「………んあ?」
目が覚めたら何処かの裏路地だった。いつの間にか酔いつぶれてここで寝てしまったのだろうか?いや、社会人となってまだ3年、ペーペーではあるが自分の許容量を超えて酒を楽しく飲むほど考え無しではなかったはず。ブラック企業と騒がれる昨今、うちの会社はものすごくホワイトと言われる程でもないが、そんな無茶ぶりをするようなパワハラ上司もいないはずだが…。
「ん?待てよ…!仕事行かなきゃ!今何時だ!?」
慌てて腕時計を見ようとするが、少しメタリックなデザインの気に入っていた時計は左腕にはない。どこにいったのかと疑問を覚えるが、時間の把握を優先するためポケットのスマホに手を伸ばす。
「スマホもねぇじゃん!」
少し現状の認識を正確にすると、財布、カバン、果てはメガネまで。身につけていた全てが無くなっている。
「おいおい…ここに転がってる間に盗まれたのかよ!?」
パニックを起こしそうになるが、ここで更なる異変に気づく。
「メガネが無いのに、周りを見るのに困ってない…?」
近眼であると中学1年で診断されて以来、メガネがないと生活に少し支障が出る程度には目が悪かった。しかし、辺りを見渡してみると薄気味悪い裏路地がかなりはっきりと把握出来る。そしてあることに気づいた。
「うお!?何だこの体の白いモヤモヤ!」
自分の体から湯気のようなものが登っていることに驚く。自分の体温で周りに湯気が発生するほど気温は低くない。目が覚めてから驚きや疑問の連続で頭の中がぐるぐる回っている。
その時、向こうからなにか物音がした。人が来たようだ。とりあえず、今の状況を打破するためにここがどこかその人に尋ねてみよう。そう思い、音の発生源に近づいてく。
「あのー、すいません…。ここって最寄り駅どこですk」
そこで目に入ったのは、どう見ても堅気ではない強面の男たち複数人と、血まみれで倒れている1人の男。
「ちっ…。見られたか。おい、消せ」
「は…?いや、え?」
こちらがあまりの驚きに頭がついていけないでいると、男たちの中の1人が胸ポケットから何かを取り出す。
バン!!
「うおお!!!?」
ドラマでしか見た事のないような拳銃だ、と頭が認識する前に発砲される。
ドン!
壁際まで吹き飛ばされ、腹へのあまりの衝撃に息がもれる。ああ、俺は撃たれたんだなとどこか他人事のように考えていたが、その後に異変に気づく。
「ん…?血が出てない…?」
確かに撃たれたはず。実際に衝撃はあった。しかし、よく考えると、撃たれたことなどはないがあの程度の衝撃で済むものなのか…?
「ああ?生きてやがるじゃねぇか。てめぇちゃんとあてたんだろうな?」
「確かに吹き飛びやがっただろうが。なんだコイツ?防弾チョッキでも着てやがるのか?」
男たちがこちらに歩み寄ってくる。
「ひぃっ!!」
現実では体験することの無い暴力的な、しかしどうにもならない現状で悲鳴しかあげることの出来ない。
「悪ぃな兄ちゃん。運が悪かったと思ってくれや」
今度はさらに近い距離で銃を構える男。頭に向けられたであろうそれはバン!と先程も聞いた大きな音を立てた。
「ぐっ!?痛てぇ!」
頭を強く殴られたような衝撃が走る。しかし、それだけだ。恐怖と混乱が頭の中でごちゃごちゃと混ざっている。しかし、混乱に関しては向こうも同じのようだ。
「はぁ!?なんでこいつ死なねぇんだよ!」
「おい、こいつまさかうちのリーダーと『同じ』なんじゃねえのか?」
「いやでもこいつ、どう見ても荒事に慣れてなさそうな一般人だぜ?」
「とにかく1度連れてこうぜ。おい兄ちゃん、俺らについてこい。変な気起こしたら今度は殺す」
よく分からない会話が交わされたあと、俺は連れて行かれることとなった。裏路地を歩かされ、いかにも怪しそうな建物で止まると、
「おい、入れ」と言われた。
従うしかないため、仕方なしに建物に入ると、その中はこれぞ荒くれ者のアジトというような中であった。
「リーダー、戻りました。裏切り者の後始末は問題なく済んだんですが、その際こいつに見られてしまいまして…」
「ああ。どうせチャカじゃ無理だったんだろ?見りゃ分かる」
2mに届くのではないかという身長とスキンヘッド、街中であったら絶対に目を合わさないであろう風貌の男が言葉を返す。どうやら彼がリーダーのようだ。
「やっぱりそうだったんですね。けどこいつ、全然荒事に慣れてなさそうだったんですよ。そういう奴もいるんですかい?」
「さあな。まあ俺様も気づいたら『使えた』んだ。別におかしなことじゃねぇ」
2人は会話を続けているが、何を話しているのだろうか。使えた、と言うが俺になにかあるのか…?その時、あることに気づいてしまう。
(この人にも白いモヤモヤ!?なんだこれ!ほかの奴らにはないのに、なんでこの人にも…!?)
驚きを隠せないでいると、2人の会話はひと段落ついたようだ。スキンヘッドの方が話しかけてくる。
「おい兄ちゃん、俺様の質問に答えろ。お前どこのもんだ」
「え…いや、どこのもんとかないですよ!?一般人です」勘違いされてはたまらない。何とか返答する。
「じゃあ次だ。その力、いつから手に入れた」
(力…?)白いモヤモヤのことだろうか。
「それが、昨日の夜からの記憶が曖昧で…。目を覚ましたら裏路地にいて、この白いモヤモヤが…。これってなんなんですか?あと、ここはどこなんですか?」
「質問するのは俺様だ。勝手に聞いてねぇこと喋るんじゃねぇ。黙って答えたらいいんだよ。最後だ。てめぇ『念』って聞いたことあるか?」
念?念じるの念だろうか?それとも何か違うものか?こちらが即答出来ずにいると、
「ああ、その反応でわかったぜ。いつの間にか出てきたんだろうよ。売るなりなんなり使い道はあるだろ。下に閉じ込めとけ。ああ、言っておくが逃げ出したり抵抗しねぇ方がいいぞ。死にたくなきゃな」
あれよあれよという間に地下に連れて行かれ、閉じ込められてしまった。理不尽の連続に叫びだしたいが、あの脅しを思い出しどうすることも出来ない。怖い、そう思いながら座り込むと、疲れからか意識が遠のいていく…
ドンドン!!バン!!!!バババババ!!
「うぉっ!?」
いきなりの騒音目を覚ます。怒鳴り声も聞こえる。どうやら上でなにか起こっているようだ。もう訳が分からない。恐怖で身を縮こませていると、騒音が止んだ。大体2、3分の出来事だったろうか。すると、ギギィと音がし、誰かが地下に降りてくるようだ。身構えると、
「ん?誰か捕まっておったのか」
出てきたのは、あのリーダーに負けない体格と強面の顔を持つ、白いひげの男だった。
「ん?なんだ、『使える』のか。じゃが、雰囲気といいどこかアンバランスじゃの。まあいい、テロリストハンターのボトバイ=ギガンテじゃ。よろしくかどうかはわからんが、一応名乗っておこう」
ああ、俺の平坦で、平凡で、平和な世界はどこに行ったんだよ…。
ほとんどハンター要素がなかった…。次話からはもう少しハンターっぽさ出ます。あまり捏造はしたくありませんが、調べても出てこない年齢や設定に関しては少しだけはいるかもしれません…。