艦娘嫌いな提督と提督嫌いな艦娘のお話   作:dassy

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大変長らくおまたせ致しました。
これからも大変長らくおまたせ致します。


攻略艦隊集合

 新たな海域を奪取する為の作戦に、私も召集された。

 この作戦が成功すれば、北米への航路を繋ぐ大きな1歩となるだろう。物流だけでなく観光など人々の往来が活発化するはずだ。

 深海棲艦が出現する以前の、本来の世界の姿に近付く。それがどんなに喜ばしいことか、私にはあまりわからない。それがどんな世界なのかを知らないからだ。

 

 そんなことを考えながら、姉さんたちの後ろから3人の提督たちを眺める。

 

「今回は複数の鎮守府による合同作戦だ。本隊指揮はこの黒田少佐が執る」

 

 無精髭を生やした中年の提督が私たちの提督を艦娘に紹介をする。

 私たち以外の艦娘の私たちの提督を見る目は冷たい。なるほど、みんな知っているということだ。

 

「遊撃部隊の指揮は白川中佐。そして、作戦本部近海の警戒をする艦隊はこの私が指揮する。横須賀鎮守府提督、青山中将だ。よろしく頼む」

 

 中将。大物だ。そんな人物が来ているとは思わなかった。

 

「作戦は明日から行う。本日二○○○より各隊の旗艦と我々で最後の打ち合わせを行う。それ以外は自由にしてくれて構わない。では解散」

 

 決起集会は特に時間もかからずに終わった。

 さて、自由時間らしいけど何もすることがない。姉さんたちと部屋で連携についてでも話そうか。

 

「霞、部屋に戻ってみんなで少し話しましょう」

「了解よ、朝潮姉さん。私も同じこと言おうと思ってたわ」

 

 どうやら同じことを考えていたようだ。

 

「あら~?司令官が絡まれてるわ~」

 

 ふと荒潮姉さんが物珍しげにそう呟いた。顔をそちらに向けてみると、確かに司令官が艦娘に詰め寄られている。

 戦艦金剛。北方鎮守府の艦娘だったと思う。

 

「…なんだか様子が変じゃない?司令官が責められてるって感じがしないわね」

「満潮もそう思いますか」

 

 そういえばそうだ。どちらかと言うと、金剛さんの方が切羽詰まったような表情をしているように見える。

 

「ちょっと様子見てくるわ」

「えぇ…やめた方がいいと思いますよ」

「大丈夫よ、大潮姉さん。それじゃ、みんなは先に部屋に戻ってて」

 

 私はそう言うと司令官たちの下へ歩き出した。

 近付くにつれ、2人の会話が聞こえてくる。

 

「榛名と提督の間に何があったのか教えてほしいデス」

「何度も言っているが、その件について俺から言うことは何もない」

「あのreportに書かれていることはtruthということデスカ?」

 

 司令官は面倒臭そうに金剛さんを見つめている。

 

 沈黙を破り、私は司令官に声をかけた。

 

「司令官、ちょっといいかしら?」

「霞か。何かあったか?」

「ちょっと作戦のことで聞きたいことがあるんだけど、顔貸してくれない?」

「構わない。だが、手短に済ませろ」

「わかってるわ。というわけで、司令官借りていくわね。ごめんなさい、金剛さん」

 

 矢継ぎ早に会話を進め、金剛さんが引き留める暇もなく司令官を連れ出した。

 無論、金剛さんは不満げな顔をしていた。

 

 金剛さんから見えない場所まで移動すると、司令官が私に声をかけてきた。

 

「それで、聞きたいこととはなんだ?」

「あー…それは、その…」

「…なるほど、嘘だったか。余計な気を回さなくともよかったんだが」

「何よ、それ。助けてあげたんだからお礼くらい言いなさいよ」

 

 いつも司令官と艦娘との間で緩衝材になっている電はいない。一瞬とはいえ、その代わりをしたのだから感謝されて然るべきではないだろうか。

 まあ、元々そんな期待はしていないのだが。

 

「…そうだな。助かった」

「…へ?」

「なんだ、その顔は。礼を言えと言ったのはお前だぞ」

「…本当に言うとは思わなかったのよ」

 

 私の言葉に司令官は眉をひそめたが、すぐに納得したように目を逸らした。

 納得するくらいなら日頃の態度をもう少し改善した方がいいわよ、という思いを込めて、私はジト目で司令官を見つめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ずっと考えていることがある。提督のことについてだ。

 横領、暴力、セクハラ。どれも許されない行為だ。それをあの人が()()()()()()()()()()()

 

「こんな所で何をやってますの?」

 

 夜の海をボーッと眺めていた私に、熊野が声をかけてきた。黙って出歩いていたが、どうやら私の居場所はバレバレだったようだ。

 

