「はぁはぁ、いった。何なんだあの豚、いや、野生の豚なら猪か。」
俺は今森の中を逃げ回っていた。
この孤島にスポーンした後、適当に狩に森に入ったのだがそこでデカイ豚に会ったのだ。
「あいつ皮膚が硬すぎて銃弾とおらねぇ。」
それにこのゲーム痛覚が100%再現されてるからいてぇ。
体当たりされた左腕はまだ少し痺れが残っていた。
「でも、この体はいいな、こういう森ではアスリート体系より小回りが利く。」
木と木の間、倒れた木の下縦横無尽に駆け回りながら逃げることができる。
そのうち、後ろから追ってくる音が消えた。
「…よし、追って来てないな。」
どうやら、巻けたようだ。
少し安堵して、煙草を取り出した。
幼女が煙草を吸う姿は犯罪臭が凄いがこれはこのゲームの立派な回復アイテムだ。
ゲームなのだから煙草も吸うし酒でも飲む。
「ん?足音?」
急速に近寄ってくるが聞こえた。
明らかに人間よりデカくて重い四足歩行の動物の足音だ。
「また豚か?」
次は眼球に銃弾ぶち込んでナイフで滅多刺しにしてやる。
「こっち!」
俺は背後へ振り返りこれから出てくるであろう動物に向かって銃を一発打った。
「こいよ、豚!」
木々を貫くように出て来たのは。
「へ、牛?」
え、こんなデカイ牛もいるの?
俺は咄嗟に避けて横をナイフで切ろうと腕を振った。
だが、ナイフが微妙に刺さり幼女の腕力と牛の力が拮抗するはずもなく、俺の右腕は牛の突進した方向へと弾かれた。
「っいっったぁぁぁ、くそ、角度悪かったか。」
これ、肩の関節外れてるか?
どこかしら脱臼してるな、いてぇ。
痛覚100%再現やばいだろ。
左腕で右腕を押さえていると牛が向きを変えこっちに向かっていた。
(ヤバイ!動け足!)
目を向けると俺の足は震えていた。
痛みが伴うゲーム当然恐怖もそれ相応のものが与えられる。
(あれ、食らったら、痛い!)
「あぁぁぁぁ、くっそ。ギリ避けた。ホラゲーでもないのに足、震えちまった。」
転がるように何とか突進を避けた。
ここでも小柄なキャラが功をなした。
「ふぅ、ゲームなんだから後遺症なんて気にしなくていい!ぅぅうおら!」
外れてる肩の関節を無理矢理嵌めた。
(痛いけど、ギリ大丈夫。)
俺はすぐさま態勢を整えるためそこから引いた。
(一旦どこかで回復しないと、戦力的撤退。)
俺は殆どノーアングルでUIを操作してタバコを取り出した。
火をつけ口に運ぶこれを逃げながら行う。
木を掻い潜りながら右に左に逃げているのだが。
あの牛は全く止まる気配が無い。
てか、ちょくちょく有った倒れてる木、コイツのせいか?
息が上がり、肺に煙が充満する。
「けほっ、けほっ」
俺は、吸い終わった煙草を捨てる。
本来は足で踏んで火を消したりするが、ここはゲームだしそもそも、そんな暇はない。
「おっけ、態勢は整えた。」
右腕の痛みも引いて来た。
俺は牛へと向き直る。
今度は、右手にデリンジャー、左手にナイフだ。
目に向かってデリンジャーを二発発砲。
「くそ、意外と当たんねぇ。」
残念ながら二発とも外れた。
足の止まった俺を見て牛が突進して来た。
(これをギリギリで、避ける!)
上手く木に当て体の横にナイフを突き刺した。
でも、幼女の筋肉じゃ奥までいかない。
一旦引こうとした時奥から巨大なアルマジロが牛にぶつかった。
(ここは、上手くあの二体を戦わして。)
少し、希望が湧いた。
俺が標的にされないよう一歩下がろうとすると、後ろから何かに突き飛ばされた。
「っごほっ。え゛、ぶだぁぁ゛ぁ゛あ゛!」
後ろを見るとそこにはあの豚がいた。
やばい、背骨折れる、幼女の体は良く弾き飛ばされ、アルマジロにぶつかり、牛に踏まれた。
「ごほっっ、ぐへ、」
骨が折れ、内臓が潰れる音がする。
感覚が、、痛い痛い痛い痛い。
「っあ、ごほっ。あああああああああああああああああああああ!」
三匹の動物に揉みくちゃにされ、視界が真っ暗になった。
いや、あれもう動物っていうより怪物、
モンスターだろ!
