しますかぁと話してる時クロエちゃんのスマホがプルプルと鳴った。電話が終わるまで一応待っていた私とおっさんは、電話を終えたクロエちゃんから話を聞いた。どうやらお世話になる親戚のお姉さんが用事を済ませて空港まで迎えに来てくれるらしいとのこと。「来るまで空港で待つことにする」とクロエちゃんが言ったので、それならお姉さんが来るまでその辺のお土産屋さんでも回ろうかとおっさんが提案したので皆でブラブラ回ることにした。あれもこれも買おうと思ったけどまだ初日だったの忘れてた。危ない危ない。

 

 ちなみにその後何の問題も起きずお姉さんが到着して合流し、少しお茶休憩をしてクロエちゃんとは空港で別れた。クロエちゃんのお姉さん、好みの男性のタイプが筋肉質のおじさんだったみたいでおっさんに対しめっちゃグイグイ迫ってたなぁ。残念なことにおっさんには彼女がいたので断ってたけど。モテる男は辛いですなぁ。っぺ!

 

 

 「……じゃあねお兄さん。……って、結局最後まで名前教えてくれなかったね」

 「ん?あー……まぁ、Vtuber祭で会えるかもしれないし、その時にでも」

 「ぶー。……ま、いっか。んじゃねお兄さん。会場で会えたら声かけるね!」

 「あいよー。道中気をつけてね。ばいばーい」

 

 ぶらぶらと手を振ってクロエちゃん達を見送り、俺とおっさんも車に乗って、ようやく空港を後にした。今日はかなり疲れたし、おっさんの家に着いたら速攻で寝るかもなぁ。いろいろ話したかったしゲームもしたかったけど、まぁしゃーない。配信は明日に残しておいて、ご飯食べてシャワー入って寝るぞー!明日に備えるぞー!!

 

 

 

 

 

 

そう、ここまでが今日の出来事だった

 

 

 

 

 僕が今日どんな一日を過ごしたか、こういう風に説明したら大体把握してくれてると思うんだ。そう、僕は今日めちゃくちゃ疲れたんだ。あちこち歩いて足は重いし痛いし、ぶっちゃけ一歩も動けん。腕も両肩が重いしあんま動かしたくない。ふかふかの枕と布団が心地よくて、用意してくれたおっさんには物凄く感謝してる。うん。迎えにも来てくれたしアイスも奢ってくれたし、こうやって家にも泊めてくれてる。

 

 だから僕が何かに対して文句は言えないし言うつもりもなかった。

 

 

 でもさ。ごめん、言わせてほしいんだ。

 

 

 

 「龍ちゃん交際申し込まれたの!?」

 「ああ。でも断ったよ。俺にはサクラだけだ」

 「龍ちゃん……!!」

 「サクラ……!!」

 

  「「ぎゅーー❤」」

 

 

 

 「イチャイチャイチャイチャ寝れるかぼけぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

 




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