「別に。ちょっと考え事してたの」

「ここ最近、ずっとそれですわね」

 

 熊野は私の隣に立った。並んで夜の海を見ていると、世界の時間が止まっているような感覚に包まれる。乱暴された日の夜、同じようにして熊野と慰め合ったことを思い出す。

 

「提督のことでしょう?」

「…正解。流石熊野」

「当然ですわ。鈴谷のことは誰よりも知っているつもりですから」

「あはは、なにそれ」

 

 今は慰め合っていたあの時とは違う。月明かりに照らされた海面と雲1つない星空がいつもより綺麗に見えた。

 

 私は自然と口を開いていた。

 

「鈴谷さ、提督が着任した日の夜に1人で提督に会いに行ったじゃん?」

「そうでしたわね。自分を犠牲にする代わりに艦隊の皆さんを守ろうとして。本当に無茶な賭けでしたわ」

「提督が約束を守る保証もないのにね。あの時の鈴谷はどうかしてたよ」

「もうそんな真似はやめてくださいね」

「わかってるって」

 

 苦笑しながら頬をかく私を見て、熊野も釣られて笑う。

 一瞬の沈黙の後、私はまた話し始めた。

 

「あの夜、何もされなかったの。確かに電はいたけど、追い出したりもできたのに」

「やっぱり何もなかったのですね。そうだとは思ってましたけど、提督の過去が発覚してからは少し不安でしたの」

「うん。で、それが本当にわからないんだよね。手を出す絶好の機会だったし、私から誘ったんだから問題になることもなかったはず。それに、結構イケてると思うんだよね、鈴谷」

「自分で言うんですの…?」

 

 男の人になんて会ったことがないから、前任の提督たちの反応からそう判断した。正直、不本意ではある。あのいやらしい目付きは思い出すだけで鳥肌が立つ。

 

「あと、その時の提督の様子もおかしかった」

「おかしい?」

「うん。すごく怒ってた。マジギレだよマジギレ」

「それは確かに変ですわね」

 

 熊野は人差し指を顎にあてて首をかしげた。

 

「こんな所で何をしているんだ?」

 

 突然、私たちの背後から声が聞こえた。

 慌てて振り向くと、そこには意外な人物が立っていた。

 

「あ、青山中将…!?」

「そんなに驚くことか?」

 

 彼は困ったように笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 用意された3人部屋で金剛はベッドに倒れ込んだ。理由は先程行われた集会の後のことだ。

 彼女は念願だった黒田との再会を果たした。そして、彼の変わり様に衝撃を受けたのだ。

 

「提督…本当にどうしちゃったノ…?」

 

 そう呟いた直後、大井と北上が部屋に入ってきた。金剛は体を起こして2人を迎え入れる。

 

「お疲れ、金剛。その様子だと収穫なしって感じだね~」

「Welcome back、北上、大井。そっちは青山中将に話を聞きに行ってたんだヨネ?どうデシタ?」

 

 北上は首をすぼめるジェスチャーをする。つまり金剛と似たり寄ったりということだ。大井の表情も暗い。

 

「自分は何も知らない。報告書が真実であるはずだ。中将はそう仰っていました」

「I see…青山中将が提督をdemotionした張本人ではないということデスネ」

「はい。でも嘘を吐いている可能性もあります」

「Why?」

「勘です。そんな雰囲気を感じた気がしただけですよ」

 

 大井はそう言うと溜め息をついた。

 

 彼女たちは黒田が牢に入らず、今でも艦隊の指揮を執っていることに疑問を持った。

 いくら腕が立つとはいえ、そのような待遇はありえない。冤罪だったが故に、それを知っている階級の高い人物が()()()()()()()()()()()()()()のではないか。そう推測するのも不思議ではない。

 

「青山中将でないとすると、他に誰かいる?私たちの名推理が正しいのなら、提督の能力をめちゃくちゃ高く評価してるか冤罪を疑ってるかのどっちかでしょ」

「私も上の人について詳しいわけではないから、彼以外の候補は思い付きませんね」

Ditto(右に同じ)

 

 黒田は何も語らず、青山は何も知らない。白川は言うまでもないだろう。彼女たちの知りたいことは、さらに彼女たちから遠ざかっている。

 

「…ま、とりあえずこの件は置いておこうよ。明日は忙しくなると思うし、今日は早く休も」

 

 北上はパンと手を鳴らし、そう言った。

 主力艦隊ではないとはいえ、大規模作戦の一端を担っている。まだしばらく黒田のことを考えていたい大井と金剛だったが、そのことが2人の心に重くのしかかった。

 

 3人はその後、口を閉じたまま明日の出撃と就寝の準備を進めるのであった。




アメリカ語とイギリス語の違いがわからないので金剛がアメリカ語の方を使ってたらごめんなさい。

そして読者に襲いかかる突然の鈴熊…!
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