「っつっは、こほっ、こほっ」
ふぅ、どこも傷ついてないし折れてない。
当たり前だゲームなのだから。
というか、ここは俺の部屋のベッド。
「あぁ、強制ログアウトさせられたのか。」
まだ、あの時の感覚が鮮明に残ってる。
「っおえっ。危な、吐くとこだった。」
感覚を思い出して吐き気がしてしまったのをすんでのところで抑える。
「まぁ、強制ログアウトの後はすぐには入れないからちょっと休憩するか。」
と言っても連続ログインできないだけで、少し時間を置けばまた入れるのだが。
俺は、下のリビングに降りた。
「あれ?珍しいね。お兄ちゃんが新作のゲームやってるのにもう休憩なんて、ものすごいクソゲーだった?」
「あぁ、まぁクソっちゃクソだな。お母さんは?」
リアリティを追求したのだろうが痛覚100%再現はクソだろ。
「お母さんなら、自分の部屋だよ。夕食はまだ先じゃない?」
「おっけー、だったらまた始めるか。」
時計を見ると確かにまだ一時間ぐらいしか経っていなかった。
「てか、お兄ちゃん汗かいてるし、顔色悪いよ。ホラゲーしてたの?」
「いや、サバイバルゲーム見たいのだよ。」
確かに、俺は少し汗をかいていた。それに心なしか血の気も引いてる気がする。
「そっか。あ、この人凄い綺麗。めっちゃ決まってる。」
興味なさげに返事すると妹はまた、テレビを見出した。
トイレに行った俺はまた自分の部屋に戻ってきていた。
スマホの画面を開き俺はサバイバル・ガンマンについて調べてみた。
話題になってると言っても少しだし。
今日は発売初日なので、大して情報は無かった。
ただ、あの牛に襲われたやつは他にもいたようだ。
どうやらまだ暴れてるみたいだ。
現在進行形で被害者が増えていた。
プレイヤーを倒した。人はちらほらいたが、豚や、アルマジロ、牛を倒したやつはあまりいなかった。
俺もプレイヤーを、逃げる途中で見つけたが残念ながら戦う余裕はなかった。
野生動物、まぁ、モンスターは他にも猿や虎が居るらしい。
ある程度、見終わった俺はまた孤島の世界へとinした。
「あ、割と混沌としてるな。」
あの、牛はこのゲームに出てくるモンスターの中でも強い方らしい。
あいつが現れてから他の奴らも暴れ出して、色んなところから悲鳴が聞こえた。
(学校で少し遅れたからな、休めないからしょうがないけど。)
森に入って少しすると、プレイヤーを見つけた。
油断していたので、見つかってしまった。
戦闘になるかと、思ったが向こうは手を上げ声をかけてきた。
「あー、ごめん、俺。あの牛倒したいからさ。ちょっとの間プレイヤーとは休戦したいんだけど。」
「あぁ、そうなの。分かった。俺も一緒にいいか?…えっと、アトバード、さん?」
確かに、あの牛は俺も倒して見たかったのでその条件を呑み俺も協力したい意志を伝えた。
「ああ、いいよ。あと、俺のことはアトバードでいいよ。サンラク。」
気さくそうな優男だ。
しばらく、音のする方に進むと牛と豚が戦っていた。
「戦闘が終わりそうになった。タイミングで合図出すから。サンラクは裏から奇襲して。」
いや、こいつ銃持つと急にキリってなるな。
ちょっと雰囲気が変わった。
「ああ、オーケー。」
俺は、木々を隠れ蓑に牛の後ろへと回った。
牛が突進でして、豚が倒れたところでアトバードが二発弾を発砲した。
一発は目に入った。
牛のヘイトがアトバードに向かったところで俺は後ろから近づきナイフをさした。
牛がこっちに気づき暴れるので少し離れてデリンジャーを発砲。
「いや、これ全然効いて無いな。」
さらにデリンジャーを目に向かって発砲。
しかし、目を瞑ったため瞼に遮られた。
「こっち向け!」
アトバードも位置を変え牛を狙う。
「あいつ、上手いな。」
ヘイト管理もちゃんとできてる。
初めてなのにここまで合わせられるのは凄かった。
しかし、牛もこのままでは埒があかないと気づいたのが標的を一人に絞った。
狙われたのはアトバードだ。
確かに、デリンジャーは武器の中で最低威力だから無視していいだろう。
「そっち狙ってる!」
「ああ、分かってる。逃げるね。」
アトバードは牛を引き連れながら引いていった。俺もその後を追う。
ついでにリロード。
そして、発砲。
「スズメの涙みたいなもんか。」
「おぉ?見つけたプレイヤー!」
低い男声。声のした方を見ると。
ガタイのいい男がいた。
「あ、今牛を倒し、、」
てか、そこ行ったら。
ドン
あ、弾き飛ばされた。
「ぐはっ」
少し、吹っ飛び木に打ち付けられた。
牛の意識が少しそっちに行った。
タイミングで俺とアトバードが発砲。
しかし、それを無視して先に今倒れてる奴にトドメを刺しに行った。
「おい!そっち行ってるぞ!」
「あん?」
まだ少し痺れているのだろう、腕を上げ銃を連射。
