艦娘嫌いな提督と提督嫌いな艦娘のお話   作:dassy

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提督と艦娘の作戦会議

 机を囲んでの作戦会議などいつ以来だろうか。

 前の鎮守府での任務は、会議の必要がない程度の哨戒任務と護衛任務がほとんどだった。最後にした本格的な戦術の話し合いは遠い過去のことのようだ。

 

「ハワイ方面海域奪還作戦についての作戦会議を始める。本来ならば俺が1人で考えるつもりだったが、長門から強い要望があったためこの場を設けた。折角の機会だ。意見は遠慮せずに言え」

 

 意見を言えとは言ってみたものの、それほど期待はしていない。作戦会議とは名ばかりの勉強会のようなものだと俺は認識していた。

 

 集められた艦娘は3人。空母の代表として赤城。駆逐艦たちの教導艦である神通。そして、巡洋艦たちのまとめ役の妙高。

 ここに俺と電、長門、大淀を加えた7人が会議参加者だ。

 

「作戦中の鎮守府近海の防衛は大淀と電に任せる。出撃のローテーションは組んでおいたが、何かあればお前たちで対応しろ」

「了解しました」

「作戦に参加する艦娘は18人。主力の連合艦隊と水雷戦隊の遊撃部隊だ。編成は既に決めてある」

 

 机の真ん中に編成の書かれた紙を放った。全員がそれを覗き込むように読んでいる。

 

「長門、赤城。この作戦の成功は戦艦と空母の働きが鍵だ」

「私と赤城、そして陸奥と加賀の4人で敵主力を撃滅すればいいわけか。望むところだ」

「鈴谷さんと熊野さんが編成に入っているのもその為ですね。私たちが少しでも攻撃に集中できるように、と」

「ああ。第1艦隊の編成について意見のある者はいるか?」

 

 俺の問いに1人を除いた全員が首を横に振る。

 

「何かあるのか、妙高」

 

 全員が彼女に注目した。俺を含めた全員分の視線に動じる様子もない。肝が据わっていると感心する。

 

「鈴谷さんと熊野さんは制空権確保の補助のために編成されたとのことでしたが、どちらかを外して軽空母の誰かを入れた方がよいかと」

「より赤城たちを攻撃に集中させろと言いたいわけか」

「はい」

 

 妙高の言い分は理解できる。立案当初は俺もそうしていた。

 何故そうしなかったか。その編成には重大な欠点があるのだ。

 

「お前たちは羅針盤の妖精を知っているな?」

 

 突然の俺からの質問に全員がキョトンとしている。

 

「彼女たちは深海棲艦への道標となる存在だが、1つ厄介な性質を持っている」

「…編成艦種による精度の低下か」

 

 長門が納得したように呟いた。赤城もそれを聞いて俺の言わんとすることを察知したようだ。

 

「つまり空母は2人までしか編成できないということですね」

「ついでに言うと戦艦もだ」

「…なるほど、そういうことなのですね。でしたら私から代替案は出せませんね」

 

 理解はしたが納得はしていない、という顔をしているが、妙高はもう反対意見を言う気はないようだ。

 彼女が心配していることは他にもある。大方予想はついているが、俺にはどうしようもないことだ。()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「あの、提督はどのようにして羅針盤の妖精の精度低下が起こらない編成を把握していらっしゃるのでしょうか?」

「私も疑問に思いました。奪還済みの海域ならともかく、まだデータの少ない海域の最適な編成を組むことは難しいのでは?」

 

 神通と大淀がそう質問してきた。

 俺の調査書の存在を知っていた大淀だけでなく、神通からもそう聞かれるとは予想外だった。あれを読んでも臆せず口を聞けるとは。

 

「あらゆる出撃データをかき集めて分析しただけだ。この鎮守府だけでなく、他所のデータも集められるだけ集めてな」

 

 おかげで普段から寝不足なのがさらに悪化した。

 

 俺の答えに電以外は唖然としていた。

 恐らく、前任の提督たちの無能っぷりに開いた口が塞がらないのだろう。過去のデータを見る限りでは、俺がやったこと()()のこともしていないのだから。

 

「さて、何もないようなら話を次に進めるぞ」

 

 その後の会議は議論もなく、淡々と進んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 作戦会議は予定より早いペースで進み、あっという間に終わった。

 提督と電が部屋から出ていくと、みんなの顔から緊張が抜ける。

 

「前任よりできるとは思っていたが、比べ物にならないほど優秀な人物のようだ」

「ええ。作戦自体もよく練られていますし、私たちが質問することまで全て予想していたかのように受け答えしていましたね」

 

 私の呟きに妙高が同調した。他のみんなも同じような感想を持っているようだ。

 

 そういえば、妙高に謝ることがあった。

 

「大きな作戦の前だというのに、艦娘たちのメンタルがまた弱っているようだ。すまない、妙高」

「どうして私に謝るんですか?」

「提督の調査書を公表しないことに反対していただろう。それに、結局妙高の言う通りになってしまった」

「…過ぎたことは仕方ないですよ、長門さん」

 

 妙高は困ったように笑った。

 

 提督が着任する前に、艦娘たちに提督のことを話しておくべきだと妙高は言っていた。発覚した時に鎮守府全体が混乱するから、と。

 今思い返せば、それが正解だったと思う。私がしたことはその場凌ぎの短絡的な行動だった。

 

「妙高さんが提督の過去をご存知だったのは初耳でした。しかし、今はそれを悔やんでいる場合ではないでしょう」

「長門さんの言う通り、精神的に弱っている艦娘も編成に組み込まれていると思います。その方たちをどうするか話しませんか?」

 

 赤城と神通の言葉で頭を切り替える。そうだ、鎮守府の現状を把握しているなら、今やるべきは謝罪と後悔ではない。

 私は艦隊編成の資料を食い入るように見つめた。

 

「…提督は私たちの精神面まで考慮しているでしょうか?」

 

 大淀が不安そうな声を出す。それに妙高が応えた。

 

「していないでしょうね。でなければ鈴谷さんを編成したりしませんよ」

「どういうことだ、妙高。鈴谷に何かあったのか?」

「かなり思い詰めた様子だと熊野さんから聞いています。直接被害にあった艦娘の中に自分の名前があったからでしょう」

「そうか…他の艦娘の様子も鈴谷のようになっているのか?榛名は相変わらず部屋から出てこようとしていないが」

 

 私の問いに神通と赤城が首を振った。

 

「浜風さんも調子を崩していて、戦闘訓練や哨戒任務でのミスが目立ちますね。由良さんとは会えてません」

「翔鶴さんは一見問題なさそうですが、どこか自分の命を軽く見ているようで危なっかしい印象です」

 

 タメ息をつきたくなるような状況だ。

 幸い今回の作戦には鈴谷が編成されているだけだが、あの5人以外にも調子を崩している艦娘もいるかもしれない。

 嫌な予感がする。このままで作戦は大丈夫なのだろうか。




お待たせして申し訳ないです。
ぶっちゃけると飽きてきました。
今後の展開は何となく決まってるんですが、ちょっと文字数少なめでもいいですかね…?
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