闘牛を相手する様に避けて。
横からナイフを差し込む。
「ぶもっ」
初めて少しだけ牛が怯んだ。
「あ、でも回収」
牛が暴れたせいで。
男はナイフの回収に失敗。
どうするのかと思ったが。
男はそのまま、
「殴った!?」
なかなか、奇天烈な奴だ。
その、男、バイバアルが引いたタイミングで俺とアドバードが発砲。
「おい!そこの、えー、バイバアル今そいつと戦ってるから手を組もう。」
「あん、まぁわかった。」
これで、メンバーは三人になった。
「ありがとう。俺はアトバードであいつがサンラク」
「分かった」
素早く、紹介を終えまた牛と向き合う。
次はまたアトバードにヘイトがいった。
「全く、俺は無視かよ。」
俺は牛の横へと周り一発眼球に銃弾をぶち込んでからナイフで切るついでにバイバアルのナイフも取った。
「はいよ、ナイフ」
「ありがとな。」
アトバードが逃げているところを時々、銃を撃ち追っていった。
少し広い場所にまた出る。
三人で囲むように立つ。
上手くヘイトを管理しながら、相手をしているが全く倒れる気配がしない。
「体力おばけかよ。」
「そもそも、効いてんのか?」
「銃も、全然、効いて無いね、ワンチャン口の中に発砲出来れば。少しは効くかな。」
なかなか、有効打が無い以上少しダメージを食らっても上手くダメージを入れなくてはいけない。
どうするか、作戦を考えていると。
「あ、アトバード後ろ!」
「え?あ、ぐへっ、アルマジロ!?」
アトバードが後ろから来た巨大アルマジロにぶつかられた。
「やばい、前来てるぞ!」
牛もその隙を狙って突進して来た。
どうやら、左足が折れたか何かで動かないみたいだ。
それに、痛みに顔を歪めていた。
「タダでは死なない、よ!」
そういうとアトバードは左に体を傾け牛の顔の横側にナイフを刺し少し空いた口に手を捻じ込め発砲した。
だが、それぐらいでは牛は止まらずそのままアトバードを木に打ち付け腕をもいだ。
そして、アトバードは死んだ。
「クソ、一人やられた。」
しかし、牛は次にアルマジロに向かいぶっ飛ばした。
そして向き直りこっちにくる。
その突進をギリギリで避けるバイバアルは少し掠ったらしい。
さらに追撃で蹴り飛ばした。
(うわ、もろに入った。もうあまり長きもたなそう。)
牛がバイバアルを蹴ったタイミングで俺は牛の腹に思いっきりナイフを刺し、
「銃弾式パイルバンカー!」
そのナイフの柄に向かって銃弾を打ち込んだ。
すると、非力な幼女の力じゃ食い込まなかったナイフが少しだけ食い込んだ。
小柄な体を生かして牛の下を掻い潜った。
「おい、こ「お前の相手はオレダァぁあ。」おい、バイバアル?」
「もう、内臓がイカれてる長くねぇ、これがラストアタックだぁぁぁああああああ」
そう言って牛の気を向けた。
牛もそれに乗り突進する。
バイバアルはそれに真っ向から向かいぶん殴った。
しかし、人の拳と巨大な牛の突進が拮抗するわけもなく。
バイバアルは吹っ飛び死んだ。
「おいおい、カッケェなぁ!」
テンション爆上がりだ。
脳内でアドレナリンが絶えず分泌されてる。
「まだ、ナイフは刺さってるもっと打ち込んで全部食い込ませてやる。」
突進と蹴りを避けながら。
手で、足で、銃弾でナイフを食い込ませる。
「最後の銃弾!」
最後の銃弾をナイフの柄につけ発砲。
「へっ、全部埋めてやったぜ。」
でも、まだピンピンしてる。
デリンジャーの弾はもう無い、ナイフも
「あ、あれはアトバードのナイフ。」そうだ、死んだ奴のアイテムも残ってる。
吹っ飛んだ死体の方までは取りに行けないがあれなら届く。
俺は、すぐさまそれを拾いに行った。
だが、牛が突進してくる。
下から上に突き上げられる。
「がはっ!」
でも、まだ生きてる。
突き上げられた体は物理法則に従い落ちていく。
その勢いすら利用し、思いっきり牛の首へとナイフを刺した。
暗転する視界。
「っは、リスポーンてことは死んだ。」
どうやら牛の体に打ち付けられた落下ダメージで死んだらしい。
「お!戻ってきたか。」
そこには、バイバアルとアトバードがいた。
「どうだった?」
「わかんねぇ、最後牛にナイフ突き刺して死んだ。」
一応、刺さったことは手応えでわかっていた。
「そっか、ど『ぶもももぉぉぉぉぉぉおおお』うん、生きてるみたいだね。」
「マジかよ、体力おばけすぎるだろ。」
「あいつ、今の状態じゃ倒せねぇー、だろ。」
「まぁ、他にも武器あるしね」
「「「はぁ」」」
三人はため息をついた。
そして、
笑いだした。
「ははははは、最高だわ、このゲーム。」
「ああ、最高だ。」
「ああ、最高だな。」
結局、あの牛はあの後も暴れ続け、日付けが変わって一時に差し掛かった頃ようやく餓死で死んだ。